すべての社員の「グローバル経営資源化」に向けて、SAPが実践する5つの変革


こんにちは、SAPジャパンの鎌田です。これまで2回にわたって、企業の人事業務にまつわる戦略課題について、5月22日に開催された「SAP HR Connect Tokyo グローバルタレントマネジメント 2014 ~多様性社会における適材適所の人選経営~」で公開されたセッションから、いくつかのトピックをご紹介させていただきました。3回目となる今回は、SAPジャパンで人事/人材ソリューションを担当する南和気によるセッション「多様性とスピードをビジネスの力へ ~SAP自身が挑むグローバル人事~」をもとに、SAP社内で実践されているグローバル人材育成に向けた取り組みについてお話をさせていただきます。40年以上にわたって世界でビジネスを展開し、現在120カ国に活動拠点を置くSAPの取り組みが、同様に世界中に多くの拠点を展開し、グローバルビジネスを推進する企業の人事担当者様に共感いただけるテーマとなれば幸いと考えております。

グローバル人材育成の第一歩は、自社の戦略を明確にすること

IMG_0415まず「グローバル人材マネージメント」の本質について、南は「各国各所にいる人材を、労働環境や価値観が異なることを前提に、ビジネスの変化にタイムリーに対応し、配置していくこと」と定義し、その上で「現在、その実現に向けてやるべき課題はほぼ出尽くしています。しかし、これが正解という模範解答は存在しません」と実践における難しさを語りました。

一言でグローバル人材育成といっても、具体的な方向性や施策は各社の事業戦略ごとに異なります。これからグローバル人材マネージメントに着手する企業は、まず自社の戦略を明確にすることが大切だと南は指摘します。ここで重要なのは、「何を成功させ、どこにゴールを置くのか?」です。獲得目標を最初に決めて、そこに到達するための「攻め」と「守り」の2つの方向から個々の施策を詰めていくことがポイントなのです。

「『攻め』は、市場開拓や経営力強化などの利益創出に向けた働きかけ、一方の『守り』は、一般に間接業務に分類される事務処理やガバナンスといった企業の足腰を支える取り組みといってよいでしょう。たとえば、現在の日本企業では40~50代の人が主要な戦力とされていますが、では30代の人材を今後どうするのか。また、本社に対する事業会社のあり方をどうするのか。こういったようにそれぞれ『攻め』と『守り』のゴールを決めれば、具体的な戦略はほぼ決まってくるものです(図1参照)」

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図1:「攻め」と「守り」を決めれば、戦略はおのずと決まる

さらなる成長を目指しグローバル人事強化を進めるSAP

ではSAP自身は、グローバル人材マネージメントの戦略作りと実践にどう取り組んでいるのでしょうか。まずSAPのグローバル企業としてのアウトラインを数値で見てみます。

「SAPは創業以来、42年間にわたってグローバルでビジネスを展開しています。日本でもすでに22年の実績があり、従業員数は世界全体で6万6,061名、120カ国の活動拠点と75カ国の現地法人があります。ユーザー企業は世界で約25万1,000社、日本では約2,000社のお客様がSAPソリューションを導入されています」

こうした実績をふまえて、SAPでは2010年から中期事業目標達成のための、グローバル人事強化への挑戦が本格的にスタートしたと南は明かします。

「創業以来の柱となってきたERP中心のビジネスが成熟期を迎え、この先のさらなる成長のために何をなすべきかという議論が出てきました。その答えは、新規事業の立ち上げです。しかも、それをM&Aで推進していき、2015年までに売上2倍の成長を実現するというものでした」

