SAP HANA Cloud, data lake 2022年12月版、2023年3月版、6月版の主な新機能

作成者:伊藤 沢 投稿日:2023年7月10日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

このブログは、近い将来 SAP Community に移行する予定です。


このブログは、Thomas Hammerが執筆したブログ「What’s New in SAP HANA Cloud in December 2022」(2022/12/29)および「What’s New in SAP HANA Cloud – March 2023」、「What’s New in SAP HANA Cloud – June 2023」(2023/6/23)よりHANA Cloud, data lake部分について抜粋、抄訳したものです。最新の情報は、SAP Communityの最新ブログマニュアルを参照してください。


 

2022年12月版の新機能

 

SAP HANA Cloud, data lakeにおけるイノベーション


クラウドデータベースソリューションに不可欠な構成要素であるSAP HANA Cloud, data lakeは、ペタバイト規模のデータ対応のデータベースであるため、ユーザーはすべてのデータを単一のソリューションに格納して管理できます。 SAP HANA Cloud は、ホットストレージからウォームストレージ、さらにはこのSAP HANA Cloud, data lakeによるコールドストレージまで、すべてを 1つのまとまったサービスとして提供します。

スタンドアロンのデータレイクをお探しであれば、SAP HANA Cloud, data lakeはスタンドアロンのソリューションとしても利用することができます。このオプションについて詳しくは、Discovery Center missionをご覧ください。

2022年12月版には、SAP HANA Cloud, data lakeにおいて大きく3点の強化点があります。

VARCHAR フィールドにおける文字長セマンティックスのサポート

SAP HANA Cloud, data lakeは、VARCHARフィールドのバイト長によるサイズ宣言をサポートしています。 これに追加して、SAP HANA Cloud, data lakeリレーショナルエンジンではVARCHAR フィールドの文字長によるサイズ宣言もサポートされるようになりました。

この追加のサポートにより、SAP HANA Cloud, HANAデータベースにおけるサイズ宣言と、NVARCHARおよび VARCHARフィールドのサイズ情報が異なることでおこる混乱を軽減または排除できることにより、一貫したユーザーエクスペリエンスを提供できるようになりました。

SAP HANA SAP HANAと互換性のあるスキーマのサポート

さらに、SAP HANA Cloud, data lakeにおいてSAP HANAデータベースと互換性のあるスキーマをサポートすることで、SAP HANA Cloud, HANAデータベースとSAP HANA Cloud, data lake間の統合を強化しました。

この機能により、SAP HANA Cloud, HANAデータベースサービスとSAP HANA Cloud, data lakeサービス間の互換性レベルが高まっただけでなく、一つのSAP HANA Cloud, data lakeインスタンス内のデータベースエンティティの論理グループを保持することが可能になりました。

インド、ムンバイのデータセンターの追加

データセンターのランドスケープ強化も2022年Q4の強化点の一つです。データセンターのカバー範囲をさらに拡大し、特にSAP HANA Cloud, data lakeにおいてインド、ムンバイのデータセンターを追加しました。
.
このGoogle Cloud Platformのデータセンターの追加により、複数のクラウドサービスプロバイダーによるサービスがさらに強化され、お客様は、ニーズに最も適するクラウドストレージサービスプロバイダーを選択することができます。.

 

SAP HANA Database ExplorerのSAP HANA Cloud, data lake リレーショナルエンジン関連の強化

SAP HANA Data base Explorerにおいても、SAP HANA Cloud, data lakeリレーショナルエンジンに関していくつか機能強化されました。例えば、ステートメントライブラリのサポートや、複数のインスタンスに対するステートメントのバックグラウンドでの実行などが可能になりました。

さらに、自動コミット、監査、クエリープランの設定が選択できるようになりました。

2023年3月版の新機能

SAP HANA Cloud, data lakeにおけるイノベーション

SAP HANA Cloudに統合されているSAP HANA Cloud, data lakeは、ペタバイト単位のデータを低コストで保存するのに最適なオプションです。 SAP HANA Cloud, HANA データベースに接続された拡張部としてデプロイするか、スタンドアロンの SAP HANA Cloud, data lakeとしてデプロイするかは、お客様次第です。 20233月版では、SAP HANA Cloud, data lakeに特化したイノベーションが2つ実装されました。それぞれについて紹介します。

SAP HANA Cloud, data lakeリレーショナルエンジンにおけるBooleanデータ型のサポート

2023 年第1四半期のSAP HANA Cloud, data lakeのイノベーションで最初に挙げるのは、SAP HANA Cloud, data lakeリレーショナルエンジンにおけるBooleanデータ型のサポートです。これにより、SAP HANA Cloud, data lakeサービスで、SAP HANA Cloud, HANA データベースのBooleanデータ型と同じセマンティクスを提供できるようになりました。

