全社員の技術と経験を一元的に見える化、エキスパートの養成に注力するベクテル


ベクテル Bechtel は、エンジニアリングおよび建設業界における世界最大手のひとつである。従業員53,000人、年間売上高は379億ドル約3.8兆円)。

本社サンフランシスコの他、東京を含む世界50か国にオフィスがある。日本でも大型工事を手掛けており、代表的なものでは関西国際空港、アクアライン川崎人工島、日本原燃六ヶ所再処理工場などがある。

日本のエンジニアリング業界で、日揮、千代田化工建設、東洋エンジニアリングの上位3社を通称「エンジ三社」と呼ぶが、この3社の連結売上の合計が1兆円弱なので、ベクテルの規模の大きさがわかる。

ENR誌のランキングでは15年連続で Top Contractors の第一位に選出されている。
http://enr.construction.com/toplists/Top-Contractors/001-100.asp

エンジニアリング専業の他社と比べ、ベクテルの特徴は幅広い事業ポートフォリオを持つことである。

  • 火力・原子力発電所
  • 石油・ガス・化学のプラントおよびパイプライン
  • 鉱山開発および製鉄所
  • 空港・港湾・橋梁・高速道路・鉄道などの一般土木
  • 政府関連事業

の5つの事業部門を持つ。

古くは世界最大の水源ダムであるフーバーダム(1936年完成)、近年では英仏海峡トンネル(1994年完成)、ボストンの地下に大トンネルを通したBig Dig(2007年完成)。ロンドンの大深度を通過する地下鉄 Cross Rail も進行中である。

創業115年、いまもベクテル・ファミリーによって所有されている非上場企業でもあり、安定的な成長を志向する企業文化を持つ。優れた技術力に対する顧客からの信頼は厚く、したがって前例のない難工事が次々に持ち込まれるが、モットーは(たとえこれまでに経験のない初めての工事でも)「一回目から完璧に Right the first time」。

ベクテルがYoutubeにアップしている動画たちがかなり面白い。いくつか紹介すると、

■チェルノブイリ原発跡に、第二のシェルターを作る工事。この動画は見もの。
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YouTube: Chornobyl Shelter Implementation Plan

■イヴァンパ太陽光発電所。地上100mのタワーに32.5万枚の鏡が反射した太陽光を集めて発電する、というもの。コレもカッコいい。
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YouTube: Innovation: Building Ivanpah

ちなみにイヴァンパは、Google Mapの航空写真で見ると面白い。

 Ivanpah_Satellite2
イヴァンパ太陽光発電所(Google Mapの航空写真が開くので、ズームイン/バックしてみてください)

「一回目から完璧」を実現するのは、技術と経験を積んだ技術者集団の力以外にない。いかにして適切な経験者を集め、また若手に経験を積ませるか?がエンジニアリング会社の経営の根幹である。

そのベクテルは2010年、サクセスファクターズタレントマネージメント・ソリューション群を導入し、TalentWorksという愛称で運用を行っている。以下、関連資料から抜粋して構成した。

—–Bechtel_HP

ベクテルのようなグローバルなエンジニアリング/建設会社では、きわめて特別な技術と経験を持ったエキスパート世界中からすばやく見つけて必要な現場にアサインできるかどうか、が勝負です。作れるという見通しが立たない案件に応札することはできませんし、受注しても予算内に収められなければ利益を出すことができません。

加えて、工事が行われる場所のローカルなニーズを理解することも重要です。たとえば世界中に「まったく同じ」発電所はふたつとありません。立地、土壌、地盤、気候、周辺環境、市街地との距離、用いられる技術、すべて少しずつ違います。

しかも団塊世代の高齢化と退職に伴い、そうした経験豊富なエンジニアは世界的に不足しつつあります。したがって、そうした専門家を社内および社外から見つけてくるスピードは、工事のスムーズな進捗と利益に対して目に見える、かつ計測可能なインパクトがあります。

ベクテルのテクノロジー戦略は、タレント戦略とほぼ同義です。優秀なタレントを養成し、維持することがなによりも重要です。

また、すべてが「グローバル視点」で行われます。案件へのアサインも、タレント養成も、タレントの見える化も。

こうしたグローバルタレント戦略に基づき、ツール選択を始めたのは2008年でした。情報収集、RFI、RFPを経てサクセスファクターズのタレントマネージメント・ツール群の導入を決定し、2010年からモジュールごとに展開を開始しました。

  • 採用管理 recruiting management、
  • 後継者計画 succession planning、
  • 処遇計画 compensation planning、
  • 業績管理 performance management、
  • 従業員プロフィール管理 employee profilingです。その後さらに
  • 研修管理 learning managementも追加しました。

もちろんわれわれは、それ以前からそれぞれ別個にツールを持っていましたが、サクセスファクターズの導入に伴いひとつの統一されたインターフェースに統合することができました。現場からは、インターフェースがビジュアルで分かりやすく使いやすい、と好評です。

