海外の売上高比率90%、グローバル中堅企業のポーライトが推進するクラウド活用の必勝モデル


image018クラウド活用がビジネスのスピードを支える重要な選択肢として注目を集める中、限られたIT予算と人員で着実な成果を上げる中堅企業が日本国内にも現れ始めています。その代表格ともいえるのが、自動車部品や家電用部品に使われるモーターの軸受などを製造するポーライト株式会社です。海外の売上高比率が約90%を占めるグローバル企業である同社は、海外拠点とのリアルタイムな情報連携を目指してSAP ERPを採用し、Amazonのクラウドサービスであるアマゾンウェブサービス(AWS)上に導入。日本国内の拠点に続いて、2014年4月には中国拠点へのロールアウトを終え、グローバルな事業基盤の統一へ向けた第一歩を踏み出しています。2014年6月19日に開催された「中堅企業グローバル戦略フォーラム~クラウドが導く経営への新たな価値創造~」で、同社の経営改善室 部長の安部良夫氏が語った講演内容は、中堅企業における最先端のクラウド活用の実際を知ることができる貴重な機会となりました。

拡大するグローバルビジネスを支える拠点間のリアルタイム連携

1952年創業のポーライトは、さいたま市に本社を置く粉末冶金製品のトップメーカーです。主力製品である小型モーター用の「オイルレスベアリング(焼結含油軸受)」は世界トップのシェアを誇り、自動車、OA機器、情報AV機器など多くの製品に採用されています。同社の粉末冶金製品は、世界中から高いニーズが寄せられていることもあり、早い段階からビジネスのグローバル展開を進めてきました。現在は日本国内に2工場、海外に8カ所の生産拠点、3カ所の販売拠点を構え、全世界に向けた製品の供給体制を構築しています。

ポーライトがSAP ERPを導入するきっかけになったのは、年々拡大する海外からの売上高比率です。2012年にはその割合が90%にまで迫り、それぞれの拠点が独自に開発したシステムや他社製のパッケージを使用しているという、情報連携が脆弱なIT環境の見直しが避けられなくなりました。そこで同社は、国内と海外の基幹システムを統合し、リアルタイムに情報を共有するための新たなIT環境の具体的な検討に着手します。

「導入を検討した2012年当時は、リーマンショックの影響からようやく脱出し、いよいよ成長戦略に舵を切り始めたところに、東日本大震災、超円高、タイの大洪水などが立て続けに起こり、新たなピンチに見舞われた時期でした。そこで改めて、ポーライトの強みと弱み、外部環境を見つめ直し、重要経営戦略課題として『国内と海外の2本で立つ経営』を目指すことにしました」と安部氏は語ります。

一方、国内を見渡すと会計、販売、在庫、生産管理などそれぞれの基幹業務がばらばらのシステムで稼動し、各業務で不具合が生じていました。本社のサーバー環境は自社の要員のみで管理しなければならず、運用・保守の効率化が課題となっていたといいます。そこで同社は、統合パッケージを検討した中から、グローバル展開を見据えて、多言語・多通貨に対応したSAP ERPを選択。さらにシステム運用基盤としてクラウドサービスのAWSを採用し、AWS上にSAP ERPを導入する決断を下します。開発パートナーには、NTTデータグローバルソリューションズ(以下、NTTデータGSL)を指名して、同社が提案したテンプレートを用いて導入を進める方針を立てました。グローバル展開にあたっては、まずは標準的な業務モデルを日本国内で確立したうえで、それをベースに海外へ展開していく計画を描きました。

経営スピードの加速により、2020年までに売上高を倍増へ

ポーライトがSAP ERPを評価した最大のポイントは、SAP ERPの導入によってもたらされるビジネススピードでした。

「ポーライトは2020年までに売上を倍増させる経営目標を掲げています。その中で、異常発見と原因追究、利益管理、納期回答、原価管理、資金予測などのスピードを上げることが、最終的な財務メリットにつながると考えました」(安部氏)