SAP HANA Cloud, data lakeリレーショナルエンジンにおけるBooleanデータ型のサポート

このイノベーションにより、SAP HANA Cloudの異なるデータベース間のユーザーエクスペリエンスが大幅に向上しただけでなく、データ型の互換性も向上し、データの階層化がさらに容易になりました。

インクリメンタル「リフレッシュ」機能を備えたマテリアライズドビュー

2023年第1四半期リリースでは、SAP HANA Cloud, data lakeのマテリアライズドビューが自動的かつインクリメンタルに維持できるようになりました。つまり、前回の更新以降の差分または変更を計算するだけでコンテンツが更新されるようになりました。

SAP HANA Cloud, data lake リレーショナルエンジンにおけるマテリアライズドビューのインクリメンタルなリフレッシュ 

これにより、リフレッシュに必要とされる演算リソースが低減され、リフレッシュのパフォーマンスが向上しました。

 

SAP HANA Cloud, data lakeクライアント

SAP HANA Cloudの20233月版リリースでは、SAP HANA Cloud, data lakeのクライアントにも優れた機能が追加されました。

SAP HANA Cloud, data lakeクライアントにおけるGoドライバーのサポート

最新リリースより、SAP HANA Cloud, data lakeクライアントでMicrosoft Windows およびLinux上で開発されたのGoアプリケーションが、SAP HANA Cloud, data lakeに対してクエリを実行できるよう、データベースドライバーの提供を開始しました。

このイノベーションにより、お客様が SAP HANA Cloud, data lake内のリレーショナルエンジンにアクセスするための言語の選択肢がさらに追加されました。

詳細については、「Go (golang) Driver」および「Go Driver を使用した Data Lake Relational Engine への接続 (チュートリアル)」を参照してください。

この新しい機能の詳細については、こちらデモをご覧ください。

 

全体的なイノベーション

SAP HANA Cloud, data lakeに関係するSAP HANA Cloudの全体的な機能強化について紹介します。

管理機能

オンプレミスの環境では管理者が処理しなければならなかったタスクの一部を、SAPのクラウドサービスではSAPが行っていますが、SAP HANA Cloudにおける管理機能は依然として重要なトピックです。 この四半期では、特にセキュリティ、ダウンタイムがほぼゼロの構成における柔軟性、さらに、ワークロード管理の分野のイノベーションが実装されました。

カスタマーマネージドキーの管理

カスタマーマネージドキーの管理に関して、2023年第1四半期リリースでは、SAP HANA Cloud, HANA データベースおよび HANA Cloud, data lakeの新しいインスタンスをプロビジョニングする際のカスタマーマネージドキーのサポートが強化されました。 キーの状況も表示されるようになりました。管理ツールが強化されたことで、セルフ定義の暗号化キーとその管理がより容易になりました。

カスタム暗号化キーの管理

カスタマーマネージドキーの一貫した処理が可能になったことで、セキュリティ標準への準拠を維持するのに役立つだけでなく、カスタマーマネージドキーを使用して格納されたデータを暗号化することで、データベースのセキュリティを強化することが可能になりました。

ただし、暗号化キー管理のこの新しい機能強化は、SAP HANA Cloudの新しいマルチ環境用ツールを介してのみサポートされることに注意してください。

 

管理者データベース内のユーザーパスワードをリセットする機能

同様にSAP HANA Cloudのセキュリティ領域に関連していますが、管理者データベース内のユーザーパスワードをリセットする機能が追加されました。 SAP HANA CloudDBADMINデータベースユーザーパスワードと、SAP HANA Cloud, data lakeリレーショナルエンジンのHDLADMINデータベースユーザーパスワードをエンドユーザーが変更できるようになりました。

2023年6月版の新機能

全体的なイノベーション

カスタマー定義のバックアップ保持期間

これまでSAP HANA Cloudのデータベースインスタンスのバックアップ保持期間は固定であり、バックアップは14日間保持されていました。今回の変更により、データベース管理者はバックアップの保持期間をカスタマイズすることができます。

SAP HANA CloudのHANAデータベースとdata lakeリレーショナルエンジンのどちらもバックアップの保持期間は1日から7か月の間で選択可能になりました。

この調整は、SAP HANA Cloud Centralまたはコマンドラインインターフェースで行うことができます。
これにより、データバックアップのコスト削減の選択肢を提供するとともに、長期的なデータ保管を行いたいお客様ニーズを満たすことができます。

SAP HANA Cloud Centralにおけるバックアップ保持時間の設定

SAP HANA Cloud ツール

今回のリリースでは、SAP HANA Cloud Centralや SAP HANA Database Explorer などのSAP HANA Cloud ツールでも多くの強化がありました。

