ミレニアル(新世紀)世代のエンゲージメントを促す、人事業務におけるテクノロジー活用


こんにちは、SAPジャパンの鎌田です。ビジネスの世界が大きく変貌し、企業の各業務領域で新たな取り組みが求められる中、人事戦略もその例外ではないことは言うまでもありません。グローバルで起こりつつある人事環境の変化に対して、企業にはどのようなマインドシフトが必要とされているのでしょうか。5月22日に開催された「SAP HR Connect Tokyo グローバルタレントマネージメント 2014 ~多様性社会における適材適所の人選経営~」の基調講演においてSAPのグループ・バイスプレジデントを務めるディヴィッド・ラドロウが語った、これからの企業の成長を支えるミレニアル(新世紀)世代のエンゲージメントを促し、人材不足の時代に備えるための人事戦略は、参加した多くの関係者の関心を集める内容となりました。

「慢性的な人材不足」に備えた人材確保が急務に

R0015100グローバル規模での経済や社会、そしてワークスタイルの変化は、人材を発掘し、教育し、適材適所の配置を目指す企業の人事戦略にも大きな影響を与えています。ラドロウは、今起こっている環境変化の中で特に重要な課題として、以下のような点を挙げます。

まず「慢性的な人材不足」です。人材といっても単純な労働力ではなく、高度な知見や技術を持った技能労働者が圧倒的に不足しています。テクノロジーの進歩により、多くの重要ポジションの複雑性が増大していること。特に持続的な経済成長を支える、高度な技能職にニーズが集中していること。さらにグローバル化で技術労働者の雇用機会が増加し、流動性が一層高まっていることなどが人材不足に拍車をかけています。

しかし、こうした技術労働者を育てる教育訓練制度は不足しています。テクノロジーが進歩する一方で、技能労働と単純労働のギャップは拡大するばかりだとラドロウは指摘します。さらにわが国の場合、ここに人口問題も加わってきます。国連のデータでは、2013年から2020年に向けて日本の人口は59歳以上が一層拡大します。このことは、日本における優秀な働き盛りの人材探しをより難しくします。グローバルに視野を拡大して、優れた人材を確保するための仕組み作りが急務なのです。

2025年には労働人口の大半を占める「ミレニアル(新世紀)世代」

ラドロウは、今後の人事戦略を考える最重要キーワードとして「ミレニアル(新世紀)世代」を挙げます。1970年代後半~1990年代に生まれ、デジタルネイティブとして育った世代の中から、若く優秀な人材を積極的に採用、育成、確保していかなくてはなりません。

「彼らは幼い頃からテクノロジーに親しみ、男女ともに高い教育を受けた世代です。同時に、彼らは2025年には欧米の労働人口の75%を占める最大勢力でもあります。しかし、彼らを他の世代とまったく異なる存在と思い込むのは誤った考え方です。むしろ彼らが仕事に求めることは、他の世代と変わりません」

仕事のやりがいや意義、その成果やポジションに対する周囲の評価、長期にわたるキャリアの保証と経済的安定、そして一定のワークライフバランスを求める志向は、デジタルネイティブの世代もほとんど変わっていないといいます。

「変わったのは、自分の希望をかなえたいという彼ら自身のポジティブな考え方です。現在はインターネットを通じて、瞬時にさまざまな情報を受け取れます。つまり、自分にとってどんな仕事の機会があるか、どのような勤め先があるかについての情報に容易にアクセスし、自分自身のキャリアを管理できるようになっているのです」

こうしたミレニアル(新世紀)世代は、企業の求人情報などに常にアクセスし、キャリアプランや志向に沿って、すぐに求職や転職行動を起こすことができます。企業の側もこれまでのように「必要になったから」求人するのではなく、常に優秀な人材の情報を収集・分析、蓄積して、必要の際には迅速にリクルーティングに活用するといった取り組みが求められてきます。

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「ミレニアル(新世紀)世代」は今後の人材確保のコア層となっていく

優れたシステムとテクノロジーによるエンゲージメントの促進

この人材確保における重要課題に対して、「人事業務変革のためには、テクノロジーの活用が欠かせない」とラドロウは強調します。

「高い業績を生むワークフォースの基本条件は、依然として変化していません。適切な人材を採用し、適切な業務に専念させること。そして彼らが正しく業務を遂行できるようフィードバックを与えること。また、将来に向けた適切な人材教育のために経験を積ませること。こうした基本的な要件は同じです。唯一大きく変化したもの、それはテクノロジーです」

