タイムリーな情報収集とインダストリアルインターネットが実現する世界


2014年3月5日、日経ものづくり・日経テクノロジーオンライン・日経BPイノベーションICT研究所の主催により、「Factory 2014」と題したフォーラムが開催されました。本連載では3回にわたり、当日の内容をダイジェストでお伝えします。第1回は、GE Intelligent Platforms のバーナード・クビゾー博士による基調講演を、日本GE社の許可を得てお伝えします。

講演者:バーナード・クビゾー博士(Dr. Bernard E. Cubizolles , GE Intelligent Platforms グローバルビジネスデベロップメントマネージャー)

IoTの関連市場は8.9兆米ドルに

IMG_2543GEは、約130年前の創設以来、さまざまなハードウェア(産業機器)に多額の投資を行ってきましたが、近年は工場においてハードウェアのみならず、ソフトウェアソリューションを提供し、顧客の課題解決に貢献してきています。

講演者であるクビゾー博士の属するGE Intelligent Platformsは、さまざまな業種の工場や大規模プラント向けに、Human Machine Interface(HMI)やSupervisory Control And Data Acquisition(SCADA)を提供しています。これはリアルタイムでの監視や警報、制御機能などを備えたものです。開発された25年前から大きな変化はありませんが、顧客にとっては、これらなしではビジネスにならないという位置付けになっているとのことです。

クビゾー博士はこう述べました。「あらゆるモノにインターネットがつながる時代においては、産業においても、これまでよりも格段に進化したソリューションが可能になります。IDC社の2013年の発表によれば、グローバルでインターネットにモノがつながること(Internet of Things: IoT)により、2020年の関連市場は8.9兆米ドルになり、つながっているモノの数は2120億個になります。モノにつながるだけで、巨大な市場ポテンシャルがあります。そして、それを実現する技術は既に存在しています」

ビッグデータ、技術進化が工場に巨大な変革と効率をもたらす

あらゆるモノが「つながっている」ことは、産業の現場に巨大な変革をもたらします。産業の現場において、これまでもビッグデータ(大量のデータ)は存在しました。それを収集するだけでなく、新たなテクノロジーを使って、そのデータにどのような意味があるのか、それをどう含めて分析するのかまで合わせて考えなければなりません。クビゾー博士は「現在はそのようなインダストリアルインターネットへの大きな転換期にあります。その実践の場の一つが、工場です」と述べています。

では、このインダストリアルインターネットを形づくる要素は何なのでしょうか。クビゾー博士によると、以下の4つとなります。

1. インターネットにモノがつながる(Internet of Things: IoT):
あらゆるモノがつながり、その状況を把握できる。

2. インテリジェントマシン(知能化された機器):
組み込みソフトを備え、モノの状況に関わるデータに基づき自動的に制御したり、状況を知らせる機器が増加。

3. ビッグデータ:
状況を把握するベースとなるデータの種類、頻度、規模が格段に増加。

4. 分析技術:
収集したデータを分析し、状況の解析や予測など、パフォーマンスを向上させるのに必要な洞察が得られるようになる。つまり、最終的には集めたデータから結果を導き出すこと。しかもそれを必要な人々と共有できるようにする。

GEはこのインダストリアルインターネットに、向こう3年間で10億ドル以上の投資を行うそうです。ではこの成果はどのようになるとクビゾー博士は見ているのでしょうか。

「インダストリアルインターネットにより、グローバルで主要な産業における燃料や効率がわずか1%改善した場合の経費削減額の試算があります。石油・ガスで900億米ドル、電力で660億米ドル、ヘルスケアで630億米ドル、航空で300億米ドル、鉄道で270億米ドルです。特に最も影響の大きい石油・ガスでは、7%もの削減効果が生じうるとの見方もあり、インダストリアルインターネットの生み出す効用は計り知れない大きさになります」

約40%の熟練労働者が退職、熟練スキルをRtOIに蓄える必要

では、インダストリアルインターネットはどのように具体化されるのでしょうか。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA「GE Intelligent Platformsは、リアルタイムオペレーショナルインテリジェンス(RtOIというコンセプトのもと、工場向けのソリューションを提供しています。得られたデータをリアルタイムで分析し、リアルタイムで必要な人に届けるものです。RtOI によって機器・データ・知見と人々が有機的に結び付き、工場のオペレーションを可視化させ、その運営効率の改善が可能となります。以前はこのようなシステムは大企業のみに可能でしたが、クラウド技術、モバイル技術のおかげで中小企業にも恩恵が行き届くことになりました。

