圧倒的スピードは間接部門の業務に変革をもたらすのか?SAP HANAが実証した5つの成果 – 会計業務編(前編)


読者の皆様、こんにちは。SAPジャパンの中野です。SAP HANAが日本市場に登場してから、約3年が経ちました。私は日本全国のお客様に対してSAP HANAを活用したソリューションをご提案させていただいてきましたが、特にSAP ERPのあらゆる経営情報を1つのインメモリープラットフォームで動作するSAP Business Suite powered by SAP HANA(以下、SAP Business Suite on HANA)については、「それによって業務をどう変えるか」という部分よりも「SAP ERPトランザクションレポートの処理レスポンスが改善する」「夜間バッチ処理が短縮する」といった点に論点が集約されてしまうことがありました。

これらはいずれも、ITの側面におけるSAP HANAの確かな効果であり、決して間違いではありません。しかし、SAP Business Suite on HANAは、こうしたIT上の制約がなくなることによって、今まで実現できなかったビジネス面でのメリットをもたらすためにリリースしたソリューションです。これを実証する1つのモデルケースとなるのが、2013年9月にカットオーバーを迎えたSAPにおける自社利用のプロジェクトです。このプロジェクトは、SAP社内で使用しているSAP ERPのデータベースをSAP HANAに移行し、SAP Business Suite on HANAとしてクラウド環境(SAP HANA Enterprise Cloud)で運用を開始しました。

このブログでは、SAPの社内IT部門に所属し、今回のプロジェクトを牽引した主要メンバーに対して行ったインタビューをもとに、実際にSAPの業務がどう変わったのか?に焦点をあてて、プロジェクトの成果をご紹介させていただきたいと思います。このブログをご覧の皆様が、自社の間接業務で同じような課題はないか、SAP Business Suite on HANAによって同じように変革を起こせないか、ご検討いただく際の一助になれば幸いです。

SAPで実施した社内プロジェクトの性質上、会計業務が中心となっていますが、プロジェクトの成果は私の予想を大きく上回るものでした。SAPにとってインパクトが大きかった具体的な業務変革について、いくつかご紹介したいと思います。同じような課題は販売・生産・ロジスティクスなどほかの業務領域にもあり、SAP Business Suite on HANAを適用することで同じような業務効果を見込めると私は考えています。

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具体的な内容に入る前に、今回のプロジェクトの概要をご紹介しましょう。

背景と目的:
ここ数年、Sybase社、SuccessFactors社、Ariba社などグローバルに拠点展開する企業グループを相次ぎ買収・統合したことにより、SAPの会計業務や決算処理は複雑化・肥大化。これらに費やす時間の増大や長期化が発生し、業務品質も低下してきた。

本プロジェクトでは、既存DBをSAP Business Suite on HANAに移行し、SAP HANAの超高速処理という特徴を活かし、業務プロセスの見直しを行うことで、決算処理をはじめとする会計業務の再構築と期間短縮、プロセスの透明化、業務品質・精度の向上を目標とした。

実施期間:
20135から9の約5カ月間で実施。SAPの第三四半期決算にあたる9月末決算処理で本稼動を開始した。

適用範囲:
SAPには基幹システムとしてSAP ERP、SAP CRM、SAP NetWeaver Business Warehouseがあり、さらに大小さまざまな約30の周辺システムがある。今回のプロジェクトでは、メインシステムであるERPをSAP HANA上で稼動させることにした。(SAP NetWeaver BWは2012年末、SAP CRMは2013年2月に本稼働済)

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  1. 173超の現地法人から約65,000人のユーザーがアクセスしているERPシステム(グローバル ワンインスタンス構成で実現)
  2. 利用モジュールは、販売管理(SD)、購買管理(MM)、プロジェクト・システム管理(PS)、財務会計(FI)、管理会計(CO)など
  3. 24時間/365日稼動が前提の6TBのDBを要するSAPにとってのミッションクリティカルシステム

