アイデアとテクノロジーが変えるこれからの社会 ~スポーツに学ぶこれからの可能性~


「Innovation through Simplification ~もう一度輝く日本へ。今、シンプル化で革新が始まる~」と銘打って、東京、大阪、名古屋の3都市で開催されたSAPジャパン国内最大のイベントSAP Forum。7月11日のSAP Forum Tokyoの最終セッションとなる特別講演では、SAPジャパン バイスプレジデント Chief Innovation Officerの馬場 渉による「アイデアとテクノロジーが変えるこれからの社会 ~スポーツに学ぶこれからの可能性~」と題したセッションが行われ、サッカーワールドカップで見事優勝を飾ったドイツ代表チームが実践するデータ活用など、最新のイノベーション事例が紹介されました。

複雑性をシンプル化で解き明かし、イノベーションを生む

R0015446この特別講演はSAP Forum Tokyoの最終セッションとなるもので、馬場は今回のフォーラムの大きなテーマの1つである「Run Simple.」の意味を再確認しながら、従来の“常識”を超えた根本的な業務改革とイノベーションの重要性を改めて強調しました。

こうした SAP の取り組みの好例として採り上げられたのが、タイトルにもある「スポーツに学ぶこれからの可能性」です。これだけ見ると、まるでSAP がスポーツチームを立ち上げるのかと思われるかもしれませんが、ITを通じたスポーツ界への貢献も、SAP が現在大きな力を注いでいるビッグデータ解析によるイノベーションの1つの形なのです。

セッションの冒頭、馬場は独のメルケル首相と英国のキャメロン首相がモニターでサッカーの試合を見ながら、SAP のスタッフによる説明にうなずいているビデオを紹介します。そして、ここに「複雑性をデータ解析によってシンプル化する」「これまでは見えなかったものを明らかにして、新たなイノベーションを生み出す」といった、SAP の試みの具体的な成果が示されていることを明かします。

「ドイツの代表チームは、試合の中でも選手の動きに関する膨大なデータを収集し、この情報をSAP HANAでリアルタイム解析して、コーチ陣やスカウトマン、そして選手各人にフィードバックしています。このサイクルを回すことで、チームの中に技術的、組織的なイノベーションが生まれ、これまでになかった“チームの強さ”が実現されているのです」。

データ解析がドイツ代表チームにもたらしたイノベーション

では、ブラジルワールドカップで頂点に立ったドイツ代表チームは、具体的にどんな仕組みを利用しているのでしょうか。従来のサッカーの試合では、プレーの1つひとつ、たとえばパスが成功したかどうか、またイエローカードが出たといったデータは、スコアラーが試合運びを目で見ながら記録していました。馬場によれば、この人間の目視で得られるデータは1試合でおよそ2,000件程度だといいます。

一方、ドイツ代表チームがプレイする現在の主要なスタジアムでは高精細カメラが導入されており、試合の映像はすべて記録されます。この記録によって、これまで人間の目では不可能だった実に多彩なデータが入手できるようになりました。

「選手のスピードや位置、ボールを持ったときの動き、相手チームの動きなど、あらゆる角度からの情報を収集することができ、1試合あたり約4,000万件ものデータが試合の流れとともにリアルタイムに取得されるのです。」

この結果、これらの膨大なデータの組み合わせによって、たとえば各選手のボールの保持時間=1人の選手がボールを受け取ってから離すまでの時間が長い場合、単にその人間が長く持っているのか、それとも周囲の選手がパスコースを作れず、パスすることができないのかといったことまでが分析できるといいます。試合映像の座標軸のどこを通過したか、またパスの角度の計算などを4,000万件という膨大なデータを掛け合わせながらSAP HANAで瞬時に計算・解析することで、「なぜパスがシンプルに流れずプレースピードが落ちしてしまうのか?」の本当の原因がわかります。