具体的には、標準原価を採用することで受注・売上時点で損益管理が可能になり、標準との差異をもとに改善活動ができるようになります。また、購買・在庫・販売管理を個別に行ってきた以前の環境では、生産数が担当者の勘と経験で判断され、安全策も含めて過剰な在庫を抱えてしまうことがありました。SAP ERPではリアルタイムに入出荷予定を含めた利用在庫が把握でき、納期回答もスピードアップします。実際、同社では受注、受注予測、在庫、購買発注残から、独立所要計算(MRP)によって見込み調達を実施し、在庫の最適化が実現しています。

さらにSAP ERPの導入で受発注、出荷、購買と同時に利益管理が始まるため、原価管理のレベルアップも実現し、資金予測のスピード化により、資金繰りも効率化されます。グローバル展開においても効果は大きく、品目コードやロット番号の共通化でグループ会社間取引きもスムーズになることが期待できます。

今後、ポーライトが2020年までに売上倍増の経営目標を達成するためには、会社間・業務間連携により資金の回転率を高め、これまで以上のキャッシュを創出していく必要があります。

「例えば、売上高を500億円から1,000億円に倍増させるためには、その目標を達成するための設備投資や運転資金が必要です。売掛金、在庫、固定資産の回転率を高めることで、現状のまま何もしないよりも相当の資金節約が実現し、キャッシュを捻出することが可能になるはずです」(安部氏)

アジアの各拠点へのロールアウトを加速し、グローバル市場での成長を追求

続いて安部氏は、SAP ERPの導入プロジェクトについて振り返りました。今回のプロジェクトの大きな特徴は、AWS上にSAP ERPを構築したことにあります。ハードウェアを自社で保有していた時代は、ハードの保守期限が5年と短く、ミドルウェアやOSのバージョンアップに負荷がかかっていました。CPU、メモリー、ストレージなどのリソースも先を見越して多めに確保する必要があり、当初は稼働率が低い時もフル稼働時の固定費を負担し続けなければなりません。保守要員の確保も中堅企業ではハードルが高かったといいます。

「クラウドでは、スモールスタートが可能になり、リソースの増減も1日単位で対応ができる柔軟性があります。環境構築のリードタイムも短く、運用管理も丸ごとアウトソーシングが可能です。何よりも、グローバル拠点への展開の先手が打てることにメリットを感じました」と安部氏は語ります。

実際にクラウドを活用したことで、インフラがグローバルで共通化され、運用レベルも格段に向上しました。システムの運用保守業務は現在、NTTデータGSLに委託し、ポーライトの情報システム部門はシステム企画などのコア業務に集中しています。また、今後導入拠点が増えるほどコスト軽減効果が現れることを期待しています。

国内におけるSAP ERPの稼動から約1年が経過し、安部氏は改めて次のようにその手応えを語ります。「本番稼動直前は、エンドユーザーがSAP ERPを使いこなせるか、トランザクションデータの移行がカットオーバーまでに間に合うか、インターフェースがテスト通りに動くかといった不安が次々と浮かんできましたが、それらはすべて杞憂に終わりました。SAP ERP導入後は業務そのものが変わり、それまで行っていた無駄な業務がなくなりました。売上高が拡大する一方で、従業員の残業時間は以前より低水準で安定していることからも、生産性が上がっていることが実証されています」

すでに海外拠点へのグローバル展開も始まっており、2013年6月にスタートした中国工場へのロールアウトは2014年4月に完了し、ポーライト海外初となる統合基幹システムが本稼動を開始したばかりです。今後について、安部氏は「台湾、マレーシア、シンガポールなど、日本国内におけるSAP ERP導入の成果を各拠点に拡大して、グローバル市場での成長のビジネススピードをますます加速していきたいと考えています」と抱負を語りました。まさにグローバル中堅企業の必勝モデルともいえる同社のクラウド活用は、同様の課題を抱える多くの中堅企業にとって参考になる価値ある先行モデルです。

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