SAP HANA Cloud Central

最新のリリースでは、SAP HANA Cloud Centralという強力な機能もランドスケープツールに追加されました。

SQL Console

新しく設計された SQL Consoleにアクセスすることができます。他の追加ツールにナビゲートされることなく、データを発見し、データベースステートメントを実行できます。これによりほとんどのユースケースとシナリオで劇的に生産性を上げることができます。

SAP HANA Cloud CentralSQL Console

SAP HANA Database Explorer

SAP HANA Cloud, data lake filesのための新機能

SAP HANA Cloud, Data Lake Files のストレージは、ファイルベースのコンテンツを非常にコスト効率の高い形で提供します。

Q2 リリースで、Database Explorer には、ファイルストレージ内の選択されたファイルとフォルダーの名称変更または移動という新機能が追加されました。さらに、Database Explorerにリレーショナルエンジンとファイルストレージ自体の両方のSQL on Filesが追加されました。

new%20functionalities%20for%20Data%20Lake%20File%20Storage

Data Lake File ストレージのための新機能

SAP HANA Cloud, data lakeのイノベーション

トランザクションDDL ステートメント

紹介したい最初のイノベーションは、トランザクションDDLステートメントの実行のサポートです。トランザクションDDLのサポートにより、DDLステートメントのグループを、一連のステートメントごとの異なるトランザクションではなく、単一のトランザクションとして実行することができます。これまでどおり、デフォルトの動作では、すべてのDDLステートメントが、個別のステートメントを自動的にコミットしますが、ユーザーに対して実行する動作の調整の柔軟性を提供しました。

transactional%20DDL%20execution

トランザクションDDL の実行

この機能の実装においては、以下の制限があります:

PARQUETファイル形式へのエクスポート

SAP HANA CloudのQRC2リリース前は、Data Lake リレーショナルエンジン はParquetファイルからの LOAD TABLE のみをサポートしており、Parquetファイル形式へのエクスポートはサポートしていませんでした。今回のリリースにより、Parquetへのエクスポートもサポートしました。高圧縮のファイル形式のメリットを享受できるようになります。

Parquetのサポートのため、新たにROW GROUP SIZE 、COMPRESSIONなどの新しいUNLOAD ステートメントパラメーターが追加されました。

export%20to%20Parquet%20file%20format

Parquet ファイル形式へのエクスポート

 



このオリジナルブログが掲載されているSAP CommunityのSybase関連タグをフォローして、最新技術情報をキャッチアップしてください(フォローには登録が必要です)。

SAP Communityの関連タグ

・SAP HANA Cloud, data lake ブログ / Q&A
・SAP IQ ブログ / Q&A
・SAP SQL Anywhere ブログ / Q&A

SAP Communityでは質問も投稿することが可能で、世界中のSAP社員やユーザーのアドバイスを受けることができます。

 

———————————————————

SAPジャパンブログ内関連記事:

SAP HANA Cloud, data lake
SAP HANA Cloud, data lake 2022年12月版、2023年3月版、6月版の主な新機能
SAP HANA Cloudの「マルチ環境」のサポートとSAP HANA CloudのKyma環境からの使用
SAP HANA Cloud : データレイクおよびデータティアリング(階層化)概要
SAP IQシステムからSAP HANA Cloud, data lake (Standalone Data Lake) へ移行する理由トップ5
SAP IQまたは、SAP HANA Cloud, data lakeリレーショナルエンジンのインスタンスから別のインスタンスへログインをコピーする
SAP HANA Cloud, data lakeリレーショナルエンジンで非同期でテーブルをロードする
Jupyter NotebookとPySparkでSAP HANA Cloud, data lake Filesを使用する
SAP HANA Cloud, data lakeストレージのオブジェクトストレージへの変更によるパフォーマンス向上とペタバイト規模データの対応およびコスト低減
SAP HANA Cloud, data lakeでマテリアライズドビューを使用してパフォーマンスを上げる
SAP HANA Cloud, SAP HANA データベースとSAP HANA Cloud, data lake filesを使用する
SAP HANA Cloud, HANA データベースからSAP HANA Cloud, data lakeデータベースへの最速のデータ移行方法とテスト結果
SAP HANA Cloud, HANAデータベースから HANA Cloud, data lakeへのデータの高速移行とデータ移行速度に影響するパラメーター
SAP HANA Cloud, data lakeとSAP IQに共通するヒストリカルデータベースとDBSpaceサイズのキャプチャー方法
SAP HANA Cloud, data lake(IQ)をベースにしたNode.jsアプリケーションの構築
複数のSAP HANAソースからのデータを1つのSAP HANA Cloud, data lake(IQ)に集約する
SAP HANA Cloud, data lake Filesへの最初のアクセス設定
SAP HANA Cloud, data lakeおよびSAP IQにおけるスキーマのエクスポート/バックアップ
SAP HANA Cloud, data lake(IQ)にWindows端末からPythonで直接接続する
SAP HANA Cloud, data lakeへのデータロードにおけるvCPU数の影響
SAP IQのクラウドサービスが開始されました – SAP HANA Cloud, data lake (Standalone IQ)