導入効果:
以下のQ/Aセクションで詳細を記載

ヒアリングの対象となったSAPドイツ本社のメンバーは、ヨアヒム・メッテ(Joachim Mette)、カルメン・スーズィッヒ(Carmen Sucic)、ウベ・グリゴライト(Uwe Grigoleit)の3名です。製品を売る側ではなく、社内で使用するための支援やサポートを行っている立場のメンバーであることから、お客様企業のIT部門といった位置付けになります。このため、ユーザー視点に立った生のコメントが多く得られたと思います。

※個々のメンバーのプロフィールについては、本ブログの最後に記載します。

Q1:経理部門など業務ユーザーにSAP Business Suite on HANAがもたらした変化とは?

A1つ目は、やはり、処理パフォーマンス、レスポンスが挙げられるだろう。SAP HANAを適用する以前、特に大量のデータを扱うような重たいレポートなどは15~20分待たされるということもあった。現在はこうした課題は解消され、キーを押すと即座に結果が返ってくるようになった。たとえば、減価償却計算処理だ。SAPはIT企業として、データセンターなどに大小さまざまな償却対象資産を有している。その償却計算処理プロセスの中の資産増減レポートなどの表示に20分以上かかっていたものが、今ではレポート実行ボタンを押した瞬間に表示される。こうしたパフォーマンス改善が減価償却プロセスを全体で74%短縮したため、その分、時間に追われる決算業務において、担当者に余裕が生まれているのは間違いない。

ただ、1点だけ強調しておきたいのは、こうしたパフォーマンス向上による効率化は一定の評価はできるが、それ以上にビジネスプロセスの品質面において大きな改善が図られた点が大きいということだ。会社間取引のプロセスは、それを説明するのに良い例だ。SAPグループではグローバルで1つのERPを利用しており、連結決算の早期化と精度向上のため、グループ会社間の取引(債権債務)の照合を、連結決算に入る前にERP内のインボイスレベルのデータで日常業務として実施しているが、ここに大きな改善があった。

SAP HANAを適用する前は、30分ごとにスケジューリングされたバッチジョブで処理が行われていたため、あるグループ会社間の取引において不整合が発見されても、現地担当者に電話連絡を入れて伝票の修正を指示し、その指示が正しく実行されたかを確認するためには、少なくとも30分後のバッチ処理を待たなければならなかった。その間、担当者はほかの業務をしているわけだが、その修正指示をしたこと自体を忘れてしまうことがないように、法人ごとの備忘録や管理用のEXCELシートを作るなどして、業務品質を担保していた(実はこういったことの積み重ねが、決算期間中ずっと経理部門ユーザーに残業を強いる理由の1つになっていた)。

しかし、SAP Business Suite on HANAへの移行によって、リアルタイムで処理結果を確認できるようになった今では、現地担当者に電話で修正の指示を行い、受話器を片手にリフレッシュボタンを押すだけで、その場で修正結果が見られるようになり、業務の効率化・迅速化だけでなく、確認漏れの解消など、業務品質の向上にもつながっている。

Q2:CO-PA(管理会計-収益性分析)にも効果があったようだが、マネージメント層には変化があったのか?

ASAP HANAへのマイグレーションによるCO-PA(管理会計-収益性分析)での導入効果は著しかった。速度について言えば、約86%の高速化を実現できた。業務の待ち時間がなくなったことで、経営における意思決定が「リアルタイム」で可能になり、それによる業務品質や精度が向上したことは明らかなメリットだ。

