ERPとMESの役割の違い
作成者:小野山 忍 投稿日:2014年4月22日
こんにちは。SAPジャパンの小野山です。わたしはSAPジャパンで主に組立製造業を中心に提案活動をしております。Manufacturing Execution System:製造実行システム(以下:MES)と言われる製造現場管理系ソリューションを中心に生産管理全般を担当しております。
製造現場管理の期待の高まり
最近お客様への提案活動を通じて感じることがあります。いままでは基幹システム刷新というと、全体最適に向けた経営判断の基盤として販売、生産、購買、製造および会計業務の業務標準化と情報の一元化を、ERPという情報管理基盤を用いて行いたいと相談を受けるケースがほとんどでした。それが最近は、経営基盤の構築に加えて製造現場まで含めて標準化を進めたいというニーズが増えてきております。変動する市場ニーズに対応するため、経営層も生産活動におけるさらなる生産率の向上・最適化に迫られつつあることが要因として考えられます。
MESシステムはなぜ必要か?
以前のブログでもあったようにMESを導入した際、グローバルの顧客事例からメリットは以下の内容が挙げられます。
- 迅速かつ詳細なトレーサビリティの確立
- 製造現場の可視化と問題への迅速な対応
- 歩留やサービスレベルなどの各種指標の改善
- SAP ERPとのシンプルかつ迅速な連携
上記の内容から、MES導入済みの企業は、製造現場における業務の最適化と可視化に基づく改善活動を実現するのに必要な条件が揃っていることが分かります。では、ERPを導入することでMESが管理する情報もカバーすることは可能なのでしょうか?次の章でご説明します。
ERPシステムとMESシステムの役割
ERPとは、Enterprise Resource Planningの略で、“企業資源計画”を指します。企業における経営資源(ヒト、モノ、お金、情報)を一元管理し、この経営資源を業務組織横断で有効活用し、利益最大化を目指します。“ERPシステム”は利益最大化に向け、経営および業務組織部門が一体となり、“ERP”を実現するための情報管理基盤を提供します。
MESとは、Manufacturing Execution Systemの略で、“製造実行システム”を指します。生産活動におけるQCD(品質、コスト、納期)を継続的に改善するため、現場情報を収集し、評価・分析を通じて生産の最大化を目指します。
ここでERPシステムとMESシステムの役割について整理してみましょう。
比較するポイント |
ERP |
MES |
管理目的 |
経営資源(人・モノ・お金・)の最適活用 |
製造現場(人、設備、モノ)の最適活用 |
管理方法 |
経営指標(KPI)による経営・業務一体の目標管理 |
製造現場におけるQCD活動の管理 |
情報の活用目的 |
経営指標に基づく経営判断 |
製造現場の改善活動促進 |
主な活用者 |
経営層 |
各管理層 |
システム導入の進め方 |
トップダウン |
ボトムアップ(現場主体) |
情報の管理粒度 |
年~日 |
日~秒 |
主要インタフェース |
ERP⇒MES(作業指示) |
現場機器⇒MES(操業情報) |
主な管理機能 |
製品構成管理/設計変更管理 |
仕様・文書管理 |
整理してみるとERPとMESではシステムを管理する上で求められている役割が違うことがわかります。
MESに関連した次回のトピックでは、今回切り分けしたMESシステムにおける日本企業の活用状況について考察してみたいと思います。また前回のブログでもご紹介したようにSAPもMESにおける製品をご提供しております。次々回以降では、同製品(SAP Manufacturing Execution)が持つ機能と価値および顧客事例についてもご紹介していきます。
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