進化したテクノロジーを活用することによって、これまで戦略的な人事の遂行を妨げてきたいくつもの問題が解決できるとラドロウは語ります。とりわけ複数の国や世代の人間が共存しているグローバル企業では有効です。事実、彼らは日常的にTwitter や Facebook、YouTubeなどのクラウドサービスを利用して、コミュニケーションや情報収集を行っています。

しかし、ここで1つ注意しなくてはならないことがあります。従来の企業におけるテクノロジーの活用は、主にプロセスの自動化といった領域に生かされてきました。人事においても煩雑なプロセスをシステム化することは、効率化に大きなメリットをもたらします。しかし、プロセスの自動化だけでは人事の効率化は決して成功しないのも事実です。

「プロセスの自動化だけでなく “エンゲージメント”=社員がどのように関与するかが非常に重要なのです。社員が会社に対する強い貢献意欲を持って、生産性を高めることが大事です。それには、何より適切でかつ魅力的な人事戦略が根底になくてはなりません。そこで初めて組織の全員に貢献意欲が湧き、事業達成に邁進しようという熱意を呼び覚ますのです」

いくらテクノロジーが進化しても、社員にとって魅力のない人事ではうまくいきません。まず必要なのは、古い人事の改革です。これまで行ってきたことを精査し、見直し、改革することが重要です。このマインドシフトを実現する上で鍵となるのは「シンプル化」だとラドロウは示唆します。各プロセスを見直して、無駄や間違いを取り除いていくことがプロセスの改善につながり、ひいては社員の参加を促すのです。

「具体的には、人事担当者であればすぐに全社員の詳細なデータが参照できること。また、社員同士ならばチームの管理やお互いのキャリア参照に必要な情報にすぐにアクセスできること。そして役員ならば事業計画や予測、意思決定に必要な指標が簡単に得られることなどが条件として挙げられます」。

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それぞれの立場から利用しやすいシステムが人事戦略の鍵

育成ライフサイクルの要は、人材プールの活用とソーシャルラーニング

実際に優秀な人材を獲得し育成するために、どのような取り組みを行えばよいのでしょうか。ラドロウは、①スキル要件の予測・計画、②社内外の人材プールの活用、③社員の能力の維持や開発、の3つが重要だと指摘します。

「その時になって慌てて探すのではなく、日頃から優秀な人材を特定し、確保しておくことが大事です。それには自社のビジネスに今後どのようなスキルが必要になるかを予測し、人材確保のプランをあらかじめ立てておく。同時にIT を活用して、社外の優秀な人材を特定し、自社への勧誘を進めるといった取り組みが求められます」

社内への目配りも欠かせません。自社内の優秀な人材の情報を常に把握してプールしておけば、将来ポジションが空いた時にすぐアサインすることも可能です。また、大学や教育機関との連携を強化しておき、卒業前に学生とのコミュニケーションを図っておくことも、長期的な人材確保という点で重要です。

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採用、育成の全フェーズにわたる視野で優れた人材をプールする

 

もちろん優れた人材を採用できたら、それで完了ではありません。次は社内でのスキル構築をどう行っていくか=育成がテーマになります。ここでも現在、従来とは大きく異なる変化が起きています。これまで社内教育といえば、教育研修プログラムというのが一般的でした。

「しかし企業における教育の大半は、そうしたフォーマルな研修よりもインフォーマルなソーシャルラーニング=社会学習です。つまり、情報を持っている人とつながり、協働する経験の蓄積が重要なのです」

これからはそうしたソーシャルランニングの環境、フォーマルな教育研修、そして e-ラーニングなどと組み合わせたネットワーク型のソーシャルランニングを強化する取り組みが必要になってきます。具体的には、エンタープライズコラボレーションやネットワーキングなどのツールを使って、社員が自らコンテンツをポストし、すべての人が見られる仕組みを構築することが必要です。

「一人ひとりが発信者であり、お互いのスキルやノウハウを絶え間なくシェアしていける体制作りが、人材力の強化、ひいては企業全体のポテンシャルを向上させることにつながります。SAP でもそのための最新テクノロジーを、今後次々に発表していく予定です。詳しくは、SAPPHIRE NOW 2014でのコンファレンスにご期待ください」とラドロウは語り、セッションを締めくくりました。

ミレニアル(新世紀)世代の人材といかに向き合いながら、未来の競争に備えていくかは多くの企業に共通した人事戦略の課題です。次回は、今回ご紹介したディヴィッド・ラドロウの話も踏まえ、世界120カ国に活動拠点を置くSAP自身が実践する人材育成の取り組みについてご紹介します。

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