SAP HANA Cloudの「マルチ環境」のサポートとSAP HANA CloudのKyma環境からの使用

作成者:伊藤 沢 投稿日:2023年6月29日

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このブログは、近い将来 SAP Community に移行する予定です。


このブログは、Tom Sleeが執筆したブログ「SAP HANA Cloud goes “multi-environment”: Part 1- feature overview」(2022/9/21)、「SAP HANA Cloud goes “multi-environment”: Part 2- getting started」(2022/9/21)、「Consuming SAP HANA Cloud from the Kyma environment 」(2022/12/15) の抄訳です。最新の情報は、SAP Communityの最新ブログ等を参照してください。


SAP HANA Cloud の「マルチ環境」のサポート パート1 – 機能概要
SAP HANA Cloud の「マルチ環境」のサポート パート2 – 使用開始方法
SAP HANA CloudのKyma環境からの使用

SAP HANA Cloud の「マルチ環境」のサポート

このブログでは、Thomas HammerによるSAP HANA Cloud 2022 QRC3の新機能に関するブログで紹介されている「マルチ環境」のサポートについて説明します。パート1では概要を、パート2では、マルチ環境用SAP HANA Cloudツールを使用した使用開始方法について説明します。

パート1 – 機能概要

2022年10月の2022 QRC3リリースで、SAP HANA Cloudは「マルチ環境」対応になりました。ここでいう「マルチ環境」とは、 SAP BTP サブアカウントで利用できるCloud FoundryまたはKymaのランタイム環境のことを言います。このブログでは、これが何を意味し、ユーザーにとってどのようなメリットがあるのか説明します。

変更ないもの

最初に、変更されないものについて説明します。

  • SAP HANA Cloudはリリース以来、利用可能な各データセンター内の異なるランドスケープで稼働しました。このランドスケープは、Gardenerで管理される一連のKuberneteクラスターのセットでした。これは変更後も変わりません。SAP HANA Cloudの全ての既存および新しいSAP HANA データベースとData Lakeインスタンスは、SAP HANA Cloudが現在稼働しているランドスケープと同じランドスケープ内に作成されます。既存の全てのデータベースは、現在と全く同じ方法で利用可能です。
  • SQLエンドポイント(クライアント/サーバー接続用のポート番号443とホスト名)の変更もありません。
  • 管理目的でのSAP HANA Cloudランドスケープへのアクセスは、BTP CockpitSAP HANA Cloudツール(SAP HANA Cloud Central, HANA Cockpit, Database Explorer)または「cf」コマンドラインユーティリティーで行われてきました。これらは常にSAP HANA Cloudランドスケープと同じリージョンのCloud Foundryのランドスケープ内で実行されましたが、このランドスケープとは異なりました。新しいマルチ環境対応ツールはこれとは別に実行されるものの、既存のCloud FoundryベースのSAP HANA Cloudツールは当面の間継続して利用できます。すぐに変更する必要はありません。
  • マルチ環境対応のSAP HANA Cloudツールに移行した後も、ユーザーエクスペリエンスの観点で最初は大きな違いはありません。マルチ環境対応ツールは、本質的にCloud Foundryツールと同じですが、異なる環境で稼働しています。今後徐々に、新機能のほとんどがマルチ環境対応ツールのみに追加されていく予定です。

ほとんどのBTPユーザーにとって、Cloud Foundry固有のコンセプトがどこからで、SAP BTPコンセプトがどう引き継がれているのかはわからないと思いますが、SAP HANA Cloudのリリース以来、Cloud Foundryのコンセプトが、SAP HANA Cloudのエクスペリエンスの中心でした。データベースのプロビジョニング、管理、開発作業のためのSAP HANA Cloudへの全てのHTTPアクセスは、以下の図のようにCloud Foundryのユーザー認証と認証フレームワーク経由でした。

SAP%20HANA%20Cloud%20runs%20in%20its%20own%20landscape%2C%20but%20most%20access%20to%20it%20is%20through%20Cloud%20Foundry

