宇宙から見たビジネス#14:「食と農業」イベントレポート
作成者:福岡 浩二 投稿日:2023年3月20日
宇宙に関係するビジネストピック、今回は2023/2 末にSAP主催で行われた「宇宙/DXから見た食と農業」のレポートです。
日本に限らず、「食と農業」は地球規模での多様な問題が交差した分野とも言えます。
「政治」「経済」「社会」「技術」「環境」の切り口で主要な論点をあげると、次のようになります。(日本でなく世界です)
地域によって食と農業で求められる価値が多様化してきており、畜産・農産ごとの消費量推移とその原因への対処は異なります。
特にこの近年では、気候変動への対策も進みつつあり、グローバルを舞台にした大量生産・商品の時代が徐々に変容しつつあります。
このあたりのマクロ動向については、イベント内ではOECD FAOレポートを参考にしていますので、関心のある方は閲覧してみてください。
マクロ動向のうち、今回のテーマは「技術」に関係した内容で、近年では積極的に下図のような各業務ごとでの導入が進んできています。
こういった最新技術を活用した取り組みは、よく「スマート農業」と称して取り組みが進んでいます。
特に日本政府(農林水産省)では、労働人口減少や自給率など課題への危機感を背景に、この領域には数年前より注力しています。
実際2019年から実証実験をサポートしており、その数は投稿時点で200を超えています。
このスマート農業のなかでも期待されている技術が、「人工衛星」と「ドローン」です。
人工衛星では特に、SAR(レーダー合成型。天候に左右されないのが強み)と光学を組み合わせたケースが、農業での栽培活動モニタリングだけでなく、その後工程にあたる販売促進・販売支援までつながった事例も登場しています。
ドローンも、ハードウェア(軽量化・バッテリ向上)・ソフトウェア(自律化)の技術革新が進み、例えば地上での人的な動きを把握するなど、より用途がひろがり、規制緩和も進んでさらなる普及が期待されています。
SAPの事例でも、人工衛星を活用して、従来ERPだけでは管理できなかった情報を把握することで、価値を高めたグローバル消費財メーカもいます。
上図を見ればわかるように、単に上流工程を管理するだけでなく、それをきちっと消費者へ価値を転化しているのが重要な論点です。
次の事例は、米国水産業のBumble beeです。
こちらは漁業管理だけでなく自社でレストランなど飲食サービスも提供しており、文字通り上流と下流をつなげることで、食の安心だけでなく生産者をつなげる付加価値も提供することに成功しています。
最後に、コートジボワールのカシューナッツ生産を営む企業の事例です。
これは国全体での産業活性化にもつながった話です。
小規模農家の方々が、従来手動で作業を記録する大変な作業をスマホアプリで効率化して、加工作業などより付加価値の高い作業にあてることで、収入向上を目指したものです。
最後に、上記の事例含めて、SAPではそれぞれの用途に応じた製品群をERP(SAP S/4HANA)に加えて提供しています。
今回のイベントの中で忘れてはならないのは、製品を通じて提供出来る「価値への向き合い方」ではないかと思います。
冒頭のマクロ環境変化もあり、従来の「価値の枠組み」がぐらついています。
特に環境や社会課題への対応が顕著な例ですが、いずれにしても宇宙技術やDXが貢献できる領域は、このように価値の再定義もセットで考えるとさらに増えていくことが期待出来ます。
ぜひ、読者の皆様の置かれた外部環境でも同じようなことが起こっていないか?
自社の価値から改めて見直してみてください。