今後北米においては4~5年内には、約40%もの熟練者が退職するので、熟練スキルをRtOIに蓄えることは重要な課題です。500億台もの機器が新たにインターネットに接続するようになります。このようなことからCIOの仕事は、あらゆる機器から得られるデータをビジネスにつながる洞察として意思決定者に提供することがますます重要となるでしょう。なお、その際にタブレットの活用はとても重要です」とクビゾー博士は述べました。

では、そうしたことが簡単にできるのでしょうか。「幸いなことにこれからの主役となる若い人たちはデジタル時代の担い手(デジタルネイティブ)なので、問題はありません。むしろ製造現場におけるタブレット端末の受容度が課題です。十分洗練されているか。セキュリティ対策は十分か。こうした課題を克服し、あらゆるところからデータを収集し、いつでもどこでも役立つ情報にして届けることを実現するのが新しいパラダイムです」というのが、クビゾー博士の見立てです。

膨大なデータ解析の結果に、モバイルデバイスで現場からアクセスできる

さらに、クビゾー博士は具体的な例を挙げます。パリ近郊に、5kmもの長さのトンネルがあり、そのトンネルのデータとして、50万件もの膨大なデータを管理しているそうです。「この50万件のデータから得たい情報は、安全か安全でないかということですがあまりにも現状は複雑です。しかもこのような状況把握がコントロールルームの中だけで可能、というのではなく、このデータから解析された結果を、例えばメンテナンス作業者がモバイルデバイスでみて判断して作業できるというものでなければ意味がありません。より手軽で簡単な方向に、ソリューションは向かっていきます。これを実現するのに、Nexus of Forces(力の結束)がドライバーになります」

力の結束とは、米ガートナー社によって提唱された概念で、(1)クラウド、(2)モバイル、(3)ソーシャルコラボレーション、(4)インフォメーションという4つの力が結束したものがテクノロジープラットフォームに必要、というものです。

行動につながるような情報提供を行い、即座に行動に移していくために、モバイルの活用は必須です。タブレット端末の画面上には、多くの情報の中から精査された必要な情報だけを盛り込む必要があります。ただその際に、PCの画面では出せないモバイルならではの直感的なインターフェースになるよう工夫をしなければなりません。

ビッグデータをよりスマートに使う

以上を踏まえて、インダストリアルインターネット実現のベストプラクティスを整理すると、次の各ステップをまわしていくことになります。

(1)データ集積、(2)コンテキストおよび関連付け、(3)ノイズ削減、(4)必要な人に必要な情報を、(5)コラボレーション、(6)いつでもどこでも。

データ集積とは、インダストリアルインターネットの前提条件であり基盤であり、それは生データだけでなく、解析されたデータ、画像化された情報などあらゆる形式のデータを意味し、ビジネスに与える影響や意味などを考え、いつでもどこでも必要な人がアクセスできるような形にしておく必要があります。

そして、そのデータを構造化し、物理的な組織やKPIや行動に関連づくようなコンテキストで管理しておくことが重要です。

ノイズ削減、ということに関連して、アメリカでのある調査によれば、実際に発生してくるアラームなどの75%はノイズとのこと。これはわらの中で1本の針を探すようなもので、これを分析ソフトなどを用いて改善し、使えるかつ有用な情報にする必要があります。このような、インテリジェント・アラーミングの実現により、事前予知や予防の精度が上がります。

また、その情報は、現場にいる作業員など必要な人にリアルタイムで届かなければなりません。中間に監視センターなどが入って、人づてに情報を伝達するということは可能な限り避けて、必要な人に直接アクションを促すことがビジネスの速度を上げるために欠かせません。そして、その情報は、作業員に行動の指示をするものでなければなりません。

「どんなデバイスからでもどこからでもオペレーションができることが必須です。しかも、ユーザーが情報を探すのではなく、反対に情報がしかるべきユーザーを探す。ビッグデータが扱われることは大前提ですが、それをスマートに利用できる、つまり、ユーザーが使う時には、必要なだけのコンパクトな使いやすい情報になっていることも重要なポイントです」

このようにクビゾー博士は強調して、話を締めくくりました。

次回は、第2回として、シーメンス社インダストリーセクター バイス・プレジデントのディーター・ウェゲナー氏による、「Industrie 4.0 - 次世代ものづくり環境のための確かな道すじ」と題した講演内容をご説明します。