グローバルから優れた人材を発掘・育成・配置し、グローバルで戦う


こんにちは、SAPジャパンの鎌田です。10月30日(水)に大阪で「SAPグローバル人材フォーラム2013 大阪 Autumnグローバル経営を実現する人材戦略」が開催されました。本連載では3回にわたり、当日の内容をダイジェストでご紹介していきます。第1回は、株式会社リコー 人事本部 副本部長 兼グローバルHRセンター長 除村健俊(よけむら たけとし)氏による特別講演「グローバル経営に向けたグローバル人事戦略」です。

グローバル市場での成長を支える人材の育成と活用

写真 4リコーではこれまで、M&Aによる海外企業の買収を通じて積極的なグローバル展開を行ってきました。この成長を将来にわたって維持、拡大するためにもグローバル人材の育成が急務と考えた同社では、2011年からさまざまな取り組みを進めています。

除村氏は、この背景について「これまでは買収先企業の独立性を尊重するという視点から、人事制度や情報システムの統合にはあえて手をつけてきませんでした。しかし、激化するグローバル市場で勝ち抜き、さらなる成長を目指すには、本社の求心力=ガバナンスを強化しグローバル一体経営を目指すことが必要です。そのためには共通価値観の浸透や、新たなITシステムの導入が必須課題だった」と語ります。

もう1つの大きな要因としては、ビジネスそのもののグローバル化があります。製品販売中心のビジネスからより付加価値の高いソリューションの提供へと、ビジネスモデルは大きく変化しつつあります。

「ソリューションビジネスでは、ローカルのソリューションを他の国に横展開する、あるいは1つのソリューションを均質に世界規模で提供するといった対応が必要になります。これをHRという観点から見ると、いかにグローバルで活躍できる人材を発掘・育成・活用し、交流を活発化するかということが課題になってくるのです」。

3つのキーワードを中心に据え、グローバル化の実現に向けた体制を整備

グローバル経営に対応すべき3つのテーマを掲げています。

  1. グループ経営のベースとなるリコーグループの共通価値観の浸透
  2. グローバルでの競争力強化に向けた、グローバルガバナンス強化のための基盤整理
  3. グローバルでのトップタレント人材の獲得・発掘・育成による、グローバルで最適の人材活用の実現

除村氏はそれぞれのテーマ実現に向けて、人事施策に取り組まれています。

一つ目がリコーグループの共通価値観であり、企業理念である、「The RICOH Way」の浸透です。日本では、新入社員研修や新任管理職研修など、さまざまな機会を通して浸透させていく取り組みが設けられ、同様にグローバルでも全社的に実施されています。

二つ目に、グローバルガバナンスの強化のための基盤整備という観点から「グローバルHRマトリックス体制」の構築と、「人事ITシステム」の構築を履行されました。これらについてはそれぞれ、このあと改めてご紹介いたします。

三つ目として、人材活用を実現していくための重要施策として「トップタレントマネージメント」の制度構築と運用を進められました。

先ほど挙げた、「グローバルHRマトリックス体制」とは、グローバル人事のテーマや課題をワーキンググループに分け、世界4極で構成される各地域の人事担当者を繋いで、それぞれのワーキンググループ活動を進めていく取り組みです。

発足当初は、この仕組みを円滑に稼動させるのは決して簡単ではなかったと除村氏は明かします。各地域のメンバーからは、自分の仕事が忙しいのになぜグローバルの仕事まで担わなくてはならないのかという疑問が寄せられました。

このため、「本社および各極のCEOにこの体制にコミットしてもらい、本社に対する求心力を作り出していきました。いったん始めてしまえば、チームでの仲間意識が醸成され、さらにメンバーはグローバルで連携するチーム活動にやりがいを感じ、非常に円滑に議論を進めることができました」と除村氏は言います。

たとえば、ワーキンググループ活動の一つとして、「社員の意識調査」のグローバル実施検討があります。国ごとに文化や制度が異なる中で共通の設問に合意し、グローバルで漏れなく調査地域を定義し、各地域の実施責任者を定義することは容易ではありません。しかし、グローバルHRマトリックス体制のもと、各極に意識調査に精通した担当者がいたことで、約2カ月でこれらを完成できたといいます。

