製造業の「モノ」から「コト」への事業変革。サービス事業の強化の流れ:その⑤ SAP機能(課金/組み立て/社内ソーシャル)


SAP桃木です。製造業の「モノ」から「コト」への事業変革。今回は5回目です。これまでの4回を通じて、この変革の求められる理由や、各部門への影響、ITへの変化、ケーススタディなどを一緒に考えてきました。今回は、SAPソフトウェアの機能についてです。(5回目にしてやっとSAPソフトウェアの内容にたどり着きました)

1回目:なぜ注目されているのか
2回目:各部門に求められる変化
3回目:ITに求められる変化
4回目:ケーススタディー 歯科器具業界を例に

SAPが「コト」事業を支援する機能を提供できている理由

272591_l_srgb_s_glなぜSAPが「コト」事業を支援する機能を提供できているのか考えてみると、以下の点が大きいのではないかと思います。

SAPは25業種向けにさまざまなソフトウェアの機能を提供しています。古くはIndustry Solutionsとして特殊な業界に特化した機能を提供していましたが、SAP ERP6.0以降のSwitching Framework登場以来、一つのSAPの仕組みの中で他業種向けに作られた業種特化機能も使えるようになりました。また、お客様との共同開発プロジェクトも活発化しており、CDP(Custom Development Program)として企業固有機能の開発も数を増やしています。

そのような背景のもと、他業種や他企業で求められた「コト」機能を提供してきた経験を通じて、SAPは「モノ」から「コト」への事業変革で求められる数多くの機能を提供できているのです。

第4回の歯科器具業界を例にしたケーススタディーで見たように歯科器具業界では「コト」はもう普通の話です。このような特定業界や特定企業向け機能を皆様の企業でも使うことができるのです)

紙面も限られていますので「えーSAPでこんな機能もあったんだ」と言っていただけそうな機能に絞って、今回から2回にわたりご紹介を進めたいと思います。

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「コト」を提供するには、単品の「モノ」を売る際とはことなり、複数の商品やオプション品やサービスや金融商品などを組み合わせて提供することとなる。その中で、①料金体系も複雑になるし、②営業担当者は適切な組合せを提案する必要があるし、③関係者が集ってアイデアを練る必要もある。そのような変化を支える機能をまずは紹介する。

①   従量課金を含め多様な料金体系に対応するSAP Billing Revenue Innovation Management SAP BRIM)

「コト」のビジネスでは、製品やサービス、契約、金融系商品など、さまざまな商品を組み合わせて取り引きを行う。「モノ」であれば「単価」×「個数」と単純に計算できるが、「コト」のビジネスはより複雑だ。そして料金体系の見直し頻度も高まってくる。

そんな「コト」の複雑な料金体系を迅速にシステム化するSAPソフトウェアの機能がSAP BRIMだ。

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このBRIMの特徴は、GUIを使って料金プランをグラフィカルに設定できることだ。料金プランを作る際に複雑になりがちな「商品種別ごとに値引きルールを定める」「ボリューム層ごとに単価を変える」「複数の金額の中から最小の金額を結果とする」「利用日数を平日カレンダーベースで計算する」などの数式がすでに部品として用意されている。料金プランの設計者はこれらの部品を組み合わせて、短時間で設定ができるし、後から変更をする際も料金の計算ロジックを一目で把握できる。

これだけ簡便なツールであれば、システム部門だけでなく、営業企画部門など実際に料金プランを考えている現場部門でも設定することができる。料金プランの更新頻度が高くなる中、料金計算ロジックのメンテナンスを現場部門で実施でき、新料金プランのリリースを早めることができる。

検算機能やシミュレーション機能もあり、料金プランを変更した際にどれだけ収益に影響があるかも把握できる。また、モバイル対応もしているので、お客様先で営業担当者が商品や契約条件をモバイル端末上で変更し料金をその場で確認したりシミュレーションすることができる。

このほかにもさまざまな便利機能があるのだが…、料金計算という限られた分野になぜここまで細かな作りこみがされているか疑問を持つ方もいるだろう。その理由は、この機能の生まれと育ちにある。

この機能の生まれは通信業(携帯電話の明細書を見れば、通信業の料金体系がいかに複雑か分かるだろう)。その後、金融業界(保険の特約など)や、物流業(縦×横×高さ×重さ×距離+離島+指定日など)に展開され、製造業でも利用が広がってきていた。すでに高度に複雑化された料金プランを持つ他業種の要件とノウハウが入っているのだ。

