宇宙から見たビジネス#6:価値の地平線セミナーReport

作成者:福岡 浩二 投稿日:2022年12月13日

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宇宙からみたビジネスシリーズの6回目です。

今回は、11月22日に行った「SAP×宇宙が切り拓く価値の地平線セミナー」の開催報告と一部内容をお届けします。

本イベントの趣旨ですが、

「ニュースペース」ともいわれる宇宙の新産業で、今何が起こっていて今後どういった可能性を秘めているのか

を、この産業に詳しくはないけど関心がある方々が、具体的に次の一歩を踏むご支援となります。

当日は各フロントランナーから、宇宙産業の構造から詳細な事例まで、それぞれの専門テーマでいろんな角度でお話しいただきました。

以下より登壇順に講演内容のハイライトを紹介します。

 

1.Synspective「宇宙産業と衛星ビジネスの今」

宇宙産業は、2040年には市場規模が1兆USドルにまでひろがる予測も出ており、その背景には官から民へのシフトがあげられます。

例えば下図にあるとおり、宇宙スタートアップへの期待も高まっています。

Synspectiveは、SAR衛星と呼ばれる、光学型衛星の弱点を補完できる観測技術をコアにしたビジネスモデルを構築しています。

具体的には、光学では天候が悪いと地上観測が難しいのですが、SAR衛星はそれらを透過できるため、例えば常にモニタリングする必要があるリスク検知などに応用されています。

 

講演内では、下記のサービス一覧からいくつかを事例を交えて紹介頂き、SAR衛星のもつ可能性を実感することが出来ました。

 

今後はSAR衛星の数を増やして、よりモニタリングできる範囲を広げて迅速に見える仕組みを実現する予定です。

 

2.JSOL「宇宙開拓時代の新たなDX/ビジネス改革」

元々、企業向けDXを長年支援しつづけている著名なICT企業です。

背景の1つとして、スペースポート(宇宙港)の1つである北海道大樹町への支援から、今後発展性のある宇宙産業をICTを通じて盛り上げていきたいという意思で参入を決めました。「社会課題解決」という企業全体としての方針もそれを後押ししています。

今までは、企業活動をデジタル化することによる支援を行ってましたが、それと衛星データを掛け合わせることで、従来出来てない価値を提供できると考えています。

ケースとして、まずは食品/消費財メーカーへの原材料調達におけるトレーサビリティを可視化することで、食の安全とそこで働く方々との信頼性を高める活動を目指しています。(SAPの共同プレスリリースはこちら

なお、JSOLではこういった新しい価値を創るうえでICTから入るのでなく、どういった価値を創るのかを具現化するワークショップも提供しています。(紹介サイトはこちら

まさに、今企業で話題のDXがそのまま宇宙産業にも展開できる可能性を感じさせる講演でした。

 

3.SAP Japan「SAPの宇宙への期待とチャレンジ」

まず、そもそもERP(Enterprise Resource Planning: 統合基幹システム)ベンダーであるSAPが、なぜ宇宙にかかわるのか?
その答えはシンプルで、まさに今の企業活動で求められるデータに宇宙(衛星データ)が必須、ということです。

既に宇宙産業に属する企業では、SAPのERP製品を中心にご利用頂いていますが、衛星(地理空間)データを取り扱うデータベース機能も提供しています。

今回の事例では、パートナーとのエコシステムで提供したものを紹介し、例えば衛星から天候を予測してERPでの需給調整に活用するケースです。

これからもエコシステムを加速化することで、宇宙産業を通じた新しい企業価値の創造に伴走していきます。

 

4.ザイナス「衛星データを活用した社会課題取り組み事例」

ザイナスは、衛星データ解析を含めたICT企業です。登壇者は他にも大学にも所属して防災関連の研究を行っています。

今回はタイトルのとおり、衛星データを通じた社会課題解決ケースをいくつか紹介しました。

その1つは、専門にもあたる災害への情報活用として衛星データも組み合わせた事例です。衛星以外にもドローンや3D技術などを駆使して防災・減災にフル活用しています。

もう1つは、湾で発生するゴミを衛星から監視して効率的に撤去する仕組みです。対流によってゴミは動くため、そこにはAIのよる予測も必要になってきます。

災害対策や環境保全など、従来ではどうしても人手を要して非効率と思われがちな社会的課題を、衛星を通じて見事に効率かつ効果的に実証しています。

今後はこれらを他の地域(国内外)にも横展開していきたい、として講演を締めくくりました。

 

5.おおいたスペースフューチャーセンター「宇宙のオンセン県大分の挑戦」

大分県は、大分空港を宇宙港(水平型打ち上げとしてはアジア初)として整備することを決め、県を挙げて宇宙港を核エコシステム構築に向けた活動を活発に行っています。その経緯から登壇者は語ります。

登壇者が専務理事を務めるOSFC(おおいたスペースフューチャーセンター)は、大分県とも連携して、宇宙関連ビジネス創出の媒介として多様な組織・個人を結び付ける活動を展開し、大分県の活性化を進めています。

今回の講演では、宇宙と竹(大分大学発のベンチャー)をテーマにした新しい素材開発や、宇宙葬という事業を立ち上げた話など、より我々の身近な社会活動に絡むものが紹介されました。

そして最後に、宇宙というコンテンツは地方創生・地域活性化において有効であるとして、その意義に触れて講演を締めました。

 

改めてイベント全体を振り返ると、宇宙は単に産業としてのビジネス機会だけでなく、日本社会の大きな課題でもある地方創生への架け橋としても重要なコンテンツになりえる、ことを感じられました。

ぜひご関心を持った方は、たとえ今宇宙産業に関わっていなくても、まずは自社のValueChainを眺め直してその漏れがないか、そして衛星データを通じて新しい価値が創れないかを探求してみてください。少なくとも事業価値を再整理(または再定義)する意味で、極めて意義深いことだと思います。

ぜひ本イベントを通じて、共に新しい企業そして社会価値を創造するきっかけになれば幸いです。

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