スポーツは25番目のインダストリー、スポーツでのデータ活用を他のインダストリーでも活用せよ


SAP SAPPHIRE NOWはマーケティングメッセージと言うよりは現場のリアルな話が聞ける場

DSC_5768今回のSAP SAPPHIRE NOWのレポートは、セッションから離れ少し展示会場の様子についてレポートする。とはいえ、このイベントでは展示会場内のあちらこちらにステージシアターやミニプレゼンテーションコーナーが設けられており、それらを使ってオープン形式でさまざまな講演やディスカッションが行われている。閉鎖された教室ではないので、興味のあるセッションやディスカッションがあれば事前予約などしなくても気軽に参加できる。そのため、人気のセッションではプレゼンテーションコーナーを大勢が取り囲む状態にもなる。

行われているセッションやディスカッションの内容は、SAPの担当者がマーケティング的なメッセージを一方的に伝えるようなものではない。ユーザー企業の担当者やパートナーでコンサルティングサービスなどを実践しているエンジニア自身が語るものがほとんどだ。参加者は彼らに直接質問を投げかけディスカッションが行える。この辺りは、マーケティングイベントが始まりではなく、ユーザー会の活動が大きくなったイベントらしいところとも言えそうだ。

逆に言うと、ステージシアターなどで行われるセミナーからは、SAPの製品やサービスの最新情報を得ることはできない。実践としてSAP ERPやSAP HANAをどう活用しているのか、製品を選んだポイントやどのような構成をどうやって構築したかなどが生々しく語られる場だ。参加者からも忌憚のない質問が飛び、それに対しSAPに気を遣うことなくありのままの回答が返される。その様子はギスギスしたものではなく、むしろ気持ちが良いやりとりに見える。DSC_5773

ところでパートナー展示コーナーの雰囲気は、日本とそれほど大きく変わるものではない。コンペでありパートナーでもあるOracleもいれば、日本企業としては日立や富士通、NTTデータなども大きなブースを構えていた。

そんな中、今回新たに大きなブースを構えることになったのがLinuxディストリビューターのRed Hatだ。というのも、今回のイベントのタイミングでSAP HANAのService Pack 8の提供開始が発表され、その最新版SAP HANAの目玉の1つがプラットフォームOSにRed Hat Enterprise Linuxをサポートしたことなのだ。日本では、社内のLinux OSの標準をRed Hatとしている企業も多い。そういう企業でSAP HANAが使いたかったところでは、このSP8の提供は朗報だろう。

もう1つ新たに大きなブースを構えることになったのがVMwareだろう。こちらは先月、VMware vSphere5.5の上でSAP HANAの本番稼働サポートを発表しているからだ。さらには、IBMはSAPとのグローバル・パートナーシップを拡大し、SAP HANAおよびその他のSAPアプリケーションをSoftLayerのクラウド・プラットフォーム上で提供することも発表されている。当然ながらIBMも、大きなブースを構えていた。

SAPとしては、自前のクラウドの利用をより促進したいのはもちろんだろう。とはいえ、顧客の選択肢としてプラットフォームを拡大することにもこのようなパートナーリングで注力している。こういう動きからも、SAPの環境下で使えるSAP HANAからどこでもどんなアプリケーションでも使えるSAP HANAへとオープンなプラットフォーム化を目指す姿を伺うことができる。

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スポーツが25番目のインダストリー

今回のイベントでフォーカスされていたものにスポーツ領域でのSAP製品の活用がある。その象徴の1つが展示会場のかなり目立つ場所に置かれていた、サッカーにおける最新のデータ活用を紹介するデモブースだ。これは、試合中の選手の動きをデータ化しビジュアライズするもの。現在のサッカーでは、各種データをゲームに勝つための戦略に役立てている。そんなチームの1つであるSAPの地元ドイツ代表が、実際に利用しているシステムをデモとして展示していたのだ。DSC_5791

最近はスタジアムにトラッキングカメラが取り付けてあり、ボールの動きだけでなく選手の動きをリアルタイムにデータ化している。単にフィールド上の動きを見ているだけでなく選手の身体の向きまで検知し、その選手の守備範囲がどうなっているかなどもリアルタイムにビジュアライズが可能だ。

近代サッカーでは、ボールの保持率を上げることで負けない試合展開が可能になる。ようはボールを相手に取られなければ点を取られないということだ。このボールの保持率を上げるためには、選手はフィールド上で網目状に展開し、常に2つ以上のパスコースを保持し細かくパスをつなぐ必要がある。詳細なデータが取れるので、フィールド上での選手の位置取りや選手別のボール保持時間などを細かく計測し、戦略や戦術に反映させるのだ。

残念ながらFIFAのレギュレーションで試合中にそのデータをリアルタイムに活用することは許されていない。しかし、練習などではさらにすね当てにセンサーを入れ、走行状態などまで細かく計測し、得られるビッグデータを戦略や選手のスキルアップに活用しているのだ。選手の体力や技術を向上させて試合に勝つのではなく、データを使って頭脳で勝つ。これはサッカーの世界においては、ある意味破壊的なイノベーションということになる。それを裏でリアルタイムに支えるのが、SAP HANAの技術ということだ。

SAPは、スポーツ分野を25番目のインダストリーと位置づけ注力している。スポーツでのデータ活用は始まったばかりであり、新しいビジネス領域として期待できるというのもある。さらには、スポーツでのデータ活用効果は理解しやすいので、それを応用して他のインダストリーにも適用するというアプローチも有効だと考えているようだ。

すでに、SAPがサポートしているF1チームのマクラーレンでは、F1のレースで培ったリアルタイムのデータ解析ノウハウを他業界向けにコンサルティングサービスを含め提供を開始しているとのこと。またスポーツの話は経営層にも理解しやすいこともあり、新たなデータ活用のきっかけの事例としては最適なものという判断もあるようだ。日本でも東京でのオリンピック開催が迫っており、今後スポーツをITがターゲットする25番目のインダストリーとする動きは加速しそうだ。