SAP HANA Cloud は独自のランドスケープ上で稼働しますが、SAP HANA CloudへのアクセスのほとんどはCloud Foundry経由でした。

その結果、SAP HANA Cloudのデータベースインスタンスは、指定のCloud Foundryの 「組織」とスペースに「所属」していました。そのため、単なるホスト名とポート番号であるSQLエンドポイントではなく、開発、管理、またはツールの利用の目的でこれらにアクセスするには、作業するCloud FoundryスペースのSpace Developerのロール権限が必要でした。

変更の舞台裏

それでは、何が変わったのでしょうか?裏ではいくつかの変更があります。

  • 新しいマルチ環境対応用のSAP HANA Cloudツールは、Cloud Foundryではなく、SAP HANA Cloudランドスケープ内で稼働します。その結果、Cloud Foundryランタイム環境が有効になっていないサブアカウントでも利用できるようになりました。ツールとSAP HANA Cloudデータベースインスタンスがより密接に連結するようになったため、カスタマーフェーシングの管理APIや、他のBTPサービスとのイングレーションの改善など、今後さらなるイノベーションや機能追加が可能になりました。
  • Cloud Foundryツールには「cfCLIのようなコマンドラインインターフェースがあるのと同様に、マルチ環境対応ツールにもコマンドラインインターフェースがあります。これは他のSAP BTPサービスで使用されている「btp」コマンドラインツールで提供されています。btpコマンドラインツールは、SAP Cloud Toolsページ から利用可能で、BTPのマニュアルに掲載されています。 CLIにはほとんどのアカウントが移行済ですが、グローバルアカウントがFeature Set Bに移行している必要があります。こちらを参照してください。
  • ツールへのアクセスとbtpを使用するための認証は、Cloud Foundryスペースではなくサブアカウントレベルで定義されるユーザーとロールのコレクションを通して提供されます。(BTPでは、XSUAAと呼ばれる認証フレームワークを見かけることがあると思います)。認証と認証スキームの概要はBTPのマニュアルで解説されています。サブアカウントベースの認証への移行には、いくつかのメリットがあります。以下に紹介します。

メリット

最も大きなメリットは、認証と権限まわりに関するもので、XXUAA BTPサブアカウントモデルの利用から得られるものです。

  • BTPサブアカウントとクラウドのユーザーにシングルサインオンとセキュアな認証を提供するSAP Identity Authentication Service (IAS)と、BTPサブアカウント間で信頼を確立することができます。BTPサブアカウント管理者として、サブアカウントからBTP CockpitSecurity、Trust Configurationで設定します。
  • 信頼が確立したら、IASを組織独自のIDプロバイダー (IdP) へのプロキシーとして使用することができます。これは、ユーザーを独自のIdPのグループに割り当てることによってSAP HANA Cloudへのアクセスを制御できることを意味しています。別のSAP BTPのクレデンシャルと権限を管理する必要はなくなりました。
  • BTPロールコレクションを使用して、プロジェクトやオペレーションのニーズに合わせてSAP HANA Cloudパーミッションに他のロール(例えばBusiness Application Studioへのアクセスなど)をバンドルすることができます。その後、IdPのユーザーのグループにロールコレクションを割り当てることができ、そのグループにユーザーを追加すると、そのユーザーには必要な(またはそれ以上の)全てのパーミッションが付与されます。
  • 今後、マルチ環境用ツールとCloud Foundryのツールは少しずつ異なっていきます。新しい機能は、Cloud Foundryツールではなく主にマルチ環境用ツールに追加されていきます。新しい機能のリリースとともにその機能を利用するにはマルチ環境用ツールへの移行が最善です。
  • Kyma環境を利用してアプリケーションを実行するSAP BTPのユーザーは、マルチ環境用ツールを利用した方がよりよいサポートを得られるようになります。Kyma ネームスペースへのSAP HANA Cloudデータベースのマッピングは少しずつ行われる予定です。

開発者向け

SAP Business Application Studioを使用してCalculation View(「ネイティブHANA開発」)またはCloud Foundryアプリケーションを開発されている場合、新しいモデルでも引き続き開発は可能ですが、SAP HANA Cloudインスタンスは、Cloud Foundryスペース「内に作成」されないため、1つ以上のCloud Foundryスペースで利用するためには「インスタンスマッピング」の機能を使用する必要があります。この機能は、SAP HANA Cloud Centralから利用可能です。インスタンスの横にある3つの点をクリックして、Manage Configurationを選択します。その後Instance Mappingに移動すると、インスタンスをCloud Foundry 組織とスペースにマップしてHDIコンテナを作成することができます。

Mapping%20a%20HANA%20database%20instance%20into%20a%20Cloud%20Foundry%20org%20and%20space

SAP HANA Cloud データベースインスタンスをCloud Foundry orgおよびスペースにマッピング

Kyma内でアプリケーションを開発している場合には、同様のインスタンスマッピング機能が利用可能になるまで、もう少々お待ちください。近い将来Kymaにおけるインスタンスマッピング機能をリリースしたいと思っています。

NEXT ?