SAP IQ
SAP IQのクラウドサービスが開始されました – SAP HANA Cloud, Data Lake (Standalone IQ)
SAP IQ – 隠れたイッピン(the hidden treasure) …
全てのSAP BW、SAP BW/4HANAリリースのSAP ニアラインストレージ(NLS)ソリューション – SAP IQ
SAP IQによるSAP ニアラインストレージ(NLS)のパフォーマンスを向上させる
SAP IQを利用したSAP Information Lifecycle Management(ILM)
DBA CockpitでSAP IQを有効にする
SAP IQのための容易なインストーラー - 「Q」
列指向データベースでもOLTPに対応したSAP Sybase IQ16の機能拡張
大量データの「圧縮率」と「ロード時間」を改善したSAP Sybase IQ16の技術解説
SAP IQ 16.1 SP05がリリースされました

SAP ASE
SAP ASE 16.0 SP03による高可用性(HA)+災害復旧(DR)の3ノードHADR
カスタム開発のアプリケーションにおけるSAP ASE Always-on機能へのDRノードの追加(パート 1)(パート 2)(パート 3)
SAP ASE 16.0 SP04の新機能
SAP ASEの新しい管理ツール「AMC」の紹介:インストール方法、メモリー管理、ワークロード分析機能、Workload AnalyzerのSSL設定について
SAP HANAプラットフォームを相互補完し進化する旧Sybase製品の今――SAP ASEとSAP IQ
SAPアプリケーション向けデータベースとしてSAP Sybase ASEが採用される理由とは
RDBMSのパフォーマンス向上の仕掛け――SAP Sybase ASE 15.7の最新アーキテクチャー解説

オンラインマニュアル:
SAP HANA Cloud
SAP HANA Cloud, Data Lake (SAP HANA DB-Managed)
SAP HANA Cloud, Data Lake (Standalone)
SAP Datasphereスペースを SAP HANA Cloud, data lakeに接続して、大量のデータを保存または利用できます。
SAP IQ
SAP SQL Anywhere(日本語)/(最新英語)
SAP ASE

SAP Community (ブログ/ Q&A) :
SAP HANA Cloud, data lake
SAP IQ
SAP SQL Anywhere (日本語ブログ一覧ページ
SAP ASE

SAP Community Wiki:
SAP IQ
SAP SQL Anywhere
SAP ASE

sap.com 製品ページ:
SAP HANA Cloud, data lake
データレイクとは
SAP IQ
SAP SQL Anywhereサブページ
SAP ASE

デベロッパー向けチュートリアル
SAP HANA Cloud, data lake

その他:
SAP IQ テクニカル概要
SAP IQ 16.0 ハードウェアサイジングガイド
様々なストレージおよびネットワークテクノロジーにおける SAP IQ 16 Multiplex のパフォーマンス評価

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

連記事

  • SAP S/4HANAとFinTech融合による、デジタルトレジャリーへの変革 第5弾 財務リスク管理編 後編(為替リスク管理)

    SAP S/4HANAとFinTech融合にるデジタルトレジャリーへの変革 第5弾 財務リスク管理編 後編(為替リスク管理)
    多くのグローバルトレジャリー変革事例が、海外企業だけではなく、日本企業でも発表されるようになりました。そこで今回は、デジタルトレジャリー財務リスク管理編 後編(為替リスク)として、SAP S/4HANAを活用した財務資金管理ソリューション全体の中核となる財務リスク管理(為替リスク管理)に関する内容です。

    続きを見る

  • SAPで少しずつ頭角を現しだしたSAP SQL Anywhere

    実際の業務を想定したオンライントランザクション処理のベンチマークであるTPC-Cベンチマークにおいて、2014年11月、2万ドル程度の低価格のマシンを使用し、同時アクセスユーザー数9万人を想定したテストで価格性能比No.1(= 1分間に処理できるトランザクション数あたりのコストが一番低い)を記録しました。

    続きを見る

  • SAP IQ – 隠れたイッピン (the hidden treasure) …

    プライマリデータベースからヒストリカルデータを移動する標準的な方法として、SAP IQを使用したニアラインストレージの実装はデファクトスタンダードと言えます。SAP IQ 独自の機能性はあまり知られていませんが、機能的な最大制限値もその1つで大規模システムにたいへん有効です。

    続きを見る

SAPからのご案内

SAPジャパンブログ通信

ブログ記事の最新情報をメール配信しています。

以下のフォームより情報を入力し登録すると、メール配信が開始されます。

登録はこちら