お客様に分かりやすい形に料金体系の整理を進めていくと従量課金にもたどり着く。通信業界や公益業界で一般的な従量課金(利用量やお客様の便益に応じた料金体系)が製造業にも展開されている。コピー機業界ではかなり普及しているし、医療機器業界においても10年くらい前から患者数や診療数に応じた料金体系の例が出てきた。今後、デジタルカメラが本体価格を安くし撮った分の従量課金になったり、クラウド上で写真加工や写真共有のサービスを提供することもあるだろう。

ある企業では、このような料金計算のシステムをIf-Then文をもとに開発しようとしたところ100万ステップを超え、メンテナンスも非常に困難だと分かった。SAP BRIMを使えばその複雑な計算処理を半年でシステムを組み上げ、新料金プランにも迅速に対応できる。

②   営業担当者の適切な商品の組み立てを支援するSAP Solution Sales Configuration SSC)

お客様に「コト」を提供するために、自社の営業担当はいろいろな商品や契約を組み合わせることが増えてくる。それらの商品や契約の中には組み合わせて利用できないものもある。それを営業全員が覚えるのは大変である。

SAP SSCは、営業担当者が使うツールで、適切な商品の組み立てを支援するツールである。組み合わせてはいけない商品は出てこないように制御されるし、お勧めの組み合せが提案される。

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この機能の生まれは、ITのサーバーを作っている企業の機能要望であった。パソコンのBTO(Build To Order:発注を受けてから製造・発想すること)をする際に、Windows7であればメモリーは4GBまでが推奨であり、CPUと周辺機器によって冷却ファンと電源の推奨構成が変わってくる、そのようなものをイメージすると理解しやすい。さらにサーバー製品群になるとさらに複雑な制約条件が出てくる。

また、OSとメモリーや、本体とオプションのように主従関係で製品の組み合せを考慮すべきものもあるが、サポート契約などの場合にはサポート契約の対象範囲をn:mで組み合わせる必要がある。

営業担当者がサポート契約の対象製品(複数/単数)を指定し、その後でサポート契約の内容として対象製品(複数/単数)が適切かどうかのチェックを行う必要がある。

SAP SSCでは、このような適切な商品の組み立て支援の中で求められる、事前ルール型 (Windows7→4GB以下)と、事後チェック型(サポート契約対象製品)の両方に対応している。営業担当者はそれらの複雑なルールを覚えなくても、システムが教えてくれ、最適な組み合せの提案ができるようになる。

③   関係者のアイデアを効率的に集め形にするための社内ソーシャル SAP Jam

過去に提案したことのある組み合せや、一般化された組み合せについては、②のSAP SSCで効率的に最適な組み合せを見出すことができる。一方で、個別のお客様向けオーダーメードや、新しい組み合せを考える際には、いろいろな人の知恵を結集する必要がある。その知恵を集めるのは自社の中だけではなく、時に協力会社であったり、時にお客様だったりする。

そのような新しいアイデアを出し、形にしていく作業を効率的に行えるのが社内ソーシャルだ。

SAPが提供する社内ソーシャル SAP JAMは、社内ソーシャルで備えるべき自由なグループ設定、ツイッターのようなつぶやき、いいね!、などの機能を提供している。社内のメンバーだけでなく、協力会社やお客様とも特定のグループを作ってセキュリティを保ちながら自由にコミュニケーションを行える。

SAP JAMの最大の特徴は、ビジネスの各場面で使えるビジネスツール群が充実していることである。

通常のソーシャルでもアイデアを収集することはできる。しかし、複数のアイデアから一つの「コト」へ絞り込んでいく機能が不足している。SAP JAMが提供するビジネスツール群には、投票の機能、順位付けの機能、役割分担表を簡便に作成する機能などのツールが用意されており、ソーシャル上で意思決定や絞込み具体化を進めることができる。

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「モノ」や価格で差別化が難しい業界では、「コト」のビジネスが活発化します。その先達の業界で必要とされた機能をパッケージ化し、みなさまはその機能を利用することができる。そして、それらの機能を段階的に利用範囲を広げていくことができる。といったことがSAPを利用するメリットだと考えます。

今回はちょっと各機能を細かく紹介しすぎたきらいがあり3つだけの機能紹介にとどまりました。次回は、他の注目機能をさらりと紹介したいと思います。