自動車・組み立て製造業のイノベーション最前線――第2回:品質/ワランティ面でのコスト競争力を目指して


SAPジャパンの山﨑です。本連載では、「自動車・組み立て製造業のイノベーション最前線」と題して、新たなトレンドとそれに関わるSAPとしての中長期的取り組みを4回シリーズで紹介しています。前回は、「M2M/テレマティクスで事業構造が変わる」を取り上げました。2回目の今回は、自動車メーカーにとって切実な課題である「品質/ワランティ」がテーマです。

グローバル化、複雑化で増大するリコールリスク

Insurance adjuster inspecting carいま、世界中の自動車メーカーにとって、リコール対応やワランティは、収益を圧迫する要因として、切実な課題となっています。ここに、リコールについてのショッキングなデータがあります。一例をあげますと、ある日本の大手自動車メーカーの3車種でWindow liftが動かなくなったという不具合で、過去1年に740万台のリコールが発生しています。このような状況に対して、世界中の自動車メーカーは不具合発生頻度を減らしたり、不具合対応時間を短くしたりするために、ブランド力向上、品質向上、リコールリスク低減、ワランティコスト削減に取り組んでいます。

前回見たとおり、タイヤ圧力管理義務などの新たな規制対応、自動追尾、次世代カーナビ、M2M、テレマティクスなどの「つながる」仕組みやサービスの普及に伴い、電装部品、車載プログラムなどが高度化・複雑化しています。これらは自動車の新たな可能性をひらく一方で、部品やシステムの不具合の新たな要因となっている側面もあるのです。

業務改革、業務改善による対応

このような状況に際し、SAPではこれまで、基幹業務の一環として業務改革・業務改善のソリューションを提供し、お客様に価値を創造してきました。突き詰めると、その内容は、以下の3点に集約されます。

  1. 不具合対策の早期実施によるワランティコスト削減
  2. 不適切請求の低減による不要支払金額の削減
  3. 明確なルール化に則った部品サプライヤーへの求償率向上(不具合責任切り分けの明確化と明朗会計)

これら3点に集約される対応は、具体的には以下となります。

  • ディーラー、販売会社、本社(工場)間で複数システムにまたがり分断されていた情報を、単一システムで扱えるようにし、ワランティ処理の早期化を実現した
  • 上記のシステムにより、ワランティ請求された不具合部品だけでなく、関連する部品の評価や分析もしやすくなったので、本質的な原因究明および対策精度を向上させることができた
  • ワランティ請求ごとにテキスト情報、文書、画像を統合管理し相互参照を容易にした
  • SAPが提供するワランティプロセスを雛形に、別々に作られていたワランティプロセスを共通化してグローバルシステムとして一元化した
  • 原因究明の早期化と、対策にむけた設計・開発部門やサプライヤーとのシームレスな情報連携を実現し、品質改善スピードを向上させた
  • 膨大なワランティ請求オーダーの自動処理化と、ルールエンジンをグローバルで単一に管理することにより、不適切請求支払を低減させた
  • 部品に起因する不具合についてのサプライヤーとの求償ルールを取決め、それ以降の再発に関してはグローバル規模で部品サプライヤーへ求償処理を自動化し、結果として求償率を向上させた

GMでは最近5年間で毎年5〜19%の削減実績

このようなソリューションにより、実際にどのような効果があったか、一例をご紹介しましょう。SAPのお客様であるGMでは、2008年にSAPのワランティ業務改革プログラム「Global Warranty Management (GWM)」を導入後、各年に販売した車両1台あたりの保証支払額が毎年5〜19%削減しているとのデータがあります。これは、GMが毎年アニュアルレポートに公式発表している数字に基づいて計算したものです。もっとも、各年に販売した車両からのみワランティ請求が発生するわけではないですが、平均的な傾向として低減の方向にあることは間違いなく、GWMの有効性が立証されたといえます。

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Facebookなどでのテキストマイニング活用による問題の早期発見—予測分析による品質管理のイノベーション

不具合も保証範囲内での対応であるうちは大きな問題になりませんが、ひとたびリコールになってしまうと回収費と対策費が大幅にかさむことになります。ですから、大きな事象になる前に問題を発見し、部品交換を含めた対策を実行したり、出荷前の問題の車は工場で対策を講じたりできれば、かなりの保証費用削減につながります。

従来の取り組みでは、不具合情報は工場などに持ち込まれて初めてわかるものでしたが、先進的な取り組みではテキストマイニングなどを活用します。たとえばFacebookなどのSNSに、車のオーナーがドライブ中の出来事を書き込んだりすることがありますが、そうした記述に、こんな不具合があったとか、こんな不便な思いをした、などというディーラーへ問題を連絡する前の情報が含まれていることがあります。例えば、セルフのガソリンスタンドで給油口からガソリンが噴出したとか、 坂道アシストが効かずに怖い思いをしたとか、追従型オートクルーズで走行中に突然急ブレーキがかかったとか、大雨で走行中に窓枠から雨漏りがしたなど。

このような「つぶやき」情報を収集解析し、車種や状況を特定すれば、工場で検証して、必要であれば未出荷車においては事前の部品交換や対策を講じてしまうことが可能になります。既出荷車に関しても、その車がディーラーなどに持ち込まれた際に、そこで無償交換などの対策を講じます。対策を促進するためにキャンペーンと称して該当車種をディーラーに持ちこませて、対処するという方法もありえます。SAPでは、このようなテキストマイニングを多言語で提供できる環境を備え、実用化させているところです。

問題早期発見が保証支払額削減のカギ

前回、M2Mのところで説 明した車両ごとのプローブ情報や故障診断情報に加え、SNS上の市場の声や過去のワランティなどもビッグデータです。これらのビッグデータを高速に予測分析することで、問題を早期発見することができ、ワランティクレームやリコールを未然に防ぐことが可能になります。SAP HANAがこのようなオペレーションの実現に寄与しています。

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次回は、自動車産業を中心とした組み立て型製造業を対象とした「グローバル戦略における人材育成と現地調達」というテーマで解説をいたします。

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