パート1では、SAP HANA Cloudにおけるマルチ環境のサポートとは何か(WHAT)について説明しました。次のパート2では、使用開始方法(HOW)について説明します。


パート2 – 使用開始方法

パート1 では「SAP HANA Cloudにおける「マルチ環境」のサポートが何を意味するのか、そのメリットは何かについて説明しました。パート2では、実際の使用開始方法について説明します。ここでは、SAP BTPのグローバルアカウントおよびサブアカウントの管理者(プラットフォームユーザー)向けに、SAP HANA Cloudデータベース管理者と開発者が新しいマルチ環境対応のSAP HANA Cloud ツールで作業することを目的として説明します。

はじめに

マルチ環境用ツールは、SAP HANA Cloudの新しいBTPサービスプランとして提供されています。そのため、アクセスするためにはいくつかのステップを踏む必要があります。特定のグローバルアカウントの特定のサブアカウントで新しいツールの使用を開始するには、以下のタスクを完了する必要があります。それぞれについては以下で詳しく説明します。対象のサブアカウントのグローバルアカウント管理者とサブアカウント管理者権限を取得している場合には、これらのタスクは15分程度で完了することができます。

  1. これらのタスクを実行するには、新しいSAP HANA Cloud サービスがエンタイトルメントに追加されている必要があります。
  2. サブアカウント管理者またはグローバルアカウント管理者は、BTP Cockpitから特定のサブアカウントのエンタイトルメントにSAP HANA Cloud Toolsサービスプランを追加する必要があります。
  3. サアブアカウント管理者は、BTP CockpitService MarketplaceからSAP HANA Cloud Toolsサービスプランをサブスクライブする必要があります。
  4. サブアカウント管理者は、SAP HANA Cloud Toolsにアクセスする必要のある各ユーザーに適切なロールコレクションを割り当てる必要があります。
  5. これらのステップが完了すると、個々のユーザーはBTP Cockpitからマルチ環境用SAP HANA Cloud Toolsにアクセスすることができるようになります。また、Toolsをブックマークして、ブラウザーから直接アクセスすることができます。

ここでは、BTP Cockpit を使用してSAP HANA Cloud Toolsへアクセスするステップについて説明しますが、このプロセスは、BTP Cockpitを使わず、btpコマンドラインインターフェースを使用して行うことも可能です。また、グラフィカルなツールを使わずにbtp CLIを通してSAP HANA Cloud管理機能へアクセスすることも可能です。

BTP Cockpitからサブアカウントのエンタイトルメントを追加する

グローバルアカウントでSAP HANA Cloud Toolsが利用できるようになったら、次のステップではこれをサブアカウントレベルで利用できるようにします。そのためには、サブアカウント管理者パーミッションを持つユーザーはまずサブアカウントのエンタイトルメントを設定し、サービスプランをサブスクライブする必要があります。

特定のサブアカウントにSAP HANA Cloud Toolsのエンタイトルメントを追加するには次のステップを実行します。

  1. Canary LandscapeBTP Cockpit にアクセスします。
  2. ウィンドウの上部にあるドロップダウン画面で、正しいグローバルアカウントが選択されていることを確認し、アクセスを有効にするマルチ環境対応のSAP HANA Cloud Toolsのサブアカウントに移動します。サブアカウント管理者の場合、左側にエンタイトルメントとセキュリティー設定などのメニュー項目が完全なセットで表示されます。サブアカウントにCloud Foundry環境が有効になっていない場合でも、SAP HANA Cloud Toolsにアクセス可能なことに注意してください。
  3. 左側のEntitlementsをクリックし、スクリーン右側のConfigure Entitlementsをクリックします。
  4. Add Service Planをクリックし、エンタイトルメントダイアログを表示します。次にエンタイトルメントリストの中からSAP HANA Cloudを検索し、tools (Application)をチェックします。スクリーンショットでは、tools (Application)はすでにチェックされています。
  5. hana サービスプランをサブスクライブしていない場合は、HANAデータベースをプロビジョニングできるようにするためにもサブスクライブする必要があります。
  6. Add Service Planボタンをクリックし、サービスプランを追加します。メインスクリーンのSaveボタンをクリックして必ずエンタイトルメントの設定を保存してください。

