圧倒的スピードは間接部門の業務に変革をもたらすのか?SAP HANAが実証した5つの成果 – 会計業務編(後編)


こんにちは、SAPジャパンの中野です。今回も前回に引き続き、ドイツのSAP本社内で実施されたSAP HANAマイグレーションプロジェクトについてご紹介したいと思います。前回も触れた通り、このプロジェクトの重要なポイントは、SAP HANAを導入することでトランザクションやレポーティング処理が高速化されただけでなく、業務プロセスそのものの変革が実現された点にあります(前編の記事)。このことはすなわち、「各関係部門における業務品質や精度の向上にも大きな成果がもたらされている」ことを意味しています。今回も、この点について少し詳しくご紹介させていただきたいと思います。

前編:圧倒的スピードは間接部門の業務に変革をもたらすのか?SAP HANAが実証した5つの成果 – 会計業務編(前編)

インタビュー対象者は前回同様、プロジェクトの中心的な役割を担ったヨアヒム・メッテ(Joachim Mette)、カルメン・スーズィッヒ(Carmen Sucic)、ウベ・グリゴライト(Uwe Grigoleit)の3名です。

Q3:Invoice Processing/Receivables Management(請求処理/売掛処理)における導入効果は?

A請求・売掛金管理では、業務の大幅な改善を実現することができた。従来のデータベースを使っていた以前のシステムでは、未払いが発生した場合、その関連するデータをメールベースや、国によっては紙ベースで印刷して、営業担当者に連絡し、その後お客様へ連絡するという流れになっていたため、未払い発生から回収までの期間、未払い理由、進捗ステータス、および新たな支払約束日は、営業や拠点経理にメールなどで問い合わせをしないとわからなかった。

新システムでは、SAP HANAが提供する高速処理インターフェースと直結したReceivable ManagerおよびFinancial Fact Sheetという、iPadまたはWindows 8で動作する標準モバイルアプリケーションを営業にリリースした。これによって、経理で未払と判断した取引についてはその場で営業のモバイルアプリケーションに確認のメッセージを送ったり、未払高が大きい取引についてはアラートを出して至急の対応を促すことができるようになった。営業はそのモバイルアプリケーションから、ERPにある現在のデータを確認して適切な対応を行い、ステータスや新支払約束日を入力すると、各拠点経理およびドイツ本社のグループCFOまで即座に確認ができるようになった。

以前の仕組みにおいては、陳腐化されてしまったPDFや紙データを使ってオペレーションが行われるので、数日前にすでに顧客が支払済になっている可能性も否めず、現場担当者は二重、三重の確認を都度、行わざるを得なかった。また、SAPの中でも日増しに重要性が高まる新興マーケットにおいては、先進国の常識が通用しない商習慣などの背景から、未払いへのタイムリーな対応が求められるケースが少なくない。そういった理由からも、DSO(売上債権回転日数)などのKPIを設けて、オペレーションを行っているSAPにとっては、営業担当者、拠点の経理担当者、そして本社のCFOまでがリアルタイムにステータスを確認しながら、適切な対応が取れるような仕組みは非常に大きな意味を持っている。

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Q4:CEOやCFOは、効果をどのように感じているのか?

ASAP共同CEOのビル・マクダーモットを含むボードメンバーにとって、商談パイプラインや売上高の状況は非常に重要となる。それぞれの商談パイプラインにどんな変化が生じているのか、それに伴って売上がどのように推移しているのかなどを正確に把握するためには、リアルタイムのレポーティングが不可欠となる。たとえば、現在の状況が2日後にならなければ分からないという状況では、期末に向けたアクションが後手になってしまい、万が一、四半期決算値が目標未達になってしまったら、米国やドイツの証券市場の株価が反応し、経営が不安定になるといったリスクもある。こうした点はほかの企業と同様、民間企業であるSAPも例外ではない。

そこでボードメンバーからの要請もあり、SAP HANAに直結したiPadアプリケーションにより、パイプラインの状況をリアルタイムで把握できるようにした。このアプリからはリアルタイムで各拠点や製品グループなどセグメントごとのサマリー情報はもちろんのこと、グローバル全拠点の全商談の商品明細やそのステータスまでドリルダウンして見ることが可能となった。現在、ボードメンバーは1日に数回、四半期決算が近づいてくると、場合によっては20分に1度という頻度で、iPadアプリケーションを使って確認を行っている。これにより、四半期のクロージングに向けた判断が下せるようになった。

また、グループCFOのワーナー・ブラントはもちろん、各地域統括CFOにとっても、SAP HANAによるリアルタイム性の促進はリスク管理という視点で重要になっている。世界各地で進行しているプロジェクトの収支や、発生しているリスクを本社や各地域から一括してリアルタイムで監視し、対策を打つことが可能になることも重要な要件の1つだった。

Q5:ビジネス上のインパクト以外に、財務・経理担当に与えた影響は?

A以前に比べて、システムを利用することが「楽しく」なったという声をよく耳にする。待ち時間がほとんどないことが、こうした評価につながっていると思われる。レスポンスの速さ以外にも、新システムで可能となった「入力値自動提案」機能などについて「使いやすい」との評価が上げられている。このようなシステム性能・機能の向上によって、システムの操作に時間を取られることなく、本来注力すべき高度な分析業務により多くの時間を割けるようになったことが、大きなメリットと話す担当者が多かった。

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Q6:新システムにおける今後の構想は?

