こんにちは、SAPブログ編集部です。グローバル競争が激しさを増す中、これからの生き残りを目指す日本の製造業界にとって、「“業務プロセスの標準化”をいかに進めるか?」は大きな関心事の1つです。しかし、顧客ごとの細かなニーズに合わせた多種多様な生産プロセスによって、優れた品質を実現してきた日本の製造業界においては、全社規模でのプロセスの標準化は難しいと諦めている企業も少なくありません。どのようにすれば、このジレンマを解消する「標準化の道」は開けるのでしょうか?
去る2月19日(水)に開催された「事例に学ぶ、スピード経営を実現する“業務プロセス標準化”事例セミナー~将来を見据えた経営情報基盤のあり方~」で講演をされた芝浦メカトロニクス株式会社は、SAP ERPのビッグバン導入によって全社およびグループ内におけるプロセスの標準化に成功した企業の1社です。同社の事例には、日本の製造業界が抱える課題解決につながるいくつものヒントが示されています。
SAP ERPのビッグバン導入で混在する業務フローを標準化
設立から75年の歴史を持つ芝浦メカトロニクスは、フラットパネルディスプレイ、半導体、メディアデバイス、真空応用装置、レーザー応用装置、その他各種応用装置の開発・製造・販売、そしてサービスまでのトータルソリューションを提供する老舗企業です。国内5社、海外4社を展開する世界でもトップクラスの精密機械メーカーとして知られる同社では、2010年5月から2011年5月の約1年をかけて、SAP ERPのビッグバン導入を成功させました。
同社の生産業務の特長は、さまざまな生産方式が混在している点にあります。主なものだけでも「個別受注生産」「受注生産」「受注組み立て生産」の3つの生産形態があり、個々の業務プロセスも微妙に異なります。顧客のニーズに対応したこうした特長を生かしつつ、業務プロセスの標準化によっていかに全体の効率化を図るかは、同社が長年取り組んできた課題の1つでした。
ERPパッケージを活用した新システム構築を決断
芝浦メカトロニクスにおいて業務プロセス標準化のプロジェクトが立ち上がったのは、2008年10月のことです。景気の不透明感やグローバル化の加速、液晶パネル、半導体業界の再編といった外的要因への対応と同時に、社内のコスト改革、生産効率の向上という2つの要請を受けて、「事業の将来を見据えた業務プロセスの再構築と、それを機能させる情報システムの具現化」をミッションとしたプロジェクトチームが動き出しました。
プロジェクトマネージャーを務めた技術本部 情報システムグループの望月斉圭氏は、「新システムの構築に際しては、①可能な限り業務の機能を絞り込んだ上で、簡素化された新たなプロセスに沿ってシステムを構築すること、②既存のシステムとの連携が可能な構成とすること、③グループ内での将来的なシステム統合を視野に設計を行うこと、の3つを基本ポリシーとしました」と語ります。さらに、この方針を実現できる具体的な方法を検討した結果、最終的に導き出されたのが「パッケージを活用したビッグバン導入によるプロセス変革」という結論でした。
選定会における総合評価で、SAP ERPの採用を決定
今回のプロジェクトでは、それまで運用してきた基幹情報システムの大部分を刷新することが決まっていました。そのため、もっとも重要な「生産管理」から「販売」「輸出管理」「経理」「人事給与」の各システムを網羅するために、評価の対象となるパッケージ製品は、製造業界で多くの採用実績を持つERP製品に絞られました。
最終候補となったのはSAP ERPを含む3社の製品で、役員、部門長、関係会社社長などで構成される評価委員会は、業務運営に必要な機能性や変革への貢献度、さらに操作性や価格など、さまざまな側面から評価を実施。結果は、評価項目ごとに各製品の特長が表れる結果となりましたが、プロジェクトを推進するワーキンググループの総合評価を加味した結果、最終的に選ばれたのがSAP ERPでした。
ベンダーとの協働によるプロジェクトチームの編成
導入にあたっては、芝浦メカトロニクスと導入を支援したコベルコシステムの協働によるプロジェクトチームが編成されました。このチームに付随して、経営戦略会議メンバーを含む月1回の「システム検討会」、プロジェクトリーダーやチームリーダーの毎週の「進捗状況報告」、そして各ワーキンググループのメンバーによるミーティングが週2~3回の頻度で開催され、常にプロジェクトの状況を各レイヤーのメンバーが共有できる体制が作られました。この点について、望月氏は「ここでは当社の経営層から現場のスタッフ、さらにコベルコシステムのメンバーも加わるため、チーム内のコミュニケーションと一体感の醸成に大きな力を注ぎました」と話します。
標準機能に合わせた新たなプロセス構築で、効率的な導入を実現
芝浦メカトロニクスにおけるSAP ERPのビッグバン導入を成功に導いた主な要因として、望月氏は以下の3つを挙げます。
① SAP ERPに体を合わせる工夫
② アドオンは最小限にする
③ 経験豊富なベンダーおよびコンサルタントの参画
SAP ERPに体を合わせるとは、例外的なプロセスを排除しながら、できるだけパッケージの標準機能に業務を合わせていくことを意味します。従来のように現場の意見を優先にすると、究極的には手組みのシステムとなり、導入コストが膨らむだけでなく、将来のバージョンアップの際にも膨大な時間とコストがかかってしまいます。アドオンを最小限にするというのも同様の考えからです。
さらに望月氏は、SAP導入の豊富な経験を持つベンダーとの信頼関係の重要性を強調します。「SAPは多機能なだけに、運用の経験とノウハウを持ったエンジニアをいかにアサインするかが、投資効果を高めるためのポイントです。その点、コベルコシステムはまさに適任だったと感じています」
予想以上のコスト削減効果と、変革を加速する基盤の確立
全社一丸となった取り組みが実を結び、2011年5月にはSAP ERPによる新しい基幹システムが無事稼動を開始しました。導入効果としては、ITコスト削減以外にも目標とする定量効果を着実に達成しつつあるといいます。
「こうした定量効果はもちろん高く評価できますが、何よりも大きいのは、今回のSAP ERP導入によってシステム標準化の基盤が完成できたという点です。今後はさらなるパフォーマンスの向上や、各業務改善への対応を継続するともに、関係会社への展開なども進めていきたいと考えています」と語る望月氏。新たなシステム基盤を得て、芝浦メカトロニクスにおける業務改革のスピードは、今後ますます高まるはずです。
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