「彼らは超一流の選手ですから、理由もなくボールを持ち続けるはずはありません。その選手らに的確な指示を与え本人たちが納得して行動するためには、これまで把握できなかった事実の確認のためにいかに多くのデータを収集し、いかにそれをシンプルに伝えられるかにかかっています。この分析で試合や練習のたびに選手とコーチへのフィードバックを繰り返した結果、ドイツ代表チームのボールの平均保持時間は2.8秒から1.1秒に短縮しました。こうしたデータ分析の成果は、ビジネスのマネージメントにも十分通用するものです」と、馬場はデータ解析がチームにもたらしたイノベーションの成果を語ります。

「標準化とシンプル化」は日本企業の苦手科目克服の特効薬

続いて馬場は、サッカーを例に説明した「新しい発想で勝つための仕組み」にいて、日本におけるビジネスの観点から説明します。

いろいろなお客様とお話ししていると、日本企業の二大苦手科目として次のことに集約されることに気付きます。『大胆な改革=トランスフォーメーション』と『大胆な発想=イノベーション』です」

時代や市場の変化に応じて、従来から引き継いできた制度や業務プロセスの根本的かつ大胆な発想での変革は、現在のグローバル市場における必須の生き残り要件です。しかし日本企業の多くは、こうしたドラスティックな改革に対して不慣れであり、必要性を感じていてもどのように取り組んだらよいかわからず、現状維持のままというケースが少なくありません。

「重要なのはコモディティ化して競争力を失った自社のコアを、非常識とさえ思われる新しい発想で、スピードを持って変革していくことです。そのためには、いかにビジネスプロセスを標準化してシンプル化していくかが重要です。それが成功すれば、再び新しいイノベーションのサイクルが生まれていくでしょう」

「トランスフォーメーションとイノベーション」を変化の両輪に

さらに馬場は、企業の大胆な変革を妨げる大きな要因として「複雑性」を指摘します。10年、20年のスパンで新たな課題に取り組もうとする場合、必然的に新たなプロセスを導入することになります。それがまた次の問題を呼び起こし、複雑性をさらに上積みしていくことになります。この複雑性は組織が大きければ大きいほど増大し、さらに改革を困難にします。しかし、この解決のヒントが1990年代にBPRやERPの先進的事例として注目を浴びたグローバル企業にあると馬場は指摘します。

「当時一度先駆的なERPユーザーとしてベンチマークされたネスレやIBM、アップル、インテル、サムスン、P&Gといった企業にはもう1つの共通点があります。それは2005年~2007年にかけて、もう一度根本的な業務改革、つまり全体最適、標準化を実施している点です」

こうした先進的な改革を可能にしたのが「シンプル化」です。複雑性を増して非効率的になった組織や業務プロセスを大胆に見直し、たとえば事務処理のようなルーティンワークはシェアードサービス化するといった業務改革を、これらの企業は積極的に進めてきました。

「10年、20年かけて積み上がった複雑性を排除する改革(トランスフォーメーション)の結果、人材や資金を始めさまざまなリソースが解放されます。それらを新しいチャレンジに投入できるようになれば、イノベーションが生まれます。このトランスフォーメーションとイノベーションこそが、これからの日本企業の変化の両輪になるのは間違いありません」

自らも改革と進化を進めるSAPの「Run Simple.

最後に馬場は、新たなトランスフォーメーションとイノベーションの実現に向けて、SAP 自身も進化していると語ります。SAP は近年、長らく続いてきた ERPの世界から大きく領域を広げつつあり、その根底にはシンプル化による改革への大規模な取り組みが存在しています。

「シンプルな会社構造と業務プロセス、そして IT によって次々にイノベーションが生まれ、そのサイクルがさらに早まりスケールアウトしていく。SAP の掲げる『Run Simple.』のスローガンは、まさにその目指すべき方向を示しているといってよいでしょう」

従来からの基幹システムのシンプル化に取り組むと同時に、もう一方では基幹システム以外の新しい領域を“アジャイル、シンプル、クリエイティブ”に拡大していくと語った馬場は、「日本企業の皆様の二大苦手科目の克服に向けて、ぜひ一緒に取り組んで参りたいと思います。どうぞ今後もよろしくお願い申し上げます」と意欲を語り、セッションを締めくくりました。

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