「計画精度」を向上し「収益」につなげたUNDER ARMOURのアナリティクス戦略
作成者:高橋 正樹 投稿日:2014年1月20日
こんにちは、SAPジャパンの高橋です。今回は2013年12月6日にSAPジャパン本社セミナールームで開催された「UNDER ARMOUR と AOKIホールディングスに学ぶ、柔軟かつ高精度な予算策定・業績管理の仕組み」におけるUNDER ARMOURの事例講演「成功の鍵:高度なアナリティクスの活用で成功をつかむUNDER ARMOURの戦略」をご紹介させていただきます。
スポーツアパレル業界をリードするパフォーマンスブランド
1996年の設立以来、世界をリードするスポーツアパレルのパフォーマンスブランドとして、「すべてのアスリートに競争力を与える」のコンセプトで成長を続けるUNDER ARMOURは、メンズ、レディーズ、ジュニア向け衣料をはじめ、フットウェア、近年ではウェアラブルテクノロジー製品などを世界の消費者に向けて提供します。グローバルで約5,000名の従業員を擁する同社は、米国ボルチモアに本社を構え、トロント(カナダ)、アムステルダム(オランダ)、香港、広州、上海などにグローバルオフィスを置き、卸売、小売、ショップインショップ、販売代理店、ライセンス提供などの複数の販売チャネルを通じてビジネスを展開しています。
既存の計画精度に「気づき」を与えた世界金融危機
現在ではスポーツアパレルの世界的なブランドとして認知を確立したUNDER ARMOURのビジネスに、大きな転機が訪れたのは2007年です。直営店のオープン、フットウェアの投入など、同社は製品ラインアップだけでなく、販売チャネル地域の拡大へ向けて、成長戦略の舵を切ります。しかし、これまで経験したことのない急激な需要の増加に十分な製品供給体制を整えることができず、大きなジレンマに陥りました。このため、二度とこのような機会損失を招かないためにも、とにかく十分な在庫を確保するという方針がCEOから各チームに徹底されました。
ところが翌年の2008年、前年の好景気から一点、世界中を混乱に陥れた未曾有の金融危機が発生します。同社は欠品を回避するために抱えた多量の在庫とは裏腹に、需要が激減するという危機的な状況に直面します。しかも、この時点ではビジネス計画の精度が十分ではなく、計画策定にも時間がかかっていたため、把握した情報はすぐに古くなり、リスクのコントロールにも悪戦苦闘したといいます。
また、事業の85%が卸売チャネル経由、95%以上を国内事業が占めている画一的な販売体制を改善するためにも、数値の精度を保ちながら、スピードと柔軟性を実現する新しい計画プロセスが必要であることは明白でした。
予算、計画、業績管理を実現する理想のカタチ
この状況を打破するためUNDER ARMOURは、新たなテクノロジーの導入にとどまらない、すべてのビジネスプロセスの再構築を念頭に、変革の第一歩を踏み出します。プランニングそのものの拡張性、変化に対応できる柔軟性、さらにIT部門ではなくビジネスユーザーがプランニングをリードできる環境構築を目標に掲げ、ソリューションの選定に着手しました。
その結果、同社が選択したのが正確な需要予測を支援するSAP Advanced Planning and Optimization(以下、SAP APO)と、販売計画、収益予測と利益計画、部門別予算の策定などを一元的に管理するSAP Business Planning and Consolidation(以下、SAP BPC)。商品の97%を外部から調達する同社では、正確な需要予測に基づく販売計画とそれに対応した調達プロセスは、ビジネスの要ともいえる重要な要素です。適正在庫を実現することで経営上のリスクを軽減し、ビジネスの拡大にも柔軟かつ迅速に対応できる計画プロセスが必要でした。
SAPソリューションを導入したUNDER ARMOURでは、SAP APOで需要計画を作成すると同時に、SAP BPC内に販売計画(Sales forecast)のアプリケーションを設けました。この販売計画は、顧客レベルからSKU(商品単位)レベル、さらに地域レベルまで作成されていきます。需要計画と販売計画には平均5%ぐらいの乖離がありますが、この2つの数字をもとに、どの数字を使って実行するのかを決定し、その結果がコンセンサスプランとしてSAP BPCにロードされ、実行に移されます。
SAP BPCは、ERPのトランザクションデータだけでなく、独立した分析ソリューションとして、SAP以外のシステムも含めたすべての情報を統合し、幅広い情報(ビッグデータ)に基づく精度の高い予測や分析が可能となっています。この統合されたプランニングのライフサイクルは、まさに同社が求めていたソリューションでした。SAP BPC内では、今後5年間におよぶ計画が策定されますが、この中には新製品の投入や小売店舗の展開などの要素も含めたビッグストーリーが盛り込まれています。実際の運用に当たっては、売上目標と予算を策定した上で該当期の実行計画へ落し込みます。この実行計画に沿って、週次のレビューおよび対策、さらに経営陣による月次財務レビューを実施し、四半期ごとには収支報告および財務文書を作成します。
直感的な経営ダッシュボードを支えるシステム構成
このような運用の中で大きな効果を発揮したのが、SAP BPCを活用した経営ダッシュボードです。直感的かつ迅速に財務パフォーマンスやチームメンバーのリクエスト対応状況、製品別の収益性などを把握し、対策を打つことができるようになります。
膨大なデータを扱うデータベース基盤となるSAP HANAから、分析のフロントエンドを構成するSAP BusinessObjects Business Intelligence 4.0まで一連の製品群が導入され、需要予測から実際の運用、そして効果測定に至る一連の経営管理プロセスを一貫して支えています。
4つの導入効果
SAP BPCの導入効果は、顧客収益性の向上という形で明確に発揮されています。その成功要因について、UNDER ARMOURは以下に示す4つのポイントを上げています。
- 大容量データの統合(受注、顧客および品目マスターレコードなど)
- 過去の個別顧客と成長した流通チャネルを統合した計画の中でリスクを評価
- SAP HANA の統計アルゴリズムを活用し、購買行動に基づいて顧客をセグメント化
- 売上の可視化と説明責任の明確化を通じ利益の向上を促進
また、業務面では精度の高い「収益予測と利益計画」に加え、アクセス制御され安全が担保された「業務ユーザー主導の部門別予算策定」、柔軟な組織階層エディターによる「M&Aのモデル化」などが可能となった点も大きなポイントです。
過去の失敗から多くの「気づき」を得たUNDER ARMOURが、SAP BPCを最大限に活用して成功を収めた事例講演の内容は、企業としての存続をかけた課題解決の個々のステップが、数多く盛り込まれており、経営管理や業績管理に課題を持つ多くの皆様に、課題解決のヒントを与えるものと思います。本事例についてさらに詳しく話が聞きたい、自社の課題に置き換えた場合の解決方法が知りたい、という方はお気軽にSAP ジャパンまでお問い合わせください。
次回は、同セミナーで同じくご講演頂いた、紳士服などのアパレル事業を中心に複数事業を展開される株式会社AOKIホールディングスの事例をご紹介したいと思います。
【インタビュー動画 / 英語】
Under Armour社:洞察を深め、優れた戦略を策定
スポーツ衣料、フットウェア、アクセサリーの大手ブランドが、リトルリーガーからプロスポーツ選手に及ぶ顧客へのサービス向上に取り組んでいます。SAPソフトウェアを活用して予測や在庫調整の精度を改善させ、月次決算にかかる時間を8週間から2週間に短縮した様子をぜひご覧ください。
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