TOTOが推進する、経営改革と同期したICTイノベーション戦略とは


7月に東京、大阪、名古屋の3都市で開催され、おかげさまで大盛況のうちに終了したSAP Forum。今回は7月23日のSAP Forum Osakaの基調講演において、TOTO株式会社 顧問の中里晋一郎氏が行った「経営改革と同期するICTイノベーション」についてご紹介します。

創立100周年に向けた戦略フレーム「TOTO Vプラン 2017」を策定

R0015585TOTOは、1912年に国内で初めて腰掛式の水洗便器を製造し、1917年に東洋陶器として北九州市小倉で創業しました。東京オリンピックが開催された1964年には日本初のユニットバスを開発して、水まわりの総合メーカーとしての足場を築きます。1980年には「ウォシュレット」で一世を風靡する一方、海外にも進出を開始。2007年には社名をTOTOに改めました。現在は、国内住宅設備事業、海外住宅設備事業、新領域事業の3つをドメインに、人々の暮らしを豊かにする「新しい生活文化」の創造に取り組んでいます。

海外ビジネスは、欧州、アジア・オセアニア、中国、米国の4極で展開し、付加価値の高い商品を、地産・地消で提供するビジネスで拡大を続けてきました。しかし、海外のグループ会社では、日本と異なる業務システムが稼動しており、ガバナンスやグローバル会計、効率化の観点で情報一元化が求められています。

真のグローバル企業への脱皮を目指すTOTOは、2017年に創立100周年を迎えるのを機に、目指す姿とその実現に向けた戦略フレーム「TOTO Vプラン 2017」を策定しました。その目的は、国内住設事業、海外住設事業、新領域事業の3つを縦軸とし、横軸としてマーケティング、サプライチェーン、ものづくり、マネージメントリソースを通貫することで、コーポレートガバナンスの強化することにあります。

「2007年に改正建築基準法が施行されて基準審査が厳しくなり、工期が伸びたことで建築不況が起こります。続けて起きた、リーマンショックで住宅着工数が激減する中、2009年にTOTOグループがあるべき姿を共有するために『TOTO Vプラン 2017』を策定しました。その際、ROE(株主資本利益率)の前にROA(総資産利益)を設定したのがポイントです」(中里氏)

クラウドとERPで経営をシンプル化

「TOTO Vプラン 2017」をスタートさせるにあたり、TOTOが国内住設事業、海外住設事業、新領域事業の3つを同期するために新たに追加した施策が、ICT改革による「経営情報イノベーション」の実現です。そして、ICT改革の3つの柱として、「クラウド」「ERP」「情報部門のアウトソーシング」を掲げました。

「現状の業務システムはあまりにも複雑過ぎるため、クラウドでシンプルにすることを目指しました。情報部門のアウトソーシングは、システムの運用、メンテナンス、改良、開発を専門家に任せて、システム戦略や大型の新規開発に社内のリソースを集約することが狙いです」(中里氏)

ICT改革の1つめの柱としてクラウドを選択した理由として、中里氏は「経営課題と共通する要素が多かったことでした」と説明します。経営面で、事業、生産、部門などの「統合」が課題とされています。また、地球環境に有益な存在であり続けることをポリシーとするTOTOとしては、約1,500台ある物理サーバーを自社で抱えて24時間365日管理し続けることも相反するものでした。また、グローバルビジネスにおいては持たざる経営を標榜しているほか、3.11の震災を機にBCP対策も求められています。

そこでTOTOは、クラウドを優先的に導入する「クラウドファースト」を宣言し、2017年までに80%のクラウド化を目指す中長期プランを描きました。中里氏は「ハードウェアのリース切れに合わせて順次更新していく無理のないスケジュールを立てたことがポイントです。ステップとしては、社内クラウド、社外クラウドと順次進め、2017年までにクラウドで統合するかどうかを見極める予定です。今回の見直しで、1割弱の無駄なシステムが洗い出され、廃止することができた効果も大きいと思います」と語ります。

ICT改革の2つめの柱であるSAP ERPの導入理由については、従来のデスクワークを改め、コミュニケーション基盤として活用が進んでいるディスプレイワークに業務スタイルを変革できること、レガシーシステムで分散していた生産情報管理がSAP ERPで一元化できること、さらには全社の36%の営業利益を上げているグローバルビジネスの基盤を強化できることの3つを挙げています。

SAP ERPの導入では、全事業部がプロジェクトに参画して業務を俯瞰する方針とし、各業務部門で独自に使っている「言葉」をSAP ERPの機能にマッピングし、社内で統一化を図ることにしました。アドオン機能については社内に設置した「アドオン審議委員会」で検討。極力アドオンをなくし、SAP ERPの標準機能に合わせる方針を徹底させています。

「情報は長い目で見ていくことが大切なので、ICT改革を始めるなら早いほうがいいと思います。TOTOにおいては、創立100周年の経営改革をチャンスと捉えてSAP ERPの導入を始めたもので、そのチャンスを何としてでも生かしていきます」(中里氏)

ディスプレイワークへシフトし、企業のブランド戦略を推進

クラウド化の今後について、中里氏は個人的主観も入っていると断りながらも「クラウドガバナンスを整備し、業界、地域、行政などの枠を超えて共有する環境を整えていくべきです」と語ります。

住宅設備業界ではかつて、各社でカタログサイトを構築していましたが、UIなどがすべて個別化されユーザーの使い勝手は悪いものでした。そこで2009年に業界標準のカタログサイトを開設して、ユーザーが迷うことなく複数の企業から注文が出せるようにしています。また、近年ではオープンデータに代表されるように、地域や行政でデータの共用化が進んでいます。オープンなイメージのあるクラウドでも運用を誤るとサーバーと同様、個別化の道に進みかねません。そのため中里氏は「ガバナンスを強化して、標準外なサービスを追加しないこと、利用料金やライセンス形態をわかりやすく整理することも必要です」と指摘しています。

マーケティングに関しては、スマート家電や家庭内エネルギー管理システム(HEMS)、ビル内エネルギー管理システム(BEMS)などの進化により、各種利用情報を直接収集することが可能になる一方、個人情報やプライバシーに配慮することが求められるようになりました。個人情報の扱い方を誤ると、それは企業単独のリスクとして降りかかってきます。

企業のブランドを維持するためには、コミュニケーションシステムも重要です。そこでTOTOでは新入社員から社長まで、すべての社員が利用するメールやポータルシステムも重要視し、デスクワークからディスプレイワークへのシフトを加速化させています。

さらに、ブランド評価においては内部の評価が外部から見た場合より10ポイント近く低くなってしまう現実を踏まえて、「社員が自社のブランドに価値を見いだすためにも、社内のコミュニケーションを重要視していくべきです」と語ります。

企業の情報部門が企業のブランドに影響を与えることを指摘した中里氏は最後に「世界でも日本国内でも、ICTシステムに関する関心は非常に高く、情報部門でも自社のブランド価値を高めることに貢献することができます。そのためにも情報部門の方々には今以上に活躍いただき、日本や世界をさらに元気にしていただきたいと思います」と来場者にメッセージを送り、講演を締めくくりました。

ご質問はチャットWebからも受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

●お問い合わせ先
チャットで質問する
Web問い合わせフォーム
電話: 0120-554-881(受付時間:平日 9:00~18:00)