社内外を巻き込んだコラボレーションでイノベーティブな製品を送り出し続ける3M(スリーエム)


3M(スリーエム)といえば、”イノベーション”の代名詞的な存在だ。あまりに有名なポスト・イット®誕生秘話を始め、「15%カルチャー」や「新製品比率」など、”イノベーションを生み続ける企業文化”を物語る3Mの逸話には事欠かない。

■15%カルチャー

勤務時間の15%を自分の自由に使ってよい、という3M社員の不文律。同社のWebサイトにもこのようにある。

since about 1948, we’ve encouraged our employees to spend 15% of their working time on their own projects. To take our resources, to build up a unique team, and to follow their own insights in pursuit of problem-solving.

3Mは1948年以来、社員に勤務時間の15%を自分自身のプロジェクトに使うように奨励しています。ユニークなチームを作り、自社のリソースを使って、自身の直感に従って、問題解決を追究するのです。(翻訳筆者)

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3M社のWebサイト(上記15%ルールについて記載のあるページ)

■新製品比率

2008年、3Mでは、発売から5年以内の”新製品”が部門売上高に占める割合を25%以上に保つこと、を事業責任者の義務とした。つまりは次々と新製品を世に出していかない限り、その地位には留まれない、ということだ。ちなみに最近ではバーがさらに引き上げられ、2013年では新製品売上を35%以上に、となっているらしい。

名著「ビジョナリー・カンパニー」にも、以下のようにある。

 ヒューレット・パッカードのビル・ヒューレット(※HPの創業者)にインタビューしたとき、私たちは「特に尊敬し、手本にしている企業があるか?」と質問した。一瞬のためらいもなく答えが返ってきた。

3Mだ。これは断言できる。3Mが次にどう動くか、誰にも分からない。本当にすごいのは、3M自身、次にどう動くのかが、たぶんわかっていないことだ。しかし、次の動きを正確に予想することができなくても、同社が今後も成功を続けていくことは、確実だと言える」。

まさにそうだ。今回調査した18社のなかで、今後50年間、100年間、成功を続け、環境の変化に対応していく企業を一社だけ選べと言われれば、わたしたちは3Mを選ぶだろう。(p253)

「ビジョナリー・カンパニー」
ジェームズ・C・コリンズ/ジェリー・I・ポラス、日経BP出版センター

「ビジョナリー・カンパニー」が出版されたのは1994年だ。それからほぼ20年が過ぎているが、3Mの輝きは今も変わっていない。

たとえば、ブーズ&カンパニーが毎年行っているもっともイノベーティブな企業」調査によれば、2010年、11年、12年と三年連続で1位アップル、2位グーグル、3位が3Mである。上位2社については誰にも異論はないだろうが、それに次ぐ3位は相変わらず3Mなのである。

ちなみにグーグルにも「20%ルール」があるが、これは3Mの「15%カルチャー」にヒントを得て取り入れたものだとされている。

3Mは1976年からニューヨーク・ダウ30の構成銘柄でもある。アメリカを代表する大企業でありながら、イノベーションを継続的に(100年以上に渡って!)生み続ける企業文化とはどんなものか?これについては上記「ビジョナリー・カンパニー」にも詳しく書かれているが、そのエッセンスの一端を、Sapphire 2013において3Mラジ・ラオ氏ヴァイスプレジデント、eトランスフォーメーション担当)が語っている。

以下、同氏のプレゼンから抜粋してご紹介しよう。
http://events.sap.com/sapphirenow/en/session/4705

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私の今日の話は、3M社内の、またお客様など社外を含めての、ソーシャルなコラボレーションの価値について、です。

かつて、3Mの哲学として「煙突を探せ」という表現が使われていました。この意味は、「お客様との会話」と「社内での技術者との会話」が完全に同期していなければならない、ということです。

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1920年代、セールスエンジニアがやっていたことは、「煙突を探す」、つまり煙突のある場所すなわち工場に出かけていき、現場のお客様と話してニーズを探り、また試作品を持って行って試してもらい、それがお客様の問題の解決につながるかどうか、そしてどのようにすればさらに改善できるかを聞いてくる、というものでした。

