企業の知的財産の価値を最大化する、マスターデータ管理の成否を分ける4つのポイント


読者の皆様、はじめまして。SAPジャパンの賞雅(たかまさ)と申します。

今回は「マスターデータ管理における“成功の種”」というテーマで、マスターデータ管理を成功に導くための4つのポイントと、それに対応したSAPソリューションの概要、さらに導入事例についてご紹介させていただこうと思います。

マスターデータ管理の実現を阻む壁

Trees Lining Country Road

皆様もご存知の通り、マスターデータは企業の知的財産の核ともいえる存在で、その管理手法であるMDM(Master Data Management)は、企業全体で推進すべき大きなテーマの1つです。しかし、このマスターデータを「あるべき姿」にして根付かせるためには年単位の時間を要するともいわれており、その実現にあたっては、いまだ多くの壁が存在しています。

全社的な事業で扱われるマスターデータは、さまざまな部門の業務と密接に関係しています。そして、各システムや各部門でマスターデータの個別最適化を図り、業務を効率化されていることが非常に多いです。そのため、「今度、マスターデータを全社統一します」という話は、部門の反発を招くことがほとんどです。また、1つの製品を作るのにどれだけ原価を下げるか、どれだけ作業工数を短縮するかに注力している現場の方々に対し、「品目コードが…」というお話をしても、なかなか受け入れられないという実態があります。

管理における基本的な考え方も各社さまざまです。「品目コードには、意味を持たせるべきだ。それが業務の効率化につながる」というお客様もいれば、「ビジネスの変化が激しい状況下では、品目コードに意味を持たせてもいずれ破たんする。絶対に避けるべき」という考えのお客様もいます。このような企業内データの文化・風習の相違は必ず存在するという前提で、マスターデータ管理のベストな解決策を導き出すためには多くの時間を要します。

マスターデータ管理の鍵となる4つのポイント

そのような状況でも、効果的なマスターデータ管理によって大きな成果を生み出した事例には、どのような共通点があるのでしょうか?以下、マスターデータ管理の成功をもたらす4つのポイントをまとめてみました。

1.スモールスタートと段階的導入

一気にMDMを導入しようとすると、社内のマスター管理プロセスやルールの決定や見直しなどに多くの時間を要し、現場でも混乱が生じがちです。このため、最初は小規模なスコープで開始すること、つまりスモールスタートが重要です。スモールスタートから結果の把握という形を何度も繰り返して行くことで、最終的に目標とするゴールを達成しようというアプローチが推奨パターンです。

必要最低限のプロセスやルールから着手することで、社内の合意形成がしやすくなり、運用上の混乱も最小限に抑えることができます。また、早期段階で「マスターデータを整備すると、こういうメリットが得られる!」という明確な効果を示すことにより、MDM活動の理解や周囲からの支援も得られやすくなります。スモールスタートで段階的導入することにより、成功要因の把握や改善を行いながら、着実なステップアップが可能になります。

2.目的の明確化

MDMはあくまで経営課題、業務上の課題を解決するための手段に過ぎません。それだけにMDMを構築する理由、つまり“ビジネスの目的”を明確化することが非常に重要になります。たとえば、第1フェーズで“購買分析の見える化”を実施する場合、必要となるのは、“仕入先”と“品目”です。見える化を実施するために、上位20%の仕入先を見ていけば、全体の80%の動きが把握できるのであれば、すべての仕入先ではなく、まず上位20%で実施してみるのも1つの方法です。このような考え方の下、目的を明確化することで、無駄のない、そして迅速なMDMの試行が可能となります。やみくもに実施するのではなく、「企業としてMDMで何を実現したいか?」という点をしっかり定めることが成功のポイントとなります。

3.決断できる体制

マスターデータには企業横断的な要素が多く含まれるため、責任の所在や決済権者が不明確で、判断が下せないという問題が発生する場合も少なくありません。「これは誰が決めるべきなのか」「誰の承認をもらえれば決定となるのか」などが見えにくいケースも多く発生します。このため、企業の上層部、たとえば副社長やCIOといった立場の方々からの支援が必要となります。会社の方針としての決定と、トップダウンで意思伝達ができる体制作りが重要となります。