ERPを主とする既存事業を維持、強化するとともに、新たな分野にビジネスを拡大して、両者のシナジーを原動力に飛躍的な成長を遂げようという戦略です。

グローバル人事の実現に向けた新たな5つの変革

「グローバルで人を育てて動かしていくならば、まず人事がグローバルにならなければなりません。そのための大きな変革が、SAPには必要だったのです」と南は強調します。2015年のゴールを目指した成長戦略の達成に向けて、SAPはこれまでの人事マネージメントを徹底的に見直し、「5つの変革」として新たな方針を打ち出しました(図2参照)。人事部のグローバル組織化とグローバルシェアードサービスの徹底導入を始め、すべての人事マネージメントを世界規模で統合、管理し、グローバルで人的リソースを動かしていくという壮大なプロジェクトでした。

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図2:新たなゴールに向けた人事マネージメント5つの変革

 

この変革のコンセプトに基づく新しい人事マネージメント施策には、6つの具体的な取り組みがあります。グローバルでの組織とシステムの統合による効率化を目指した取り組みが、以下の3つです。

①   グローバルHRオーガニゼーションの設立

  • 人事マネージメントの中核となるタレント開発、採用、報酬の3つはグローバルで統合。
  • 各国現地法人の人事部門はローカルマネージメントの支援に専念する。

②   グローバルシェアードサービスによる業務効率化

  • 世界3拠点にシェアードサービスセンターを設置し、システムはグローバルで1つに統合する。
  • コールセンターへの問い合わせや返答時間、対応状況のモニタリング、ノウハウの共有をシステムで行い、常に最適な人員配置を行う。

③   グローバル人材情報を統合

  • タレントマネージメントや後任者計画、人事考課、報酬管理などに、SAPのクラウドソリューション「SuccessFactors(サクセスファクターズ)」を5言語で使用。
  • クラウドの特性を生かして、シンプルかつ迅速にグローバル展開が可能。
  • 給与計算や労務管理には、SAP HRを使用。21言語で69カ国に展開し、33カ国の給与計算を実行。
  • 年間34万件に上る従業員からの申請業務を処理。

組織統合による合理化と人事マネージメントの効率アップの一方で重要なのが、「グローバルで活躍できるリーダーをどう育成し、適材適所に配置するか?」です。そのための取り組みが以下の3つになります。

④   次世代グローバルリーダー候補を全従業員から選抜

  • グローバルの従業員全員の中のトップタレント5~10%から選抜して育成。
  • パフォーマンスとポテンシャルの2つの軸で評価し、グローバルリーダーの経験を積ませる。

⑤   グローバルグレード、グローバルJD(Job Description)の導入

  • 国、地域、法人を横断し、ポジション要件に合致した適切な人材をアサインする。
  • 複線構造のキャリアパスを可能にするため、専門性と地域性のマトリックスの中で育成していく。
  • なおかつ、早期に複数事業、複数国を経験させるグローバルリーダー育成キャリア開発を行う。

⑥   ダイバーシティへのチャレンジ

  • ダイバーシティ=人的資源の最大活用を行う。
  • 多様性を生かした人材配置と組織マネージメントが、変化への対応を可能にする。

すべての人材にグローバルで活躍できる能力と配置の最適化を

SAPの実際の取り組みをもとに、グローバル規模での人事マネージメントの要件を説明した後、南はグローバル人材の育成を目指す日本企業にとっての新たなチャレンジの一つとして、「人事」としての企業ブランド作りの重要性を強調し、以下のように語り、セッションを締めくくりました。

「グローバルで優れた人材を採用したいならば、ブランディング=企業イメージの確立に向けた取り組みは、大変重要な要素となります。世界に知られている会社にならないと、なかなか優れた人材は来てくれません。製品の質さえ良ければとか、良い仕事をしていれば人は認めてくれるといった、これまでの日本企業にありがちな思いこみを離れ、自社のグローバルでの認知度向上と、優れた人材から見て魅力的な企業イメージの醸成に目を向けることが求められているのです。

人材をグローバル資源化すること。加えてグローバルで活躍できるリーダーの集中的育成。そして、人材の適材配置。これら3点の最適化を進めていくべく、SAPでは今後もさまざまな取り組みを進めていきます。」

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