具体的には、従来は月末にバッチ処理として実施していた業界セグメントごとの売上配賦(Revenue Split Master Code)処理が、月中にリアルタイムで実施できるようになったことだ。以前の月末処理の場合、当該データが大量になるため、CO-PAから1日に3回(8時間に1回)SAP NetWeaver BWに夜間バッチで転送した上で内容を確認していた。このため、修正・変更が発生すると、どんなに短くとも8時間、場合によっては夜間バッチ発生から24時間が経過した翌日出社時点まで待たなければ、修正・変更結果を確認できない状況だった。こういった業務作業の繰り返しが期間中に起きているため、「現在のビジネスの状況を表す数値」としてはユーザーに認識されず、ユーザーの求める精度の高い数値は翌月5日まで把握できないというのがビジネス現場の常識だった。

SAP HANAにマイグレーション後は、売上伝票が登録された瞬間、CO-PA内で即座に配賦更新が行われるため、リアルタイムで配賦後の精度の高い数値を見ることができるようになった。これにより、SAP各拠点にいる業種や製品ごとに配置された各事業統括本部長達は、自身が担当する事業ごとに適切に配賦された売上高をリアルタイムに確認できるようになった。このおかげで翌月5日まで待つことなく、当月20日〜24日に舵を切るための判断が可能となった。この10日〜15日の差は、競合他社よりも数多くの有効な施策を打つことができるということを意味し、間違いなく競争優位につながる。

まとめ:

今回は、2013年9月末に本稼動したSAP自社で利用するSAP ERPのSAP Business Suite on HANA適用プロジェクトの概要と、そのプロジェクトで得られた業務的効果をいくつかピックアップしてご紹介しました。主に会計領域の例をご紹介しましたが、明細データレベルでの配賦・照合・確認のプロセスのように、これまではシステムのパフォーマンスを理由に、夜間バッチにしたり、そもそもあきらめたりしているような業務プロセスが、経理業務に限らず企業の中にはまだまだあるのではないでしょうか? 上述の通り、SAP Business Suite on HANAへの移行によるシステムパフォーマンスの圧倒的な向上は、新しい業務プロセスをデザインする上での基礎となり、会社レベル・担当者レベルで大きなビジネスメリットをもたらすと私は考えています。

次回は、ドイツ本社のメンバーへのヒアリング内容の続きとして、SAP Business Suite on HANAの導入を期に、新たに導入された請求処理/売掛処理における導入効果や、モバイルデバイスを活用した新ビジネスプロセスについてご紹介したいと思います。ご期待ください。

ヒアリングメンバーのプロフィール

【話し手】
■    ヨアヒム・メッテ(Joachim Mette)
Joachim Mette
22年間にわたりSAP社内IT業務に従事。現在の所属部門は、社内IT部門の中のBusiness Innovation & Application Services Team。本チームは、SAPが開発した新しい技術(SAP HANAやモバイルテクノロジーなど)をSAP内部の業務で活かせるよう支援。

■    カルメン・スーズィッヒ(Carmen Sucic)
SAPに10年在籍。ヨアヒムと同チームに所属し、現在の役割はSAP内部のITコンサルティング。今回のSAP HANA化プロジェクトでは、SAP Business Suite on HANA導入に伴うチェンジマネージメントをリード。

■    ウベ・グリゴライト(Uwe Grigoleit)
Uwe Grigoleit

SAPには14年在籍。現在の所属部門は、Business Development/Go to Market Suite on Hana。

 

 

【聞き手】
■    宮原 里枝
miyahara

SAPに15年在籍し、主にエンジニアリング・建設業、プロフェッショナルサービス業などのお客様に、会計系プリセールスとして提案をリード。2014年からプロセス産業担当となる。

 

    吉田 祐馬
吉田 祐馬

SAPサービス事業本部に所属。SAPに16年在席し、販売管理コンサルタント、CRMコンサルタントを経て、現在は、コンサルティングサービスの事業開発を担当。

 

 

■    中野 浩志
untitledSAPプラットフォーム事業本部に所属。SAP16年在席し、財務会計/財務資金管理コンサルタントなどを経て現在はAnalyticsのCoEを担当。
(米国公認会計士、公認内部監査人、公認情報システム監査人、公認不正検査士)

 

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