ピレリ社の24時間タイヤ保守サービスを支える予見分析テクノロジー

作成者:瀬尾 直仁投稿日:2014年1月27日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SAPジャパンの瀬尾です。前回の記事では、予見分析のテクノロジーを活用して「機器の保守サービス=コストセンター」の概念を覆し、ビジネスの利益を生み出すプロフィットセンターに転換させた成功事例をご紹介しました。今回は、国際的なタイヤメーカーであるピレリ社が提供しているタイヤ保守サービスにおいて、SAPの予見分析テクノロジーがどのように顧客ニーズにリアルタイムで応えるサービスを支えているか解説したいと思います。

タイヤに埋め込まれたセンサーによる長距離輸送の安全確保

Semi Truck1872年に創業され、現在は世界第5位の売上と高い技術を誇るピレリ社は、全世界に19の工場を持ち、160カ国以上で事業を展開。モータースポーツや乗用車向けタイヤだけでなく、トラックやバス、農機・建機用といった工業用タイヤの分野でも大きなシェアを占めています。

工業用タイヤには、一般の乗用車とは異なる苛酷な条件下での高度な安全管理や、トラブルによる業務の停止を未然に防ぐといった要件が求められてきます。長時間にわたって大量の貨物を長距離輸送するトラックのタイヤの空気圧に、気づかないうちに異常が発生していたとしたらどうでしょう。そのまま高速道路を走ったり、急なカーブに差しかかったりすれば、事故によって何より大切な生命が危険にさらされるだけでなく、貨物運搬の遅延やそれに伴う金銭的損失、さらに顧客や社会からの信用失墜は免れません。

そうしたプロフェッショナルの輸送・運行業務を重大なトラブルから守るために、ピレリ社がSAPのソリューションを活用して提供しているのが「Cyber Fleet(サイバーフリート)」です。これはタイヤの内部に空気圧や温度を検知するセンサーを取り付け、長距離輸送トラックなどすべての業務用車両のタイヤの状態を、24時間体制でトータルに監視・管理するフリートマネジメントサービスです。

フリートマネジメントとは
企業が使う業務用車両(大型のトレーラートラックから清掃車や工事用の特殊車両、フォークリフトまで)を、実際のユーザー企業に代わって維持管理するビジネスだ。
参照)走るトラックの「すべて」を24時間見える化、ビッグデータで運輸コストを抑制するARI

 「安全管理が利益の拡大につながる」という新たなマインド

Cars on freeway初めにピレリ社が取り組んだタイヤ監視サービスは、タイヤ内に取り付けられたセンサーに搭載されたデータベースに走行中のタイヤの状態が記録され、トラックが車両センターに戻ってくると、係員がハンドヘルドターミナルでこのデータを読み取る「スタティック サービス」と呼ばれるものでした。この車両センターに戻ってきた際に収集されるデータを解析して、タイヤの異常やそれが発生するパターンをあらかじめ知ることができるのです。

これをさらに進化させて、走行中は24時間いつでもリアルタイムでデータを収集できる「ダイナミックサービス」を実現したのがCyber Fleetです。これは走行中のタイヤ内部のセンサーが収集したデータを、車両に搭載されたテレマティクス機器から、最寄りの通信施設経由で中央の管制センターに常時送信する仕組みです。今どこを走っていて、タイヤの状態はどうか、といった情報をすべてリアルタイムでチェックできるようになっています。

この保守サービスは、、企業にとってはサービスに付加価値をつけるためのコストセンターとみなされがちです。しかしCyber Fleetは、24時間リアルタイムのタイヤ監視を実現することで、輸送の安全確保という積極的な顧客サービスを可能にしています。こうして、ドライバーの生命を守ると同時に、サプライチェーンを止めないという2つの重要課題を両立させ、「安全管理が企業の利益を拡大する」という顧客の新しいマインドを引き出すことに成功した点が画期的だといえます。

