宇宙から見たビジネス#8:安全保障

作成者:福岡 浩二 投稿日:2023年1月19日

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宇宙はビジネス以外にも影響を与える分野がいくつかあり、国際政治動向もその1つです。

例えば、日本政府は宇宙の安全保障など国際情勢を踏まえた新しい取り組みを進めています。

  日米安保条約 宇宙空間での攻撃にも適用で調整へ(NHK 2023/1/10)

日本を含めたグローバルでのリスクをまとめたレポートとして有名なものがいくつかあります。

1つはリスク調査会社ユーラシアグループによるものです。
Global Topリスクとして毎年公開され、日本語版はこちらから閲覧することが出来ます。下記がそのトップ10のリスク項目です。

1.ならず者国家ロシア
2.「絶対的権力者」習近平
3.「大混乱生成兵器」
4.インフレショック
5.追いつめられるイラン
6.エネルギー危機
7.世界的発展の急停止
8.分断国家アメリカ
9.TikTokなZ世代
10.逼迫する水問題
                    出所:Global Risk2023

もう1つは、世界経済フォーラムによるものでGlobal Risks Reportと呼ばれます。
経済・金融・政治リーダー1000名以上からのヒアリングを通じて構成され、2023年度版がこちらで公開されています。

短期・長期視点でのリスク要因に分けて書いており、下図のようなランキング結果です。
経年変化でみると、この数年は気候変動と疫病が上位を占めていましたが、Cost-of-Living(生活費)リスクが特徴的です。

背景として、近年の国際紛争の影響を受けたエネルギー・食糧問題がインフレ圧力を押し上げています。10年を見据えた長期リスクには同項目は残っていないものの、リスクのバトンリレーでその走者が変わっただけとも言えます。

これは他のリスク項目にも当てはまることで、本レポートで興味深い図をもう1つ下記に引用しておきます。

直感的には各リスクが他のリスクに影響を与えるのは、気候変動による報道で感じられるのではないかと思います。

これら2つのレポートで明白に伝えているのは、地政学的なリスクです。
砕いて書くと、政治と地理の視点を考慮した判断・活動全般のことを指します。

地球上での活動であれば、ある程度海上ライン含めて国家領土として明確に決められていますが、宇宙になると独占することは基本的に禁じられています。

簡単に宇宙の安全保障で重要な局面を辿ると、当時の二大大国の冷戦への脅威から、1967年に宇宙条約が施行されました。
ここで宇宙空間(天体含む)での独占行為や軍事行為(大規模破壊兵器の軌道配備)への規制が敷かれます。

冷戦終了後も、宇宙開発としてスペースシャトル(輸送船)や宇宙ステーションなど人類の進出は広がっていき、21世紀に入って民間も交えた新しい宇宙開発の時代に突入しています。

特に人工衛星は時代変遷の中、様々な用途で今でも活用されていきます。以下に代表的な用途を挙げておきます。

  1. 画像偵察衛星(主に光学・レーダー型2タイプ)
  2. 情報偵察衛星(地表での電波発信の検知)
  3. 測位衛星(GPSは元々米国軍事用途)
  4. 通信衛星(Starlinkのインターネット接続サービス等)
  5. 早期警戒衛星(日本だとはJアラート)
  6. 攻撃衛星(キラー衛星とも呼ばれ文字通り衛星を攻撃する衛星)

上記のなかでも、3のスマホに搭載されているGPSと4の通信衛星Starlinkは身近でも感じやすいと思います。

ただ、どうしても人工衛星は軍事・民生の両面で使える可能性がぬぐえないため(ダブルユースと呼ばれます)、衛星への攻撃リスクは民生用途、つまり産業向けにも少なからず影響します。

このような背景もあり、冒頭の日米安保拡大の動きもビジネスとは無縁ではなくなってきます。

2023年は地政学リスクが高まっていくことから、ビジネスと国際政治が相互に影響を与えていくことになり、一層と宇宙での活動が注目されていくと思います。

なによりも、2023年が少しでも平和な一年になることを心より願っています。

<イベントの案内>
1月25日に、ビジネスから見た宇宙産業全般を紹介するWebinarを開催します。関心のある方であればどなたでも参加できますので、下記から登録をお願いします。

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