わずか7年で顧客満足度を国内トップに押し上げたオーストラリア・コモンウェルス銀行のコアバンキングモデル


顧客満足度の向上は、すべての企業にとって共通の最重要課題です。これは金融業界においても同様で、世界中の金融機関が顧客満足度の向上に向けたさまざまな取り組みを進めていますが、その実現にあたってはいくつものハードルが存在し、期待通りの成果を上げることは容易ではありません。

今回は7月11日に開催されたSAP Forum Tokyoのセッションから、独自の取り組みによって国内で最下位だった顧客満足度をわずか7年の間でNo.1に押し上げることに成功した、オーストラリア・コモンウェルス銀行の事例をご紹介します。同行のコア・アプリケーション・デリバリー エンタープライス・サービス担当ジェネラルマネージャーのライアン・ファイ氏の講演は、まさにITを活用した顧客満足度の向上の成功モデルです。

国内最下位に低迷する顧客満足度の回復に向けた決断

IMG_1285オーストラリア・コモンウェルス銀行は、オーストラリア最大の金融機関です。しかし、この状況はわずか7年前まで大きく異なっていました。同行の顧客満足度は、オーストラリア主要4銀行で4位、つまり最下位に甘んじており、この状況の打開が最優先の経営課題となっていたのです。当時のCEOからはトップダウンの形で「顧客サービスでオーストラリアNo.1になる」とメッセージが出され、全行を挙げてのシステム刷新に向けた取り組み“コアバンキング現代化プロジェクト”がスタートしました。

リアルタイムバンキング: 7年前のオーストラリア・コモンウェルス銀行では、日本の銀行では当たり前のように考えられているサービスのリアルタイム化が実現できていませんでした。たとえば、顧客が支店を訪れてATMから現金を入金しても、すぐにオンラインのシステムに反映されない状況でした。また新規口座(定期預金、当座預金口座など)の開設手続きにも2日間の時間を要し、リアルタイムと呼べるサービスではありませんでした。

顧客中心の対応:顧客のニーズを理解し、求められるものを提供することは、言うまでもなくサービスの基本です。ここでは、顧客との関係をモデル化し、システムに取り込むことが重要であるとライアン氏は強調します。たとえば、米国の個人口座では、米国の税法が適用される必要があり、オーストラリア・コモンウェルス銀行ではこうした顧客の状況をプラットフォームとして「見える化」し、個別かつ迅速に対応する必要がありました。

顧客へのオファー:商品の機能を向上し、個々の顧客が必要とする商品をいかにスピーディに投入できるかは、顧客満足度を左右するサービスの要です。たとえば、機関投資家に向けては過去の取引情報に基づいたオファーは非常に有効です。以前のオーストラリア・コモンウェルス銀行のシステムでは、それぞれの顧客に最適化された対応が実現できていませんでした。

産業化:ここで言う「産業化」は、いわゆる顧客サービスの開発から提供までの一連のプロセスを意味しています。共通化された顧客サービス開発・提供までのコンポーネントを用意することで、共通のプロセスの中で柔軟にサービスを開発・提供していくというものです。このプロセスは、商品を顧客に提供するためのディストリビューション機能と連携し、一貫した機能を実現します。

産業化と顧客オファーモデル

同行の「産業化と顧客オファー」モデルは、最下位の層である「商品」、中央の「オファー」、最上位の「ディストリビューション」と大きく3層に分かれています。商品層はさらに2層に分かれ、商品そのものとそれを構成する各機能コンポーネントで成り立っています。ここでは、商品を構成する各要素(たとえば金利、利用する支店、オンライン対応の有無など)をコンポーネント機能として提供し、これらの機能をオン(有効化)/オフ(無効化)することで商品を組み立てていきます。

各コンポーネントを組み合わせることで、1つの商品から複数の商品を開発することも可能です。たとえば、貯蓄商品の1つである「オンラインの貯蓄口座」は、資金の転送や引き落としをオンラインで対応できる商品です。もし、オンラインでの対応が不要な顧客であれば、オンライン対応機能をオフにすれば、単純な貯蓄口座として商品を提供できます。このように顧客のニーズに合わせた商品を自在に組み立てることができます。

そして、顧客オファーとよばれる中間層です。たとえば、商品に特定の価格を設定すると、適切なタイミングで適切な顧客に訴求することができるようになります。この中間層が個々の顧客のニーズに適した、よりきめ細かな商品のオファーの実現を担います。

このようなサービスをサポートしたオーストラリア・コモンウェルス銀行の新たなコアバンキングの仕組みは、2013年6月に無事カットオーバーを迎えました。一方で急速に加速する顧客のモバイル利用に対しても、ライアン氏は「現在では全トランザクションの50%以上がモバイル端末を経由して実行されており、利用者はモバイル向けのアプリケーションを使って、過去には考えられなかったバンキングサービスを享受することができるようになっています」と話します。こうした顧客接点の変化への柔軟な対応も、コアバンキングの刷新によって支えられていることは言うまでもありません。

SAPのアーキテクチャでチャネルを統合

新たなコアバンキングの仕組みを実装した2013年以降のシステム構成と、以前のシステム(2008年~2012年)を比較してその違いをライアン氏は説明しました。

最上位にチャネル層がありますが、以前のシステムでは、何か変更をするだけで大きなコストと時間が必要でした。次にインテグレーション層があり、最下位にデータウェアハウスなどを含むコア層があります。同行では、コアバンキングの刷新に際してサービス指向アーキテクチャ(SOA)を使ったチャネルの統合をSAPで実現しています。

ユーザーが接するチャネルのUI部分は、スマートフォンだけでなく、ウェアラブルデバイスなどを含め、今後さらに多様化することが予想されます。

顧客が何を求めているかということだけでなく、顧客がどのような利用方法を求めているかを把握することも重要です。さらに変化を求める顧客に応えるために、銀行側のシステムもアーキテクチャ全体を根本から見直し変えていくことで、顧客の求めるタイミングで高品質なサービスを提供することが求められています。

最後にライアン氏は、プロジェクトを成功に導いたSAPの貢献について次のように語り、今回の講演を締めくくりました。「ビジネスで発生するさまざまな変化に対応できるソリューションを提供するSAPは、当行が必要とする一貫性を備えた標準化されたアーキテクチャの実現に大きく貢献しています。現在、当行ではSAP CRMを使って顧客との関係を最適化しているほか、保険業務でもSAPのソリューションを活用するなど、コアバンキングの実行と拡張にあたってSAPを最大限に活用しています」

講演に盛り込まれた内容は、あくまでプロジェクト全体のごく一部に過ぎませんが、わずか7年で最下位だった顧客満足度を国内No.1にまで回復したこの取り組み例は、金融業界内でも大きな注目を集めています。本事例のさらに詳しい内容をお知りになりたい方は、いつでもSAPジャパンまでお問い合せください。

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