このステップを完了させるには、新しいエンタイトルメントがピックアップされるようSAP BTPBTP Cockpitウィンドウの上部左側)からログアウトし、再ログインする必要があります。

BTP Cockpitからサービスプランをサブスクライブする

  1. BTP Cockpitのメインウィンドウで、お客様のグローバルおよびサブアカウントのService Marketplaceに移動し、SAP HANA Cloud タイルをクリックします。
  2. CreateをクリックしてNew Instanceまたは Subscriptionダイアログを表示します。ServiceドロップダウンリストからSAP HANA Cloud、そしてPlanドロップダウンからtoolsを選択します。
  3. ウィザードを完了し作業を保存します。これでこのサブアカウントはSAP HANA Cloud Toolsへアクセスできるようになりました。サブアカウントのサブスクリプションリストにtoolsが表示されるようになります。

サブスクリプションはこれで完了です。最後のステップは、ユーザーにアクセス権限を付与することです。


BTP Cockpit
から適切なロールコレクションを割り当てます

このステップを行うにはサブアカウント管理者である必要があります。

SAP BTPアプリケーションとしてマルチ環境対応ツールにアクセスするための権限は、サブアカウントレベルで定義され、ユーザーに割り当てられているロールコレクションで制御されています。これはCloud FoundryスペースのSpace Developerロールによって制御されているCloud Foundryツールとは異なります。マルチ環境モデルのメリットの一つは、他のBTPサービスへのパーミッションやSAP HANA Cloudパーミッションを含むカスタムのロールコレクションを定義できることです。もう1つのメリットは、カスタムIDプロバイダーを使用して認証されたサブアカウントユーザーに、ロールコレクションを割り当てられることです。そのため、BTPを使用しており、BTPと他のコーポレートIDプロバイダーとの間に信頼を設定しているお客様は、自社のコーポレートIDプロバイダーのグループにユーザーを追加することでSAP HANA Cloud Toolsへのアクセスを割り当てることができます。これらの詳細はここでは説明しませんが、デフォルトのBTP IDプロバイダーと事前にインストールされているロールコレクションを使用して説明します。

  1. SAP HANA Cloudには事前インストールされたロールコレクションが1つあります。SAP BTP CockpitRole Collectionsで確認できます。ここでは、何もする必要はありませんが、SAP HANA Cloud の管理者ロールを有していることを確認してください。
  2. ナビゲーションツリーのUsersにアクセスし、SAP HANA Cloud Toolsにアクセスするユーザーを選択します。サブアカウントの管理者の場合は、自分自身に適切なパーミッションを付与することができます。Assign Role Collectionをクリックすると、ダイアログが表示されます。
  3. Assign Role Collectionダイアログで、SAP HANA Cloudインスタンスを作成または変更するユーザーにSAP HANA Cloud管理者ロールを割り当てます。SAP HANA Cloudインスタンスを監視する必要がある場合、または開発者として(Database Explorer経由で)SAP HANA Cloudインスタンスにアクセスする必要がある場合は、SAP HANA Cloud Viewerロールコレクションを割り当てます。設定は忘れずに保存してください。
  4. 自分自身にロールを割り当てる場合は、ウィンドウの右上のSAP BTP Cockpitからログアウトして再度ログインし、ロールコレクションを収集してください。

SAP BTP CockpitからSAP HANA Cloud Toolsにアクセスする

これでSAP HANA Cloud Toolsの権限を取得できたため、SAP BTP CockpitからSAP HANA Cloud Toolsにアクセスできるようになりました。

