サステナビリティに向けた実践手引き17~まとめ~

作成者:福岡 浩二 投稿日:2022年11月1日

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シリーズでお届けしてきた「サステナビリティ実践手引き」ですが、今回で最終回となります。
最後は今までの幹に相当するトピックを整理しておきたいと思います。

企業としていわゆる「サステナビリティ」を進めていく大まかな流れを、自社のケースを踏まえて書くと以下の通りです。

1.企業としてのPurpose設計(意思に相当)
2.1を踏まえた企業全体の設計(主に組織と制度)
3.2を踏まえた主要施策の設計(責任体制・注力テーマとその業績評価)
4.デジタル化による業務/データ可視化とプロセスへの組み込み
5.1-4の指標管理(状況に応じて見直し)

はじめの段階で重要になってくるのは、サステナビリティの捉え方です。

これは、今環境問題が話題になってるから対応する、という刹那的な行為でなく、今まであまり意識してこなかった多様なステークホルダーを見つめなおし、改めてどのようにバランスをとって経営をかじ取りするのか、という経営意思に相当します。
自社の場合は、過去の投資家偏重による反省もあって、まずはPurpose(存在意義)の再定義からその歩みを開始しました。

ただ、経営層の意思だけでは絵に描いた餅になりますので、それを組織全体で実行し実現するためでは、次に組織と制度化が求められます。

自社の場合はCSO(最高サステナビリティ責任者)をCFO配下に設計し、あくまで企業価値向上の範囲において比較的中長期での価値創造にその責任を負います。

その短期と中長期のバランスを多様なステークホルダー(投資家だけでなくNPO/NGOなど)に納得性をもって説明する難題に当初直面しました。
そこで、財務・非財務のKPIをデータ化して統合報告書で開示するだけでなく、その財務インパクトの定量化にチャレンジをしてきました。(現在は有志でNPOを立ち上げて、その標準的な方法論を設計中)

ここでの「データ化」の前に設計を済ませておくべきなのが、各指標に責任を負う組織/ヒトのデザインです。

経営層の意思がスタート地点である以上、当然ながら最終的な結果責任については経営層が負いますが、難しいのが各事業を営む業務層にどのように紐づけるのか、という方法論です。

自社のケースでは、元々2000年代からバックオフィスから段階的にグローバルでの業務標準化を推し進め、プロセス単位でのモデル化(SAP Signavio)とその責任者(&そのKPI)を定義づけています。

従って、その制度を基に、従来取りこぼしていた非経済活動(環境問題など)のプロセス及びKPIへと拡張させていくイメージです。特に非財務指標で配慮すべきは、それが業務に紐づいていないケースが多いため、理想は現行業務にどう組み込むかから考え直すことです。

統合報告書を作成していくうえで、CSO(及び所属メンバ)が各業務担当者と、
「サステナビリティに準じた目標を達成するために、業務側は何をすべきか?」
という議論を行い、それは結果としてお互いの深い理解とアクションを促す手続きでした。
つまり、本来行っておくべき「経営層と業務層のつながり」を見つめなおす機会にもなったということです。
これは一般的に「統合思考」と呼ばれ、IIRC(当時)が提唱したものですが、「戦略と実行の連結効果」をもたらします。

上記の対話の結果、合意したプロセスとKPIを基にデジタル化を実装します。
自社は基本的には各プロセス、業務活動をERP(SAP S/4HANA Cloud)で捕捉し、それを半自動化してセントラルデータウェアハウスで集約・加工(CO2ならその計算式を実装)し、可視化ツール(SAP Analytics Cloud)を通じて透明化しています。

ただ、単にダッシュボードを実装するだけでは不十分で、従業員に関心を持ち続けてもらえるように、アクセスログ解析やユーザサーベイを通じて定量的な改善を積み重ねています。
このあたりは、サステナビリティ特有というよりは「データドリブン経営」のTipsです。

上記の過程を主要施策共通でおこなっていくわけですが、「従業員に関する活動」はもう少し配慮が必要になります。

他のプロセスと異なるのは、単にデータ化して定量評価するだけではむしろ逆効果になるリスクがあります。(大概悪い意味でのマイクロマネジメントに陥りがちです)

データ化の前に、従業員個々の自律的キャリアそしてその根底にあるPurposeを企業がサポートするという考え方を尊重する制度化が必要になってきます。

ここは二社択一でなく合理と情熱の両面を意識して取り組む、ある意味最も難しく、最もサステナビリティ経営を実践するうえで持続的な効果につながる領域ではないかと想像します。

近年では「人的資本経営」と総称されることも多くなりましたが、ようはそれだけ個々の従業員が企業価値に影響を与える時代になっています。
そしてそれを実現するためには、(元々のスタート地点である)企業の「Purpose」に共感して、従業員個々が主体的に行動する組織である必要があるのではないかと考えています。

メディアで多用されるようになった「Purpose」ですが、単なる企業のキャッチコピーで終わらせず、従業員間をつなぐ絆にまで発展させることで、サステナビリティ経営の実践につながるという言い方も出来ます。

最後に、参考までにSAPのサステナビリティに関するヒストリーと行動方針を改めて引用しておきます。
企業の意思である以上絶対的な正解はありませんので、読者のみなさまそれぞれのサステナビリティへの旅路で、参考になる・ならないものを取捨選択いただければと思います。

最後に、今までも何度かふれましたが、個社単体で解決できる領域は極めて限られてきています。

本シリーズを通じて、読者の皆様と共に考えて歩みながら、持続的な企業そして社会に近づけていければ望外の喜びです。

 


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