しかしこれは単なるツール導入に留まりません。サクセスファクターズの導入を機に、タレント管理がグローバルに統合されたのです。今や当社のマネージメントは、世界中の人材を、統一されたひとつの指標に基づいて包括的かつリアルタイムに一覧することができます。

ベクテル社内ではTalent Worksという社内ブランドを付けました。これも、タレント戦略に対する会社の「本気度」を示し、社員に浸透させるうえで重要でした。

たとえば採用管理では、ベクテルは常時、30か国ほどに跨る採用(求人)情報を週平均80人くらい、社内外に掲示しています。もちろん、できれば社内からの採用を優先させたいと考えています。以前は社内向けと社外向けはまったく別のシステムでしたが、これを統合することができ、大きな効率化につながりました。

またいったん採用した後のさまざまな人事手続も、システムがサクセスファクターズに統合されたことで一本化され、スムーズに進めることができるようになりました。たとえば応募者が応募書類として提出してきた個人情報や過去の職歴などの情報は、採用したらそのまま社員のプロフィール情報として引き継がれます。

サクセスファクターズ導入に伴うメリットのひとつは、付加情報が得られるようになったことです。たとえばポジションを埋めるのに職種ごとに平均どのくらいかかるのか?とかサウジアラビアに人を転勤させるにはどのくらいの期間がかかるか?、などいろいろな事象が数値で計測できるようになったことが大きい。

オンプレミスでなくクラウド製品を選択するときには、もちろん、社員情報のセキュリティは非常に重要ですから、喧々諤々の議論がありました。しかし今後のトレンドはクラウドだろうと考えていましたし、サクセスファクターズ製品はセキュリティや信頼性も満足のいくものだったので、最終的には上層部に決断してもらいました。ちなみにサクセスファクターズは、希望すればいつでも実際にデータセンターに行って保安状況を検視させてくれますよ。実際に行ったことはないですけど(笑)。

クラウド(Saas)ベースのソリューションを採用したことのメリットは、最新技術が常に使えること、です。ベクテルはSAP ERPも使っていますが、ERPでは一度導入したら5年間まったく触らないことも多いですよね。いっぽうサクセスファクターズは最新テクノロジーに適応して、四半期ごとにどんどん改善されていく。たとえばモバイル機器からのアクセスへの対応などはサクセスファクターズが標準でやってくれますので、クラウドのメリットが大きく貢献しました。

また顧客コミュニティによる改善も大きいですね。世界中のサクセスファクターズ顧客企業から上がってくる改善要望がどんどん議論され、ニーズの高いものはどんどん取り込まれていきます。

サクセスファクターズはもはやNice to haveのシステムではありません。必須システムになりました。

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ちなみにこちらが、TalentWorksの求人サイト(外部向け)である。2013年12月のある日で見ると、478ポジションが掲載されている。

BechtelJobSearch
Bechtel Job Searchのページ(イメージ)

職種のひとつひとつを見ると、、、門外漢にはそもそも何をする仕事なのか容易には想像がつかないようなもの(笑)を含めて、多数が掲載されている。

  • パイピング・デザイナー Piping Designer:原発の配管を3D CADで設計する
  • リギング・エンジニア Rigging Engineer:西オーストラリア州オンズロー(すごいド田舎)でのLNG(液化天然ガス)採掘現場でリグ(掘削プラットフォーム)を運用管理する
  • 制御システム・デザイナー Control Systems Designer:インド・ニューデリーで、平面図から3D CADを用いて制御システムの設計を行う

などなど。

これは外部向け公開サイトだが、同じ情報データベースが社内外を共通で運用されているのだろう。もちろん、社内向けにしか出されていない求人も多いと思われる。

このように、社内と社外への求人が一元的に管理できるというのも、クラウドベースのツールを使うことの利点の一例と言えるだろう。

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エンジニアリング業界に限らず商社、金融、プロフェッショナルサービスなど、「ヒトの組織力がすべて」な業界は数多い。タレントマネージメントの導入は今後も拡大していくだろう。

※本稿は公開情報に基づいて筆者が構成したものであり、ベクテル社のレビューを受けたものではありません。

【参考リンク】

■Bechtel Case Study (SuccessFactorsの事例PDF、英語A4x2ページ。ダウンロードの際にメールアドレスや氏名等の入力が必要)
http://www.successfactors.com/en_us/download.html?a=/content/dam/successfactors/en_us/resources/case-studies/bechtel-cs.pdf

■Bechtel Annual Report 2013 (PDFダウンロード18.2MB、34ページ、英語)
http://www.bechtel.com/2013_Bechtel_Report/BEC003_AR2013_rv34_WEB.pdf
ヴィジュアルで見ているだけでも楽しい。

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