製造業の「モノ」から「コト」への事業変革。サービス事業の強化の流れ:その②各部門に求められる変化


SAP桃木です。製造業の「モノ」から「コト」への事業変革。今回は2回目です。前回は、このテーマがなぜ着目されているかについて考えました。今回は、この大きなテーマが各部門にどのように影響を与えるか、各部門にどのような変革が要請されるかを考えてみたいと思います。

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“「モノ」から「コト」へ”や、サービス事業の強化は、幅広い部門で変革が求められる大きなテーマである(図①)。想像しやすい営業部門やサービス部門から始め、設計部門や経営管理部門、IT部門などに進みながら、求められる変化について少しずつ考えてみよう。

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図①:製造業の「モノ」から「コト」への事業変革。各部門に求められる変化

営業部門

「モノ」から「コト」に提供価値が変わるということは、お客様ごとに違うニーズに答えるということ。しかし、営業一人ではお客様ごとのニーズに応えきれない。技術営業とのチームセリングの強化が求められ、その実現の際には、技術営業との情報共有技術営業のリソース管理案件情報の確度を図る指標の客観化、技術営業の貢献評価などが必要になる。

また、サービス部門が営業部門から独立している場合(別会社になっているケースも多い)、協力体制を再構築することもある。

製品に加えオプション品やサービスなどを組み合せていくと価格構成も複雑になってくる(見積書を想像すると分かりやすいが、以前は製品価格だけだった見積書が、製品からオプション品、サービスまで含めた見積になる)。さらに競合他社も同じようなサービス化が進むと、製品とサービスを組み合せたパッケージ化や、利用量に応じた価格体系(従量課金)などの取り組みも必要となる。

「コト」を提供することに力点が置かれ始めると、自社および自社グループだけでの提供に限界が出てくる。この段階では他社との協業も増えてくる。その際に求められる変化は、契約形態として他社を含めた契約条件の調整や、協業他社との売上のシェアやコミッションの配賦などのルール化と個別対応処理なども必要となる。

保守サービス部門

サービス部門で最も大きな変化は、コストセンターからプロフィットセンターへの変革である。

サービス部門は製品販売の”おまけ”で”無料”なのではなく、サービス自体が売り物で、差別化要素で、収益を上げる事業となる。

新たなサービスを生み出していく社内的な新たなサービス企画の仕組みが求められるし、その新たなサービスの事業計画も必要になる。

また、収益を見る際にはコスト管理もより厳密化することが求められる(比較的大きな企業の保守子会社であっても、詳細なコスト管理を行っていないケースも散見される)。

さらに「コト」を提供することを力点が置かれ始めると、自社製品だけでなく、他社製品を含めた包括的なサービスや保守も求められる。その際には営業部門と同様に、協業他社との情報共有や売上のシェアなどの対応が求められる。

設計・開発部門

「モノ」から「コト」に提供価値が変わるということは、お客様ごとに違うニーズに答えるということ。お客様ごとに違うニーズに対応するためには、本体製品に加えて多様なオプション品が出てくるということ。これまでのように本体製品ごとにオプション品を設計するのではスピードが間に合わず、本体製品の設計を共通化し、複数の本体製品に適合するオプション品を設計することが求められる。これまで以上に設計の共通化やモジュール化が必要である。

また、サービスビジネスを強化する中で、サービス部門から設計部門に対して、サービスを売りやすくするための製品の変革を求められることもある。製品の顧客ごと仕様へのカスタマイズサービスや、保守・修理サービスなどを行いやすいように製品自体を改善して欲しいという要求だ。

このようにオプション品やサービスが増えた中で、プロダクトマネージャーの製品ライフサイクル全体に渡る収益責任の考え方も変わってくる。以前であればプロダクトマネージャーは、製品開発から製品売上までの数値責任を負う立場であったが、これからはオプション品やサービス売上まで含めて計画と管理が必要になるのである。

サプライチェーン(物流部門や倉庫部門など)

「コト」の提供の中でお客様仕様が増えてくる。完成品に対してひと手間加えたカスタマイズをして出荷することや、他社製品を組み合せてお客様に出荷することも増える。また、お客様先にタイミングを合わせて自社製品と他社製品とサービス要員を送り込むことも増えるだろう。さらにその内容がより大規模で複雑なものになれば、プロジェクト管理のような業務も増えてくる。

これまでのように完成した製品を顧客先に届けるだけでなく、お客様仕様に合わせた一品一様で届けるためにプロセスとタイミングを管理し、その中で問題が発生した際には即座に対応できる能力が必要となる。

経営管理部門 (経営、経理、企画など)

「コト」の提供を行う際には、自社のこれまでの強みである自社既製品の割合が相対的に減る。新たなオプション品やサービスを次々に生み出していく必要がある。そのような新たな取り組みを作りだすにはコストがかかり、すべてのアイデアを実現することはリソースが限られている中で難しく優先順位をづける必要がある。このような新規事業のポートフォリオ管理が必要となる。

その前提として、サービス事業のコスト詳細の把握や他社協業における売上配賦の方針などが明確になっていることが求められる。

また、自社でポートフォリオ拡充のスピードが足りない際には、戦略的なアライアンスの構築や、場合によっては企業買収などの検討も必要になる。

そして、何よりも難しいのが、上述のさまざまな部門で並行して走る事業改革の旗振りや意識改革と、部門間の整合性を取ることが求められることである。

IT部門

もし仮にIT部門が待ちの姿勢だったら、これら多くの変革が業務部門で進行する中、それぞれが連携しない各部門独自ニーズに基づく個別システムの乱立が待っている。一方で、「コト」のビジネスでは各部門の連携がこれまで以上に求められ、システムが事業変革の足を引っ張ることにもなりかねない。

IT部門は、自社の経営戦略の先を見据えて、青写真を先に持ち、将来を見据えたシステムランドスケープを描くことが求められる。いわゆる攻めの姿勢だ。そして、これまで製品ビジネスを中心に組み立てられた多くの基幹システムはサービスビジネスに対応できないことも多い中、既存のシステムを活かしつつ将来に向けてシステムの変革ロードマップも必要となる。

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今回2回目では、製造業の「モノ」から「コト」への事業変革において、各部門に求められる変化について考えてみました。

小生がお会いする製造業の方からは「サービス事業のコストが把握できていない」「新たなサービスメニューを生み出したいが、そもそもそのような土壌がない」「販売管理のシステムがサービス販売に対応していない」「新たな価格体系は望ましいが、業務とシステムの変更が大変すぎる」などの話を聞く機会が多いです。また、製造本社では、お客様のことや、販売子会社やサービス子会社の実態を把握できていないことも多いです。

そのような中、まずは企業(もしくは企業グループ)全体でどのような変化が求められているのかを把握することが重要だと感じています。

次回は、このような変化が求められる各部門で、どのような業務施策が行われているか。そしてその際に求めらるIT施策はどのようなものか、について考えを深めていきたいと思います。