A SAPでは現在、直近の構想としてSAP Business Suite on HANAの新機能である「Smart Financials」を追加適用し、2カ月後の2014年3月に本稼動させようとしている。Smart Financialsは、財務会計(FI)と管理会計(CO)を統合した機能である。従来のデータベースの場合、ハードディスクの読み書きがボトルネックになる傾向があるため、財務会計の明細データを集約・集計して、管理会計データを作るというアプリケーションの設計にならざるを得なかった。これはデータを二重持ちし、集計にコンピューティングパワーを使い、さらにリアルタイム性を犠牲にするという非常に「贅沢」な設計といえる。

インメモリーコンピューティングであるSAP HANAを前提とすることで、必要となるのは財務会計の明細データだけとなり、管理会計データ・処理はユーザーが使いたいときに、リアルタイムにメモリー上で即座に集計すれば済む。管理会計用の合計・集計データや配賦後データの二重持ちは不要となる。これによりシステムの柔軟性が増し、活用の幅もさらに広がると考えている。実際の適用結果については、4月以降に効果が出てきた際に具体的にお伝えしたい。

筆者注記:Smart Financialsは、SAP自身が使用した結果が反映されて出荷される。ユーザー企業は旧来の財務会計(FI) / 管理会計(CO)の機能を使い続けていただいても問題ないし、SAP HANA化のタイミングでスイッチを入れることで、本機能を活用することもできる。なお、本製品の出荷予定は遠い将来ではないと私は考えるが、現時点では未定となっている。また、ブログという情報提供媒体の都合上、ここで書かれた内容は変更されることがあることをご容赦いただき、正確な情報については引き続きSAPの公式情報を参照していただきたい。

2014年6月追記: Smart Financialsは、SAPPHIRE NOW 2014でSAP Simple Financeとして発表された。

まとめ:

前回と今回の2回にわたって、SAP本社におけるSAP HANAマイグレーションプロジェクトの概要と、主要メンバーからのヒアリング内容をご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか? 今回のヒアリングは、社内での打ち合わせに近い形で実施されたもので、外向けの「営業トーク」とは異なる次元での会話が交わされましたが、実際に上がってきたのはSAP HANAマイグレーションによる予想以上の成果でした。単なるアプリケーションのレスポンス改善にとどまらず、ビジネスプロセスそのものが変化し、業務品質の向上が図られたことは、今後のアプリケーションシステムのデータベースにSAP HANAを適用することの意義を、あらためて証明するものだったと私は考えています。

SAPは昨今、Sybase社、SuceessFactors社、Ariba社などグローバルに多数の拠点をもつグローバル企業の統合買収をし、会計業務や経営マネージメントプロセスが複雑化、長期化する背景があったため、まず決算処理を含む会計業務領域においてSAP Business Suite on HANAのメリットを最大限に活用しました。しかし、これらの成果はロジスティクスやその他の業務領域でも、同様に実現可能なものです。このブログ記事が読者の皆様それぞれの企業活動における、SAP Business Suite on HANAの活用イメージに少しでもつながったならば幸いです。

疑問点その他については、いつでもお気軽にSAPにお問い合わせください。今回ご紹介した自社事例はもとより、各国の最新事例や採用されたソリューションの情報を蓄積したSAP HANAコンサルタントが、皆様のご支援を行うことができる体制を整えております。

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ヒアリングメンバーのプロフィール

【話し手】
■    ヨアヒム・メッテ(Joachim Mette)
Joachim Mette22年間にわたりSAP社内IT業務に従事。現在の所属部門は、社内IT部門の中のBusiness Innovation & Application Services Team。本チームは、SAPが開発した新しい技術(SAP HANAやモバイルテクノロジーなど)をSAP内部の業務で活かせるよう支援。

■    カルメン・スーズィッヒ(Carmen Sucic)
SAPに10年在籍。ヨアヒムと同チームに所属し、現在の役割はSAP内部のITコンサルティング。今回のSAP HANA化プロジェクトでは、SAP Business Suite on HANA導入に伴うチェンジマネージメントをリード。

■    ウベ・グリゴライト(Uwe Grigoleit)
Uwe Grigoleit

SAPには14年在籍。現在の所属部門は、Business Development/Go to Market Suite on Hana。

 

 

【聞き手】
■    宮原 里枝
miyahara

SAPに15年在籍し、主にエンジニアリング・建設業、プロフェッショナルサービス業などのお客様に、会計系プリセールスとして提案をリード。2014年からプロセス産業担当となる。

 

    吉田 祐馬
吉田 祐馬

SAPサービス事業本部に所属。SAPに16年在席し、販売管理コンサルタント、CRMコンサルタントを経て、現在は、コンサルティングサービスの事業開発を担当。

 

 

■    中野 浩志
untitledSAPプラットフォーム事業本部に所属。SAP16年在席し、財務会計/財務資金管理コンサルタントなどを経て現在はAnalyticsのCoEを担当。
(米国公認会計士、公認内部監査人、公認情報システム監査人、公認不正検査士)

 

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