ネスレ社の業務変革を牽引したキーマンに学ぶ、グローバルビジネスで求められるITランドスケープとCIOの役割


東京、大阪、名古屋の3都市で開催する国内最大のイベントSAP Forum 2014。初日となった7月11日のSAP Forum Tokyoの基調講演では、世界的な総合食品飲料メーカーとして知られるネスレ社のCIOとして手腕をふるい、現在は武田薬品工業のCIOを務めるオリビエ・グアン氏が登壇しました。本記事では、同氏がネスレ社で推進したSAP ERPのグローバル展開事例と、武田薬品工業で推進しているIT/IS戦略についてご紹介します。

ネスレの業務変革を成功に導いた標準化のプロセス

IMG_0486「キットカット」「ネスカフェ」などの商品で知られるネスレ社は、今から約15年前に「GLOBE」と命名された大規模プロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトは、国ごとに異なっていたシステムをSAP ERPを使って1つのシステムに統合するものです。ネスレ社は現在、196カ国に33万以上の従業員を抱え、86カ国に447の工場があります。1980年代までは個々の国でシステムを管理していましたが、「GLOBE」を立ち上げた1990年代以降は、グローバルモデルによるガバナンスの強化を目指してきました。オリビエ氏は「重要なことは、新たなITを導入する前に業務プロセスの標準化に着手することです。ITを刷新した後で業務を変える考え方では、必ず失敗します」と語ります。

ネスレ社では、グローバル統合のアプローチを段階的に区分し、まずアジアはマレーシアとシンガポール、欧州はスイス、南米はチリ、ペルー、ボリビアで試験導入を行いました。その後、この3つのリージョンでコンセプトを確認し、ほかのリージョンで使えるかを検討したうえで、標準モデルとしてロールアウトしていく方針を採用しました。

「標準化する領域とローカルに任せる領域を明確に切り分け、柔軟性とスピードを最優先しました。さらに、さまざまなテストを繰り返しながら、ロールアウトの方針も早い段階から検討しました。そこでは、ビジネスを変革するうえでマネージメント層の理解と積極的な関与も非常に重要です」とオリビエ氏は語ります。

このほかにもネスレ社では、導入をスムーズに進めるためのさまざまな工夫を凝らしています。「たとえば、ベストプラクティス・ライブラリーを作り、文書化されたトレーニング、手順書などを提供しました。また、マスターデータを簡素化したほか、グループのインフラをネスレビジネスサービスというシェアードサービスによってサポートする4つのデータセンターに統合し、1つの組織を1インスタンスで走らせることでオペレーションの統一が実現し、小さな地域でも展開が容易になりました」とオリビエ氏は説明します。

2000年初頭のプロジェクト開始から10年以上を経た導入状況としては、現在89のネスレの市場で各業務部門がGLOBEのプロセス、データ、システムを使用して業務を行っています。マーケットのカバー率は95%で、ユーザーは約16万、378のネスレの工場と428の提携先の工場、1,109の流通センター、591の営業拠点で利用されているといいます。オリビエ氏は「グローバル統合で業務改革が進み、業務のシンプル化にとどまらず、組織のシンプル化も実現しています」とその成果を評価しました。

そのほかのテクノロジー戦略としては、4年前にSAP HANAを導入し、従来比で1,500倍ものデータ処理の高速化に成功。SAP Business Warehouse powered by SAP HANAも並行導入し、現在はSAP HANA上でSAP ERPを動かす取り組みも始まっています。クラウドについても内部インフラの仮想化を進めているほか、クラウドソリューションの利用も拡大中です。モバイルに関してはモバイル関連の組織を設立し、6週ごとに1つのソリューションのリリースを目指しているといいます。ソーシャルネットワークについても、直販サイトでの活用を始めるなど積極的です。

共通のシステムとプロセスでITランドスケープをシンプル化

続いてオリビエ氏は、2014年1月から取り組んでいる武田薬品工業における「IS/ITのグローバル化」についても、現在のステータスを説明しました。武田薬品工業はグローバルで売上高1兆6,900億円、全世界で3万人以上の従業員が働くグローバルカンパニー(2013年度)であり、中期戦略として「イノベーション」「ダイバーシティ」「グローバリゼーション」の3つのキーワードを掲げています。グローバルの重要拠点に研究組織を置き、多様な商品ポートフォリオを持つ同社は、積極的なM&A戦略などにより、インフラ、コアコンピテンシーが地域ごとに分散し、ITランドスケープが4つに分散していました。

そこで、オリビエ氏はネスレ社と同様に、武田薬品工業においてもSAP ERPを用いたシステムのグローバル統合を進めようとしています。そこではエンドツーエンドのビジネスプロセスをレビューしながら、グローバルインフラの構築、グローバルソリューションの導入、部門別ソリューションの最適化を図っていく方針です。オリビエ氏は「シンプルなプロセスでユーザーのニーズを満たし、すべての地域でビジネスの標準化を目指しています。その成果はテンプレートとして蓄積しながら、3、4年の計画でロールアウトしていく予定です」と抱負を語っています。

講演終了後には、SAPジャパンの堀田の質問に答える形でCIOとしての心構えについて言及し、「CIOの職務においては、ビジネス部門との信頼関係が非常に重要です。武田薬品工業においても、私は1人ひとりのエグゼクティブと面談して、何に困っているかを詳しくヒアリングしました。その中ではシステム統合への期待の声が多く聞かれました。もう1つはビジネスを予見することです。CIOがテクノロジーを抑止してはいけません。iPadのようなコンシューマーアプリケーションに対する要望にも対応し、ビジネスのシンプル化、イノベーションに貢献し、業務戦略を支援していって欲しい」とアドバイスを送り、講演を終えました。

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