  1. グローバルアカウントおよびサブアカウントにアクセスし、左側のInstances and Subscriptionsをクリックします。
  2. SAP HANA CloudアプリケーションのボタンからGo To Applicationをクリックして別タブのSAP HANA Cloud Centralを起動します。
  3. これで、SAP HANA Cloud Centralアプリケーションが表示されるようになります。これは、Cloud Foundry版のSAP HANA Cloud Centralとよく似ていますが、上部をみると、Cloud Foundryの組織とスペースではなくサブアカウントが表示されていることがわかります。Cloud Foundryの組織とスペースがまだ表示されている場合は、割り当てられているロールコレクションがありません。SAP HANA Cloud Centralからサインアウトして、再度サイインしてください。

これで、BTPSAP HANA Cloud Toolsにアクセスすることができます。


SAP HANA CloudのKyma環境からの使用

SAP HANA Cloudにデータを格納するSAP Business Technology Platform (BTP) アプリケーションは通常SAP HANA データベースインスタンスにホストされるSAP HANA CloudスキーマまたはHDIコンテナを使用して行います。多くのBTP上のアプリケーションはこれまでCloud Foundryランタイム環境で開発、ディプロイされてきましたが、アプリケーションの開発やホスティングにおいてKubernetesベースのKymaランタイムが重要になってきました。

2022年10月までは、SAP HANA Cloudへのアクセスは、Cloud Foundryに依存していましたが、マルチ環境用HANA Cloud ToolsのリリースによってCloud Foundryには依存せず、SAP HANA Cloud Toolsにアクセスして、(Cloud Foundryスペースではなく)サブアカウントレベルでデータベースインスタンスをプロビジョニングして管理することができるようになりました。あるいは、btpコマンドラインインターフェースを使用して、インスタンスを作成、開始、停止することもできます。しかしながら、この新しいマルチ環境へのアプローチでも、まだHANA HDIオンテナまたはHANAスキーマを使用してデータを格納するアプリケーションの開発をKymaで行うことはできませんでした。

(免責事項:これはかなり専門的なブログで上の段落の意味を理解しているとしています。何も意味しない場合は関係ないブログである可能性があります。)

このトピックに関してビデオを好まれるようであれば、こちらYouTubeSAP HANA Academyチャンネルの動画でも紹介しています。

概要

2022年12月のリリースにより、SAP HANA Cloud ToolsHANA HDIコンテナとスキーマで動作するKymaアプリケーションを開発することができるようになりました。

プロセスの概要は以下のとおりです。

  1. マルチ環境版のSAP HANA Cloud Centralまたはbtp CLIから、サブアカウントにHANAデータベースインスタンスをプロビジョニングします。
  2. マルチ環境版のSAP HANA Cloud Centralから、「インスタンスマッピング」機能を使用してインスタンスを同じサブアカウントまたは異なるサブアカウントのKyma namespace(またはCloud Foundryスペース)にマップします。
  3. Kymaダッシュボードから、またはkubectl CLIを使用して、「マップした」SAP HANA Cloud データベースインスタンス内のコンテナまたはインスタンスを作成するHDIコンテナまたはHANAスキーマサービスインスタンスを作成します。
  4. Kymaダッシュボードから、またはkubectl CLIを使用して、HDIコンテナのservice bindingを作成します。
  5. これでservice binding を介してSAP HANA Cloudを利用できるようになりました。

このブログでは、ステップ234について説明します。このプロセスはシンプルではありませんが、インスタンスのマッピングを行ってしまえば、SAP HANA Cloudデータベースインスタンスを多くのHDIコンテナまたはスキーマから使用することができるようになります。

前提条件

サブアカウントでは、SAP HANA CloudサービスとSAP HANA Schemas & HDI Containersサービスの両方をサブスクライブする必要があります。

SAP HANA Cloudのマルチ環境用ツールであるtoolsアプリケーションサービスを必ずサブスクライブしてください。

同様に、SAP HANA Schemas & HDI ContainersサービスがKyma環境で使用できるか確認してください。ここでは、schemaサービスプランのみ使用します。

SAP HANA CloudデータベースインスタンスをKyma namespaceへマップする

マルチ環境用HANA Cloud Toolsを使用してSAP HANA Cloudインスタンスをサブアカウントにプロビジョニングしているとします。また、アクセス元のKyma namespaceも必要です。ここではnamespaceは同じサブアカウントにありますが、必ずしもその必要はありません。下はtom-namespace というnamespaceKymaダッシュボードにあることがわかります。