経営トップ自らが人材を評価する体制を確立

写真 3グローバル人事戦略のキモとなる「トップタレントマネージメント」について、もう少しご紹介いたします。

除村氏は、リコーのグローバルトップタレントに求められる人材像としてもっとも重視するのは「未来を描く力」だと語ります。実際の研修でも、この点に力を注いだプログラムが行われています。トップタレントマネージメント体系を構築する基礎となるのが「人材プール」です。このプールは「係長、課長、部長、役員候補」という4階層に分かれており、それぞれの階層の中で優れた人材を発掘していく取り組みが進んでいます。

また、4つの階層に応じた個別の研修プログラムが提供されており、特に役員候補の人材に対しては、対象となる人材を選出する会議が設置されています。この会議では、経営トップ層の方々が対象となる人材一人ひとりを検討しています。この結果、個々の人材や担当領域の人材に対する経営層の関心が高まり、人材へのより前向きな意識が育まれています。

「今回の取り組みの中でもっとも大きな成果は、グローバルでの人材に対し経営層の関心をより高められたことだと思います。また、こうした経営トップによる人材選出・評価の仕組みが構築されたことで、グローバルから優秀な人材が発掘され、彼らがグローバルで活躍し、今後のリコーの将来に大きな影響を与えていくことを期待しています」

SAP ERPの人事システムで、標準化と省コストを実現

最後に除村氏は、グローバル人材の発掘・育成・活用の基盤として、やはり人事システムは非常に重要であり、積極的に開発に取り組んでいると話します。長年にわたり使用してきた人事システムは、業務に個別最適で作成されており使いやすいシステムでしたが、一方でシステム連携が弱いため手作業が発生したり、セキュリティ設定の煩雑さなどに手間がかかっていました。これら課題の解決を目指してSAP ERPを導入されました。導入にあたり、リコーの人事業務がグローバル標準となるよう、SAPの標準機能の使用をプロジェクト方針とし、人事制度や人事業務の徹底した見直しと、関連会社への展開を行っていると言います。

「システムの実現にあたっては、人事の現場担当者を組織化し、まず、業務の現状とあるべき姿のDFD(データフローダイアグラム)を作成し、その上であるべき姿を実現するために、全ての人事制度とプロセスの見直しを行いました。この結果、国内のリコーグループの人事制度および給与系などの福利厚生制度がほぼすべて統一されたことで、今後の業務効率の向上に大きく貢献すると確信しています」。

また、SAPの標準機能の使用をプロジェクト方針としたことで、開発コストを削減し、開発リスクを少なくし、将来のバージョンアップ時にもコストを削減できます。さらに、グローバル標準の人事業務に合わせたので、グローバル展開時も業務展開を円滑に進めることができると期待できます。追加開発を極力少なくすることで、開発リスクを少なくし、さらに人事本部にリコーの技術者を配置してプロジェクトマネージメントを実施したことで、リコーの人事システム開発はプロジェクト計画通りの稼動日に、ほぼ何のトラブルもなくスムーズに稼動を開始できたとのことです。

「今後目指すステップとしては、まずグローバルのトップタレントのデータをリコー本社の人事システムに集約し、常に最新のデータを把握できる仕組みを整備すること。その次は、組織変更、人事異動なども含めた最新の情報をグローバルで蓄積、活用できるシステムを構築することを目指しています」

最終的には、リコーグループの人材がグローバルで活躍し、リコーの企業価値向上に貢献したい、と除村氏は抱負を語り、講演を締めくくりました。

今回ご紹介したリコーの除村氏による特別講演はいかがでしたか。次回は、SAPジャパンによるセッション「戦略実現のための人材情報管理」をご紹介します。

ご質問はチャットWebからも受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

●お問い合わせ先
チャットで質問する
Web問い合わせフォーム
電話: 0120-554-881(受付時間:平日 9:00~18:00)