「オムニチャネル対応」をキーワードに、アパレル業界のイノベーションを推進するユナイテッドアローズ


東京、大阪、名古屋で開催されたSAP Forumは、おかげさまで大盛況のうちに終了いたしました。今回は7月11日に開催されたSAP Forum Tokyoのセッションから、株式会社ユナイテッドアローズにおける小売業のイノベーション事例「お客様満足に向けたデジタル化戦略とITイノベーションの実践」をご紹介します。オムニチャネル時代における顧客満足向上と業務効率アップを実現した同社の取り組みをご覧ください。

年々拡大する「オムニチャネル」の顧客層

IMG_1198今年で創立25周年を迎えるユナイテッドアローズは、言わずと知れたアパレル業界の急成長企業です。創業以来、「店はお客様のためにある」を社是に掲げ、順調にブランドを拡大。最近では台湾・台北店をオープンさせるなど、海外展開にも積極的に取り組んでいます。「おかげさまで売上は創業以来25期連続で連続増収。また直近では、3期連続で過去最高益更新を達成できました」と語るのは、同社のIT戦略を牽引する事業支援本部 本部長 兼 情報システム部 部長の高田賢二氏です。

同社は2012年に、100年後に世界に通用する企業ブランドの確立を目指す新ビジョン「UA Vision 2022」を打ち出しました。その中の重要なキーワードの1つが「オムニチャネル対応」です。「これからの小売業ではデジタルとリアルの両分野が競合するのではなく、相互の補完関係を築いていくことが重要です」と指摘する高田氏。同社が200万人を擁する自社ハウスカード会員向けに実施したアンケートでも、実店舗とECサイトの両方で買い物をする顧客の年間購入金額は、実店舗だけ利用する顧客の2.9倍にのぼり、オムニチャネルを積極的に利用する顧客が年々拡大し、すでに一定の割合にまで達していることが証明されています。

ECアクセスの7割に達する「オンラインストアアプリ」の顧客

この調査結果を受けて、同社では実店舗とオンラインストアの格差を極小化したO2Oの仕組みづくりを開始。2013年には全社経営方針の1つに「O2Oリーディングカンパニーへのチャレンジ」を掲げ、実店舗とECオンラインショップを連携させる政策を次々に導入していきました(図1)。

この施策の目玉の1つが、スマートフォン向けのオンラインストアアプリです。2014年1月にリリースされたオンラインストアアプリは、すでに約3万件のダウンロードがあり、ECサイト全体のアクセスのうち7割はオンラインストアアプリ経由だといいます。

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図1:オムニチャネル対応における基本的姿勢

さらに、ユナイテッドアローズが取り組むO2O施策で注目したいのが「物流在庫連動」です。「人気のある商品は、お客様が購入しようと思ったときに品切れの可能性が少なくありません。そこでECサイトの在庫が品切れの場合でも、システム経由で物流在庫を連動できるようにしました。お客様の利便性向上に加え、通販サイトの機会損失を防ぎ、販売効率を改善できます」(高田氏)

また2014年3月から始まった「店頭取り寄せ(試着予約)」は、顧客が希望する商品を希望する店舗で取り寄せて試着できるサービスです。顧客はご希望の商品、取り寄せ先店舗、来店予定日をサイトで選択するだけとあって、特にプロモーションしていないにもかかわらず、予想を上回るお問い合わせが寄せられているといいます。

この他にも、オンラインストアから実店舗の在庫を参照できる「店頭在庫表示」、店頭で顧客が迷って買わずにお帰りになる場合、店員がその商品の品番をカードに書いて渡し、帰宅後にその商品オンラインストアで見直していただく「品番メモのお渡し」など、オンラインとオフラインを効果的に連携させて売上につなげる試みを、同社では積極的に導入しています。

店頭業務の効率化という側面では、タブレットやスマートフォンの活用を進めてきました。「店頭でのスマートフォン活用は早く、2010年くらいからスタッフに iPhone を渡して、自店や他店の在庫検索を行ったり、新入荷の商品の写真撮影に利用したりしています。従来は店頭でお客様に在庫を尋ねられてからバックルームで確認に走る時間がかかりましたが、今は店頭でiPhone からすぐに確認できるので、お客様をお待たせすることもなくなりました。この iPhone からは、売上のリアルタイム速報や自店の売上目標の達成度なども確認でき、モチベーション向上にも役立っています(図2)」(高田氏)

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図2:在庫や売上情報など、店頭からさまざまなデータにアクセス可能

店頭業務の全面的な刷新に向けてRFIDの導入を決定

ユナイテッドアローズのITイノベーションの試みは、O2O連携による店舗販売の効率化、活性化だけにとどまらず、中長期的に見た経営課題の克服といった側面からも進められています。同社はアルバイトが少なく、大半が正社員という特徴的な人員構成になっています。これはスタッフのモチベーションの維持・向上や職務責任という面では非常に有効である反面、長期的に店舗を拡大する中では人件費率が非常に大きな課題になります。高田氏は「これをどうやって吸収していくか考えた場合、いかに1人ひとりの生産性を上げていくかがカギになります。そこで情報システム部としては、テクノロジーを応用して付帯業務をできるだけ削減できる仕組みを作ろうと考えたのです」と語ります。

その具体策として、従来の店頭業務の手法を根底から塗り替えるべく、新たな業務革新のプロジェクトがスタートしました。RFID(Radio Frequency Identification)による店舗業務のイノベーションです。ご存知のようにRFID は商品に取り付けられた小さな無線タグのデータを読み取り、商品識別や管理に利用するシステムです。同社では、膨大な商品の販売や管理をRFIDによって効率化し、店舗スタッフの作業負荷軽減と顧客満足度の向上を図ろうと考えたのです。

RFIDによる業務効率の画期的な改善

同社ではRFIDを店舗業務のうち、①入出荷作業などの店舗付帯業務の負荷軽減、②棚卸業務の効率化・棚卸精度の向上、③会計一括スキャンによるレジ待ち削減・CS 向上の3つに導入しました。

プロジェクトの開始は2010年。2012年中頃からパイロット導入が始まり、およそ1年かけて効果の検証を進め、2013年半ばには本格展開が始まり、2014年7月現在、63店舗で導入が完了しています。

RFIDの導入効果はめざましく、各業務分野に大きな成果を挙げています。第1は、棚卸し業務です。従来は各店舗の棚卸しは1店舗につき7~8人で2日がかりの作業でしたが、今ではスタッフ2人だけでわずか1時間で終わってしまいます。こうした圧倒的な生産性アップをRFIDが可能にしているのです。

この結果、スピードアップによる生産性向上とスタッフのストレス軽減が一気に実現できたと高田氏は評価します。また会計業務では、今までは商品一点ごとにバーコードを読み取っていたのが、RFIDなら何点でも一括スキャンが可能になるため、来店客がストレスを感じることもなくなりました。

エモーショナルな体験を1人ひとりの顧客に提供

最後に、今後の展望として高田氏は、顧客1人ひとりに最適化されたサービスの提供がより強く求められるようになることを強調しました。

「デジタル化時代だからこそ、お客様体験の高度化に向けた IT イノベーションが求められています。これからはよりエモーショナルなパーソナル体験とプロモーションを、1人ひとりに向けて展開していく必要があります。同時に、店頭にはまだまだたくさんのデジタル化されていない情報があるので、それらを逐次デジタル化していく試みを通じて、より戦略的に情報を活用していきたいと思っています」と力強く抱負を語り、この日のセッションを終えました。

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