そしてそれは現在まで変わりません。今もワールドワイドの全社員8.8万人の半数以上は社外に出てお客様と接しています。一方、われわれの研究所には8,200人の技術者がいます。この、研究所が作っている技術と、お客様・市場の声とをつなぐのが、コラボレーションなのです。これを組織的・継続的に行おうとすれば、ITの支援は欠かせません。

こうしたコラボレーション志向の企業文化は、たとえば新入社員にも繰り返し伝えられます。3Mが評価する製品は、お客様やマーケットでどう評価されているか、であって、社内でどう評価されているか、ではありません。3Mの発明品の価値を決めるのはわれわれではなく、お客様なのです。

みなさんもスコッチ®テープやポスト・イット®などはご存じでしょうが、現在3Mの製品の大部分は直接目には触れないものです。しかし、スマホに使われている半透過型パネルとか輝度上昇フィルムは、コンシューマが四六時中触っているものであり、だからこそお客様の声を聞くことがさらなるイノベーションにつながるのです。

いったん製品化された技術に対するフィードバックだけではありません。お客様から3Mへの”アップストリーム”な会話、つまりお客様が抱えておられる問題を3Mに相談されることも多くあります。これもイノベーションにつながります。

お客様との会話、お客様の課題、それを解決するヒント、を社内で共有し、それを解決できる製品を作り出すこと、それが3Mの使命です。そしてソーシャルなコラボレーションは、これを実現するのに最適なツールなのです。(以下省略)

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こうした企業文化をもつ3Mにとって、新しい時代に見合ったコラボレーションツールの導入は自然な流れであったと言えるだろう。このツールはSAP Cloud for Customer(旧名称SAP Sales onDemand)という。

このツールについて、同じく3Mのジョン・キーファー氏ディレクター、カスタマーフェイシング・トランスフォーメーション担当)が別の動画で語ってくれている。

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YouTube: 3M: Customer Testimonial Video | SAP Cloud for Customer (旧名称SAP Sales OnDemand)

3Mは非常に幅広い製品群を持ち、幅広いお客様にそれを提供しています。みなさんもポスト・イット®やスコッチ®テープはよくご存じでしょうが、実は3Mの製品のほとんどは、電子機器、医療機器、工業製品の部品となって、間接的に販売されているのです。

3Mは100年以上も続く歴史ある企業ですので、社内システムもゼロから自作したものも多いのですが、それらは十分に接続されていません。そこで3Mは、「SAP Cloud for Customer (旧名称SAP Sales onDemand)」を導入しました。

既存のオンプレミスのSAP ERPやCRMとも高度にインテグレーションでき、オンプレミスとクラウドのハイブリッドが可能であるという点が大きな魅力です

われわれの営業社員にこのシステムを「使うことを強制しなくてもよかった」というのは画期的なことです(笑)。現場からのフィードバックは非常にポジティブでした。これを使うことで、営業社員はより生産性の高い仕事ができる、という点に大きな価値を見出しています。

セールス・オンデマンドの大きな特長のひとつは、社員間のコラボレーションを自然に促進する仕組みが組み込まれていることです。営業と、技術者と、カスタマーサービス担当者とがこのシステム上でコラボレーションすることで、お客様の課題をより早く効果的に解決することができます。

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短いビデオなのであまり多くのことが語られているわけではないが、「お客様の課題に直接触れている営業と、社内にいる技術者とのコラボレーションの促進」が次のビジネスを生む、という視点では共通していることは見ていただけるだろう。

ちなみにこの「コラボレーションツール」とは、SAP Jam という製品で、これが SAP Cloud for Customer に一モジュールとして組み込まれている。

ものすごーくざっくりとした表現をするならば、SAP Jamはビジネス版Facebookみたいなもの、だ。個人ごとに「タイムライン」があって、自分に関連のある投稿が時系列で表示されていく。

ただし個人としての投稿ではなく、「Facebookグループ」にあたる機能がむしろメインとなっており、大半の投稿はいずれかのグループに対して投稿され、するとそのグループに所属している他の社員のタイムラインにそれが表示される。