Picture1

図:タイヤの異常を監視するCyber Fleetの全体構成

「安全管理が企業の利益を拡大する」という認識を顧客から引き出す

次にCyber Fleetをテクノロジーの側面から見ていきましょう。まず、どれくらいのデータが発生しているのかという、予見分析テクノロジーの規模感です。Cyber Fleetの商用利用が初めて開始されたのは2012年のブラジルで、当初は600台の車両でスタートしました。この車両には1台当たり6個のタイヤがついており、このタイヤ一つひとつのデータを2分間隔でテレマティクス機器を通じて送信しています。また車両は、運転手が交代しながら1日あたり16時間走行しており、週6日稼動します。これをデータ量でざっと積算すると、年間およそ400億イベントのデータが発生していることになります。もちろん、その400億イベントをすべて解析しながら、異常値を人手で検出するのは不可能です。そこで自動検知する仕組みを構築するために、SAPの予見分析テクノロジーに着目したのです。

Picture2

図:Cyber Fleetでは、導入から最初の1年間で約400億イベントが発生していた

現在は、Cyber Fleet対応のタイヤから送られてきたデータはSAP HANAに格納され、リアルタイムで自動解析されます。ここでは従来のように温度や空気圧をもとに異常値を検出する仕組みはもちろん、たとえば「この地域は道路状況が良くないのでパンクが起こりやすい」といった、地域性の道路事情に即した解析なども同時に行われています。

この結果、パンクの多い地域があれば、現在1カ月おきにスタティックサービスでチェックしているのを、もっと短いスパンで点検した方が良いといったノウハウやナレッジも引き出されてくるようになります。また将来的にはスタティックサービスも、現在人手で行っているデータ収集を車庫の通路にセンサーを設置して自動化を図るなど、さらに省力化、効率化することも十分に考えられます。

SAPのアプリ基盤がビッグデータの収集・解析・活用をトータルに実現

Cyber Fleetの基盤となっているのはSAPの予見分析テクノロジーですが、その最大の特長は大きく以下の3つです。

  1. あらゆるデータソースから、データをリアルタイムかつ高精度に収集可能
  2. 収集したデータを多彩な手法&あらゆる視点で分析できる高度なテクノロジー
  3. 結果に基づく行動指示や予知、気づきを多様なデバイス経由でアクセス、通知が可能

簡単に言えば、機器や環境を選ぶことなく、24時間体制で多様なデータ採取が可能であり、その予見分析から次の対応へのアクションを一気通貫で実現するためのソリューションが、SAPの最大の特長でありアドバンテージだといえます。

Picture4

図:最新のSAPの予見分析テクノロジー基盤

もう1つ、SAPの予見分析テクノロジーを支えているのが、ビッグデータ活用のためのSAP Real-time data platformです。SAP HANAを中心とした超大規模でのリアルタイムなデータ処理環境と、それらの解析結果を統合アプリケーションプラットフォームSAP NetWeaverを介してさまざまな基幹システムで活用できる、包括的なデータ分析・管理プラットフォームはSAPだけのものです。

Picture6

図:ビッグデータ活用のデータ管理機能を提供するSAP Real-time data platform / 【SAP MDG】SAP Master Data Governance / 【MDM】 : SAP Enterprise Master Data Management / 【DQ】 : SAP Data Quality Management

ピレリ社では今後、Cyber Fleetに利用されている予測分析テクノロジーであるSAP Predictive Analysisの活用領域を、現在のトラブル予測・対応以外にも拡大していきたいと考えています。たとえば、タイヤ交換時期を予測するアドバイザリーサービスや、おすすめのサービスステーション情報など、ドライバーの利便性を向上する情報提供。さらには製品品質や製品パフォーマンスと道路状況や気候、地域性などさまざまな要素との相関分析を進めるといった、新たな知見の獲得と製品品質の向上、マーケティング活動への活用を図っていきたいと考えています。

【参考情報】
CYBER FLEET

ご質問はチャットWebからも受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

●お問い合わせ先
チャットで質問する
Web問い合わせフォーム
電話: 0120-554-881(受付時間:平日 9:00~18:00)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

連記事

SAPからのご案内

SAPジャパンブログ通信

ブログ記事の最新情報をメール配信しています。

以下のフォームより情報を入力し登録すると、メール配信が開始されます。

登録はこちら