目的はSAP HANAを入れることではない、リアルタイム化してBI環境を革新し利益率を向上することだ


経営層には何倍速いかではなくビジネスメリットは具体的に何かを示す

DSC_5452登場以来、SAP HANAを導入している企業は着実に増えている。そんな状況を証明するかのように、SAP SAPPHIREのイベント会場では、SAP HANA導入事例を紹介するセッションがいくつも行われている。

北米で家畜、ペット関連商品の販売ビジネスを行っているAnimal Health Internationalは、SAP NetWeaver BWをSAP HANAに載せた。情報システム部門的には、SAP HANAはリーディングエッジのテクノロジーであり、導入することでBIの革新がもたらされると考えた。さらに、今後の増え続けるデータ、つまりはビッグデータへの課題にも、SAP HANAならば答えられるという判断があった。

とはいえ、経営層を説得するにはもっと具体的なメリットを示す必要があった。移行にはSAP HANAのライセンスを含むハードウェア・アプライアンスの費用、システム変更のためにコンサルタントに手伝ってもらうための費用など、それなりに大きなコストがかかる。この投資に対し、SAP HANAの導入でBIの革新を実現できれば「現状のビリオンドル規模のビジネスを12%拡大できるという具体的な数字を示すことで経営層を説得しました」と、Animal HealthのCIOであるVice President Information Technologyのティム・ヘイズ氏は言う。

「自分たちにとって何が一番重要なのか、もっともやりたいことに集中することです」とヘイズ氏。SAP HANAのパワーを買うことで、利益率の向上を目指したのだと言う。CEOはどうやって利益を上げ、会社を拡大するかを考えている。そこにSAP HANAの性能の説明を持ち出しても投資は納得してもらえない。他のベータベースよりも高性能だということが重要なのではなく、SAP HANAの大きなパワーを得ることで会社の何が変わるのか、それにより具体的にどれくらいのメリットが期待できるのかを説明する必要があるのだ。

IT部門にいると、どうしても製品なりの機能差や性能差にこだわってしまう傾向がある。目的は速いマシンなりを入れることではなく、速いマシンを手に入れてどんな革新を起こすか。SAP HANAのように新しいリーディングエッジのテクノロジーを導入する際には、より一層そのあたりを意識する必要がありそうだ。

より明細レベルのデータを使ってリアルタイムな分析が可能に

DSC_5445SAP Business Warehouse on SAP HANA(以下、BW on HANA)を実現したAnimal Healthでは、具体的に何が変わったのか。まずはカスタマーをランキングしてグループ分けし、グループごとにどのようなビジネスの状況になっているかの分析が行えるようになった。最上級のエリートカスタマーは全体の8%しかおらず、そのエリート顧客がどのような購買傾向にあるかがリアルタイムに分かるようになる。さらに、扱っている商品アイテムごとの分析も可能になった。

「ほんの500ほどの商品アイテムが、全体の75%の売り上げを締めていました。そして、残り3,600のアイテムは利益への貢献が1%程度しかないことが分かりました」(ヘイズ氏)

商品アイテムと顧客のランキングセグメントを組み合わせ、SAP HANAでリアルタイム分析ができるようになった。これにより、アイテムごとに売値の最適化が可能となったのだ。売り上げの分析が商品アイテムの明細レベルではなく、さらにリアルタイムでもなければ、SAP Business Warehouseを使っても後からこういう売り上げ傾向だったことが分かるだけだ。その結果から売値を調整しても、どのような利益率になるかをシミュレーションするのは難しい。また1週間後なりに価格調整した結果のレポートを見るまで、施策が成功したのか失敗したのかも分からない。分からなければ、その間は新たな対策を打つこともままならない。

Animal Healthの場合は、リアルタイムに、明細レベルのビッグデータを扱えることで分析環境に革新が生まれたわけだ。そのために必要だったのが、BW on HANAということになる。

SAP Business WarehouseをSAP HANAに載せる際に、サイジングについてはそれなりにきっちりと時間をかけて行ったようだ。当然ながら初めての試みであり、SAPが提供しているドキュメントなどを参考に検討が重ねられた。システム環境としてはVMwareを使った仮想化環境なども検討されたようだが、基本的にはSAPの持っているベストプラクティスになるべく沿うようにしたようだ。

目的はSAP HANAを導入することではなくリアルタイム化し新たなビジネス価値を生み出すこと

DSC_5446SAP ERPでSAP Business Warehouseを使うというのは、よほど運用するハードウェアが強力でない限りは基本的にはレポーティングツールとして利用することになるだろう。別途データウェアハウスを構築、運用する手間がないというメリットはあるが、そこにリアルタイム性を求めることは難しい。今後のデータ量増加などを考えれば、その状況はさらに厳しいことになるだろう。

今後BIやデータウェアハウスのところで革新を起こし、それによってビジネスの拡大を目指したい。そう考えるならばその際の重要なキーワードは「リアルタイム化」だ。SAP HANAを入れることが目的ではない。分析の環境をリアルタイム化する際の最適な方法がSAP HANAだった、このことは忘れないようにすべきだと改めて想わせられる事例だった。