SAP HANA Cloudデータベースインスタンスをマップするには、Kymaランタイム環境の環境インスタンスIDを知る必要があります。KymaダッシュボードのNamespacesからkyma-systemにアクセスすることで確認できます。

kyma-systemのリンクをクリックし、ConfigurationからConfig Mapsにアクセスし、sap-btp-operator-configを検索します。

 

sap-btp-operator-config Config Mapを開き、CLUSTER ID識別子をクリップボードにコピーします。これをSAP HANA Cloud Centralインスタンスマッピングダイアログに貼り付けます。

SAP HANA Cloud Centralから、Kyma namespaceへのインスタンスマッピングを設定できるようになりました。

SAP HANA Cloud Centralより、3つの点をクリックし、Manage Configurationを開きます。

 

右上にあるEditから、Instance Mapping、Add Mappingをクリックします。Kyma環境のタイプを選択し、Cluster IDnamaespaceを入力します。下の画面のようになります。インスタンスもCloud Foundryスペースにマップされていることに注意してください。

これでインスタンスのマッピングのステップは終了です。このインスタンスはマップされたnamespaceのサービスのリストには表示されませんが、SAP HANA Schemas & HDI Containers サービスでの利用は可能です。インスタンスマッピングについては、SAP HANA Cloudのマニュアルのこちらに説明があります。

インスタンス共有という用語

ここでは「インスタンスマッピング」という表現を使用しました。SAP BTPには「インスタンスの共有」という関連するコンセプトがありますが、SAP HANA Cloudには実装されていません。多くの開発者は、インスタンスの共有よりもアプリケーションからのHANAスキーマとHDIコンテナの作成とバインドを望んでいます。この目的は、インスタンスのマッピングを行うことでより適切に行うことができます。

HANA Schemaサービスインスタンスを作成する

残りのステップは、Kymaダッシュボードから行います。HANA schemaのサービスインスタンスを作成するには、namespaceを開き(ここではtom-namespace)、BTP Service InstancesをクリックしてCreate Service Instanceをクリックします。

 

ダイアログで、名前(ここではtom-schema-instance)を入力し、Offering nameに「hana」、 Plan nameに「schema」を入れます。これらの名前はBTP Cockpitでも、Service MarketplaceのSAP HANA Schemas & HDI Containersのタイルをクリックすることで表示されます。

Createをクリックして完了です。これでSchema サービスインスタンスを利用できるようになりました。

余談:使用可能なインスタンスは1つだけなため(このnamespaceにマップされた1つ)、どのスキーマをどのHANAインスタンスに作成するのか尋ねられませんでしたがが、1つ以上のインスタンスをマップしている場合には、インスタンスを選択するよう求められます。Service instance nameをクリックしてservice instanceのプロパティをみると、Instance IDを確認することができます。これは、SAP HANA Cloud CentralからマップしたHANAデータベースインスタンスのinstance IDと同じです。

Service Bindingを作成する

最後のステップはService Bindingを作成し、Kymaアプリケーションがこのスキーマにバインドできるようにすることです。Kymaダッシュボードでは、namespaceを再度開き、Service Bindingsから、Create Service Bindingにアクセスします。

Service Instance Nameのドロップダウンからの唯一のエントリーは先に作成した tom-schema-instance です。Service bindingに対して名前(このブログではtom-schema-binding)をつけ、Createをクリックします。

Bindingをみる

Service bindingはKyma namespaceKuberneteに格納されています。Kyma ダッシュボードで、Service Binding リストから作成したbindingをクリックすると、エンコードされたコンテンツを表示する新しいウィンドウが開きます。右上にあるDecodeをクリックすると、詳細が表示されます。Snippetは以下のとおりです。

これで、これのbindingを使用してKymaアプリケーションでデータを格納することができるようになりました。しかし、Kymaアプリケーションの開発はこのブログのスコープ外(であり私の専門外)です。Kyma開発のジャーニーのステップの役にたてば幸いです。

(2023年1: この資料は、コマンドラインの手順も含め、マニュアルのSAP HANA データベースを別の環境コンテキストにマップするにも掲載されています)




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