ERPに溜まったデータを可視化して“経営に貢献するIT”を実現するには?-第2回

作成者:八木 幹雄 投稿日:2013年12月19日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

こんにちは。SAPジャパンの八木です。前回に引き続き、「ERPに溜まったデータを可視化して“経営に貢献するIT”を実現するには」というテーマで、今回はフィナンシャルシート(以下:F/S)を意識した具体的なKPIについて、ご紹介させていただこうと思います。

Analyst drawing out strategy on glass wall.

最初に前回のおさらいになりますが、「基幹システムに溜まったデータを活用して継続的に企業価値をあげていくこと」を目的に可視化プロジェクトを進める際、目標(トップメッセージ)→F/S項目→業務プロセス(以下ビジネスプロセス)→(各プロセスの)業務トランザクションという流れを理解する必要があります。そして、目標設定においても結果検証においても中核となるF/Sは、日々の業務トランザクションによって作られるため、業務トランザクションを生み出す各ビジネスプロセスにおける問題点を可視化し、改善する基盤を提供することが求められます。そこで今回は、ビジネスプロセスにおける問題点(KPI)とは具体的に何なのか?ということを説明していきたいと思います。

F/S(財務諸表)を意識したKPIの具体例

企業のトップが中期経営計画などで目標に掲げるKPIのうち、代表的なものとして下記2つがあります。

a. 売上や利益率の向上
b. キャシュフローの健全化

a. の売上や利益率の向上を目標に掲げるとき、業務ユーザーが意識するべきF/S項目は「売上」と「原価」になります。「売上」は受注、出荷、請求プロセスに関連し、「原価」は製造と購買に関連します。各ビジネスプロセスにおいて改善するべきKPIとしては、下図の「アクション指標の例」のとおりです。

picture01

売上や利益率向上を目標とした際のアクション指標の例

b. のキャッシュフローの健全化を目標に掲げるとき、業務ユーザーが意識するべきF/S 項目は「売掛金」「買掛金」「棚卸在庫」になります。各ビジネスプロセスにおいて改善するべきKPIとしては、下図の「アクション指標の例」のとおりです。

picture02

財務基盤の健全化を目標とした際のアクション指標の例

各KPIにおいて課題のインパクトを見るのは金額・数量であり、課題対応時の業務量を見るのは伝票数ですので、これらの情報が提供できることが理想です。

ここで提示したKPIはあくまで一例ですが、“改善するためには課題を可視化し、結果検証をするためには実績を可視化する”という観点を心に留めておいていただければと思います。ビジネスプロセスにおける課題(問題点)とは、プロセスにおける“滞留(ステータスによってブロックされていることや情報が不完全であるために次のプロセスに行けないこと)”や“遅延(納期や予定されている期日を超過している)”と考えるとわかりやすいと思います。

ここまでの内容をまとめますと、下記のようになります。

  • 「ERPに溜まったデータを可視化して“経営に貢献するIT”を実現する」ためには、方向性の定量化および結果の検証が行われるF/Sを起点に話を進める必要がある
  • F/Sは各ビジネスプロセスと連携しているため、ビジネスプロセスにおいて見るべき KPI を提供し、業務ユーザーが改善努力を日々確認できる可視化基盤を整えることが要求される

可視化要件の特性

F/Sを起点とした経営情報可視化を行うことの意義を認識した上で、ツール選定に向けてソフトウェア要件視点で可視化すべきことの特質をまとめます。

picture03

可視化領域別要件特性

この図はF/S、ビジネスプロセス、コアビジネスプロセスという3つの可視化領域別に比較すべき要件をまとめています。

F/Sの可視化におけるメインユーザーは、主に経営層や事業部長クラスの方が想定されますが、情報更新頻度はほかと比べて遅く、分析する内容は「売上」や「利益率」など分析内容の企業固有性は低いです。一方で、F/Sの勘定コードの設定(項目定義や粒度認識など)は企業ごとに異なるため、実装内容の企業固有性は高いと言えます。また、個別伝票のジャンプなどといったUI関連の機能が求められることは少ないですが、ドリルダウンや集計の粒度には細かな要求が入ることがしばしば見受けられます。

ビジネスプロセスの可視化におけるメインユーザーは、主に経営企画や各部門担当者が想定され情報更新頻度は速い傾向があります。ビジネスプロセスを幅広く可視化することが要求されるため、分析内容の企業固有性は低く、標準的なビジネスプロセスにおいては実装内容の固有性も低いと言えます。(SAP標準のトランザクションにアドオンをかぶせている場合でも、結果的に標準の伝票に情報やステータスが設定されるのであれば、分析における最低要件は満たすことができる場合がほとんどです。)問題のある個別伝票にジャンプする、しきい値を越えたらアラートを出すなどのUI関連機能が要求されます。

ビジネスプロセスの中でも企業の戦略な領域(商社におけるグローバル物流や製造業における製造工程プロセスなど)をコアビジネスプロセスと定義した場合、この領域のメインユーザーは主に戦略部門の担当者で、情報更新頻度はほかと比べて最速です。戦略部門のオペレーションを円滑に遂行させるため、分析内容の固有性は高く、ビジネスプロセスを細分化したステータス監視や関連伝票間の紐付け管理など、実装内容の固有性も高いといえます。UIやアラートには高いレベルが求められます。

次回は、今回説明した可視化要件特性を踏まえたうえでいかに可視化ツールの特性を把握し、システムとしての適材適所を実現するか、また、SAP Solution Managerをいかに活用するかについてご紹介させていただきます。

ご質問はチャットWebからも受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

●お問い合わせ先
チャットで質問する
Web問い合わせフォーム
電話: 0120-554-881(受付時間:平日 9:00~18:00)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

連記事

SAPからのご案内

SAPジャパンブログ通信

ブログ記事の最新情報をメール配信しています。

以下のフォームより情報を入力し登録すると、メール配信が開始されます。

登録はこちら