ビジネス上のあらゆるトピック(「お客様A社アカウントチーム」とか「新製品B開発・マーケティングチーム」「石油化学業界の情報共有」「半蔵門近辺のおすすめランチ」…)に対してグループを立てることができ、そこへ投稿した情報はグループメンバー全員と共有でき、グループおよび会社の共有資産として残り、キーワード検索もできる。メールでのやりとりと違い、グループに参加している限り確実に情報が共有されるし、後からそのグループに参加した場合でも過去情報を共有することができ、逆にグループメンバー以外には情報が出ていく心配もない。

最大のポイントは、やりとりの経緯が追えるということである。いつ誰がどの情報に基づいてどんな意思決定をしたのか?の経緯が明確になることで、たとえば営業担当者が異動して引き継ぎが起きた場合でも、前任者の時代にどういう経緯でこの話になったのが?がわかる。

メールはこのあたりがすべて個々人のメールボックスに閉じてしまうため、コラボレーションには本来不向きなツールなのである。(一方でシークレットな1対1のコミュニケーションにはメールが向いている。)

さらにSAP Jamの場合、社員以外の外部のヒト、お客様やパートナー企業なども、メンバーに加えることができる。もちろんアクセス権管理には気を使う必要があるが、テーマによってはお客様やパートナーをグループメンバーに加えることでさらなるコラボレーションが促進される。

下記のイメージ動画を参照されたい。(日本語字幕つき、1分23秒)

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YouTube: SAP Jamを活用したコラボレーション-SAP Cloud for Customer

案件・売上管理、顧客情報管理、などSAPが伝統的に強い基幹情報システムと連動してモバイル端末からアクセスできる機能に、こうしたコラボレーション機能を組み合わせることで、営業生産性を大幅に改善するのが、SAP Cloud for CustomerとSAP Jamなのである。さらに詳しい情報は下記を参照されたい。

■SAP Cloud for Customerブローシャ(PDFダウンロード)(日本語、6ページ)

http://download.sap.com/japan/download.epd?context=E44B1ECEDEC2977D78B8066FD60EB572BC84BDAC05C461668325E5F50B8FC2C625C0CD060E450A62C4F3A601E4EF5A96E200A3DEAB9932BF

SAP Jamという新たなコラボレーション基盤の上に、どのような花が開くのか?3Mの挑戦に注目したい。

※本稿は公開情報に基づいて筆者が構成したものであり、3Mのレビューを受けたものではありません。

【参考リンクその①】3Mについて

■計画のない進歩~米3Mを成功に導いた「仕組み」
http://bizacademy.nikkei.co.jp/management/career/article.aspx?id=MMACz9000015062012&page=2

(閲覧には日経Bizアカデミーに会員登録(無料)が必要)

■第1回 商品開発「革新し続ける仕組み」--住友スリーエム:データの蓄積が下支え
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20071022/285088/

「今後50年間、100年間、成功を続け、環境の変化に対応していく企業を1社だけ選べといわれれば、わたしたちは3Mを選ぶだろう」。ジェームズ・C.コリンズとジェリー・I.ポラスが、著書『ビジョナリーカンパニー』のなかでこうたたえるなど、米スリーエムの経営手法を賞賛する書籍は数多い。

■偉大なイノベーションも基本から始まる~ATカーニーの「イノベーション調査2012」
http://www.atkearney.co.jp/pdf/Great_Innovation_Starts_with_the_Fundamentals.pdf

たとえば 3M は、イノベーション追求の第一歩として、顧客のニーズとそのニーズに
応えるテクノロジーを結びつけている。3M の成功の多くは、顧客と直接つながりを持ち、ときには顧客自身が自覚する前に顧客のニーズを見いだす研究者によって生み出されている。

■3Mジャパングループ 会社案内
http://www.mmm.co.jp/corporate/pdf/corporateprofile.pdf

ほんとに、何の会社だか分からないくらい、製品群が多い…(笑)

■イノベーションの系譜~3Mジャパングループの50年
http://www.mmm.co.jp/corporate/pdf/innovation50th.pdf

こういう冊子が出来ていること自体が3Mらしさ。
【参考リンクその②】

■ラジ・ラオ氏の講演(Sapphire 2013、約21分36秒、英語)
http://events.sap.com/sapphirenow/en/session/4705

■ラジ・ラオ氏の講演資料(PDFダウンロード)
http://www.sapevents.edgesuite.net/SapphireNow/sapphirenow_orlando2013/pdfs/31603.pdf

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