製造業の「モノ」から「コト」への事業変革。サービス事業の強化の流れ:その③ITに求められる変化

作成者:桃木 継之助投稿日:2014年6月17日

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SAP桃木です。製造業の「モノ」から「コト」への事業変革。今回は3回目です。
前回までの2回を通じて、この変革がなぜ重要か、全社各部門にどのような変化を要請する取り組みなのかについて考察してきました。今回はIT的な側面を考えてみたいと思います。

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製造業の「モノ」から「コト」への事業変革においてITの仕組みに求められる変化は多くの分野にわたる。
今回はもっとも影響の大きい3つの分野について考察を進める。

  1. サービス事業に対応した仕組み
  2. コラボレーションの仕組み
  3. 顧客対応力を高める仕組み

1.   サービス事業に対応した仕組み

1-1.  サービス事業に対応した品目管理や経理処理の仕組み

製品販売に特化した販売管理システムであり、役務販売を行う際にサービス品目がなく、何のサービスを売ったか分からなくなる (テキスト入力した品目と総額があるだけ)。単位が「個」になってしまい、「日」や「時間」などの単位で請求書を作成できない。サービス提供の実績ベースでの請求に対応できない。汎用機やAS400を10年物・20年物として利用している。サービス事業への対応が困難なことが多いが、システム再構築の最大の関門は、値引き管理・特価管理に関する複雑な作り込み部分。システム再構築の際に大きな業務改革も並行することが多い。

1-2.  サービス事業のコスト把握の仕組み

製品保守を提供している保守会社がある。部門ごとの人件費は把握しているが、顧客ごとやサービス種類ごとのコストは把握できていない。製品販売は製品原価が分かるので顧客ごとの利益(売上-コスト)も分かるが、サービス事業ではコスト(サービス原価)を詳細把握していないので顧客ごとの利益は分からない。大手の取引先が実は赤字なのではないか。

サービス事業の割合が増える中、個々のサービス業務の内容と提供先、コスト詳細(時間/単価/部材)を把握する仕組みが確実に求められる。

1-3.  利用量に応じた課金体系やビジネスパートナーへの売上配賦の仕組み

他社の製品やサービスを含めてお客様に提供する際、見積や請求を自社で行うこともある。その見積には値引きも入っている。ビジネスパートナーとは、個々の商談で値段を決定するだけでなく、年間などでのまとめた契約もあるし数量リベートのような複雑な計算もある。そのような業務要件において、お客様に対する請求だけでなく、ビジネスパートナーに対する支払いも高度で複雑な計算を行える必要がある。また製品やサービスを組み合わせた結果、価格が複雑化してきた段階でお客様に利用量などに応じたシンプルな価格体系に変更することもある(プリンターなどの枚数当たり単価や医療機器業界の患者あたり単価など)。その際は、利用量を把握する仕組みと、利用量をボリュームごとに区切った段階的単価の適用計算などが必要となる。これらは既存のシステムでは対応が非常に難しいシステム要件である。

2.   コラボレーションの仕組み

2-1. 情報共有と専門家検索の仕組み

モノからコトに移りゆくなか、必要な知識や知恵の量が増える。
モノの知識はモノの数。自社でコントロールできる。

しかしコトにおいては、お客様依存で数えられるものでもない。営業担当一人でコトの提案ができるわけもなく必然的に社内の情報共有の必要性が高まる。その一方、モノの専門家はすぐに見当たるが、コトの専門家は誰か分からない。昨今の社内ソーシャルの仕組みなど、相手を絞り切らず、よりオープンな形での情報共有の仕組みが必要となる。

2-2. ビジネスパートナーとの協業の仕組み

情報共有は社内だけに限った話ではない。2-1の情報共有をビジネスパートナーとも行う必要性が高まるが、その際に重要になるのは適切な権限管理。お客様や商談・案件ごとにビジネスパートナーへの情報公開範囲を設定し、必要十分なレベルにしなければならない。当然IT管理者がそのようなことに対応することはできないので、これらの処理を各現場担当者が簡便に行える必要がある。

2-3. 人事評価を柔軟に行う仕組み

互いに協力しあう業務形態となった際に個々人の貢献を把握し適切に人事評価を行っていくことはより難しくなる。また、事業環境が変わる中で、評価制度自体が変わることも多い。期中で目標を追加したり変更したり、さまざまなデータを集計し評価の中で活用したり、評価軸が異なる部下の結果を共通化し相対評価したり、そのような柔軟な評価支援の仕組みが必要となる。

3.   顧客対応力を高める仕組み

3-1. 顧客理解を促進する仕組み

モノを売るのであれば、顧客がモノを必要としているかを理解すれば良い。コトを売るのであれば、顧客の状況やニーズ(潜在的/顕在的)や顧客の外部環境の情報、自社との関係性など幅広い情報が必要となる。また、同じような顧客は同じようなコトを求めることがあるので、同じような顧客群を識別し想定ニーズに基づく提案活動も必要となるだろう。幅広い顧客情報を、部門横断で情報収集して蓄積し、複数のシステムを跨いでデータを収集し、日々の顧客対応業務で使えるレベルまでシンプル化した見た目での表現が必要となる。

3-2. 案件やプロジェクトを管理する仕組み

モノを売る際は数回の訪問で売れるかもしれない。コトを売るのであれば、その回数は10回を超えるかもしれない。個々の活動よりも商談・案件の状態を管理することの重要性が高まる。前述のようにチームセリングやビジネスパートナー協業の推進においても案件の状況をチームメンバーで共有することの重要性はより高まる。また、コトを実現するための提案段階においては、ビジネスパートナーを含めたプロジェクト提案のような形態も増えるだろう。簡便なプロジェクト管理の仕組みも必要となる。

3-3. 適切なソリューション提案を促進する仕組み

コトを売る際には、コトを実現するために複数の製品やサービスを組み合せて提案を行う。製品やサービスの種類が増えれば増えるほど、その組み合せのパターンは等比級数的に増えてくる。ただし一方で、どの製品とどの製品が組合せられる/られない、どの製品とどのサービスなど、いろいろな制約があるのも事実である。各担当者がこれらの制約を考慮し、対応することは困難であり、システムでそのような、できない組み合せを排除し、推奨する組み合せを示す仕組みが必要となる。

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今回3回目では、モノからコトの変化の中で求められるIT側面での変化を考えてみました。モノからコトへの変化は企業毎業種ごとに違いがあるのは確かです。しかし異業種を見ると新たな発見もあると思います。

次回は、みなさんがあまり研究しなさそうな業界で、実際にどのような変化が起きているかをケーススタディーとして見てみたいと思います。

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