製造業の「モノ」から「コト」への事業変革。サービス事業の強化の流れ:その① なぜ注目されているのか


SAPジャパンの桃木です。このブログでは数回に分けて、製造業の「モノ」から「コト」への事業変革について書いていきたいと思います。

ここ数年、製造業の多くがサービス事業の強化を経営戦略に掲げています。

そのサービス事業の強化を実現するには、実は、調達・生産・物流部門やマーケティング部門・販売部門・サービス部門、経理部門、事業企画部門など、非常に幅広い部門の変革が必要です。(サービス事業の強化は、サービス部門や販売部門のみによる取り組みだと思われている傾向がありますが、成功している企業は全社的な取組みとして進めています)

みなさんの身近でも、以下のようなことを体験している方もいるのではないでしょうか。

  • パソコンを買う際に、「一緒に5年間延長保守サポートはいかがですか?」や「ヘルプデスクサポートはいかがですか?」と勧められた
  • ネットショップで電気自転車を買ったが、自分でブレーキの調整をするのが大変で後悔した
  • コピー機を買う際に、「一緒に文書管理ソフトもいかがですか?」や「印刷傾向を分析して印刷コスト削減のコンサルテーションも一緒にいかがですか?」や「コピー機の予防保全サービスも一緒にいかがですか?」と勧められた
  • 冷蔵庫や洗濯機などを買おうと検討した際、価格.comで安いネットショップを探して買おうかと思ったが、設置サービスや修理サービスが心配で、身近な家電量販店で買うことにした
  • パソコンが動かなくなってヘルプデスクに電話をした。電話する時はすごく腹が立っていたが、ヘルプデスクでテキパキと解決策にたどり着いた際は、この会社が好きになっていた

お客様視点で見ると、各製品のスペックや価格が似ている中で違いが出ているのはサービス品質。そして、利用満足につながるのもサービス品質。企業がサービスの拡充やサービスを売りにする取り組み姿勢は、さまざまなシーンでお客様に見られています。

このブログでは数回の稿を使い、この広いテーマを少しずつ探索してみたいと思います。第1回目の今回は、なぜこれほどまでに、製造業の「モノ」から「コト」が注目されているのか。2回目では、サービス事業強化が各部門に与える変化と課題。3回目で、その変化と課題に対応するために求められるIT像。4回目以降で、各部門に求められる変革の詳細について論を進めていきたいと思います。

さて、なぜこれほどまでに製造業の「モノ」から「コト」が注目されているかを考えてみると、以下の3つの観点がすぐに思い当たります。

  • 前述のように、お客様視点で選ぶ基準、満足の基準としてサービスが最重要である
  • 企業が売上を毎年伸ばしていく際に製品売上が頭打ちになりがちな中、サービスの売上拡大の余地が大きい (サービス市場は製品市場の5倍ある) 参照 図①
  • サービス事業の利益率は高い。(サービスの利益率は製品の3倍ある) 参照 図②
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図①

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図②

サービスが差別化要素で、売上拡大の余地であり、利益率向上のカギ。だから注力しているという非常に分かりやすい図式です。実際、大手製造業25社の中期経営計画を見ると実に15社がサービス事業の強化をうたっています。

「サービス事業を強化しイノベーションを実現」「サービスビジネスをより強く」「サービス創造企業グループ」「先進国市場ではサービス事業への事業構造転換を加速する」「デジタル機器、ITサービスを収益源とする事業構造への転換」「お客様の課題を解決する戦略的パートナーシップを確立」などなど。モノづくりの力だけで勝負しようとする製造業を探すほうが大変な状況なのです。

しかし一方で、このような経営方針をここ10年ずっと掲げている企業もいくつもあります。とても長い取り組みを続けているその理由は、サービス事業の強化というテーマはそうそう簡単な話ではないからです。『良いモノを作れば売れる』というこれまでのDNAの変革が必要であり、これまで成功してきた製造業であればなおさら大変なのではないでしょうか。サービス事業への変革に成功している企業は全社的な取り組みとして確かなロードマップを描いて進めています。

次回は、その最大の難しさである、部門横断っぷりを見るために、サービス事業強化が各部門に与える変化と課題について考えたいと思います。