4.品質維持の仕組み

マスターデータは、MDMの導入後、時間の経過とともに品質の劣化が進行します。これは仕方のないことですが、継続的にMDMの価値を高めていくためには、データ品質を維持する仕組みが必須です。マスターデータの品質維持・向上はITで支援できる部分もありますが、運用上の努力によってしかカバーできない部分が多いのもMDMの特長です。そのため、ルールを決め、標準化を行い、継続的な監視を行うためのプロセスや体制作りが不可欠です。これらが整っていてこそ、ITの役割もより明確になります。低品質なマスターデータが低品質な分析結果や業務効率化の妨げにならないように、継続的な品質管理は重要です。

マスターデータ管理に向けたSAPソリューション

では、このようなMDMに向けたSAPのソリューションには、どのようなものがあるのでしょうか? 下記にマスターデータ管理およびその品質を保つために検討が推奨される項目と、これらを実現するためのSAPソリューションの関係を図示します。

Picture1

①    SAP NetWeaver Master Data Management(SAP NetWeaver MDM)

システム間に存在する複数のマスターデータを管理するコンポーネントで、マスターデータの一貫性の維持と管理効率および品質を向上させるソリューションです。

②   SAP Master Data Governance

SAP Business Suite に組み込まれ、ERPのビジネスロジックと基盤を利用したマスターデータの集中管理を提供するソリューションです。

③   SAP Information Steward

自社保有データの調査、アクセス、定義、監視、および、品質向上を統合環境下で実行することができる“データスチュワード”向けソリューションです。

④   SAP Data Services

情報管理に必要とされるデータ統合(Data Integrator)とデータ品質管理(Data Quality)を単一の基盤で提供するソリューションです。

⑤   SAP Workforce Performance Builder

導入プロジェクトならびにシステム利用を永続的にサポートし、日々の業務の生産性を高めることを追求した教育支援ソリューションです。

導入事例:

最後に、MDMの導入事例についてご紹介します。ある会社で実際に発生した課題に対し、SAP NetWeaver MDMを導入することで期待効果をあげた事例になります。

SAP NetWeaver MDMの導入で、マスターデータの品質をアップ。「見える化」による大幅な生産性向上も実現

■導入前の課題:効果が実感できないERPシステム

過去に基幹系システムと分析系システムを導入したが、コスト削減や業務効率化に結びつかず、企業全体での分析や効果把握が十分でない状況が発生していました。原因分析を行なった結果、次のような課題が明らかになりました。

  • 各部門で個別最適のシステム化が行われており、マスターデータも個別管理されていた
  • 各部門のマスターコードが独自ルールで運用されており、コード体系も粒度もバラバラであった

マスターコードが揃っていないため、企業横串での分析や把握ができず、これらを解決するためには、マスターデータの統合が必要不可欠と判断し、プロジェクトを開始しました。

ソリューション:SAP NetWeaver MDMでマスターデータを統合管理

プロジェクトでは、全社を対象にしたマスターデータ統合管理の仕組みが必要であるとして、SAPのMDMソリューション導入を決定し、複数のフェーズに分けて段階的に進める方法で実施されました。

各フェーズでは、目的を明確にし、目的実現のために必要な対象マスターデータ、システム、ソリューションを決め、短期間で確実に結果を出しながら、継続的にプロジェクトを進めていきました。

またプロジェクトではマスターデータ統合のシステム導入だけではなく、マスターデータを管理する専門チームの立上げも行い、導入後のマスターデータ品質を担保する体制を構築しました。

導入効果:意思決定支援、業務標準化、成長戦略基盤、の実現

MDM導入プロジェクトを経て、導入目的の分析精度向上、グローバル業務効率化、将来の統廃合にも迅速に対応可能なマスターデータ管理基盤の実現に貢献することができました。

これらの導入効果に加え、「マスターデータは、放っておけば乱れていくもの」という経験則が得られたことも大きなメリットでした。マスターデータは常に管理し、品質の維持に努めなければならないという共通認識を全社レベルで持つことができたことが、同社にとって大きな効果であったと考えられます。

今回は、マスターデータ管理成功の種となる4つのポイントと、それに対応するSAPソリューションの概要、そして導入事例についてご説明させていただきましたが、いかがだったでしょうか?マスターデータは企業の知的財産の核であり、さらにMDMは一度実施すれば終わりでなく、品質を劣化させないために継続的に遂行していくことが重要であることをご理解いただければ幸いです。MDMに対応するSAPソリューションとともに、運用方法や組織のあり方などについても、検討していくことが重要となります。

ご質問はチャットWebからも受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

●お問い合わせ先
チャットで質問する
Web問い合わせフォーム
電話: 0120-554-881(受付時間:平日 9:00~18:00)