“クラウドファースト”の先駆者として、回転寿司業界で躍進を続ける、あきんどスシローのビジネスチャレンジ


年間で約1,200億円もの売上高を誇り、回転寿司業界でトップを走る株式会社あきんどスシロー(以下、スシロー)では、戦略的なIT基盤の確立を目指して、2012年からAmazon Web Services(AWS)を活用した業務・分析系のシステムのクラウド移行を進めてきました。その過程において、同社は海外での店舗拡大を視野に、新たなグローバル会計の基盤としてSAP ERPを採用し、本社業務の効率化を実現しています。“クラウドファースト”を掲げるスシローのIT戦略について、情報システム部 部長 田中覚氏が6月19日に開催された「中堅企業グローバル戦略フォーラム~クラウドが導く経営への新たな価値創造~」で披露した同社のチャレンジは、今後グローバルビジネスでの成功を目指す多くの企業にとって、貴重なモデルケースとなるはずです。

億単位のデータを分析する「すしデータウエアハウス」をAWS上に構築

image「うまいすしを、腹一杯。うまいすしで、心も一杯。」を企業理念に、回転すしチェーンを全国で372店舗(2014年8月時点)を展開するスシローは、徹底して“すしの味”にこだわる戦略でライバルを圧倒してきました。現在、1日の来店者数は平均30万人、年間では1億2,000万人に達し、年間10億皿ものすしを全国の消費者に提供しています。

こうした理念は、ITに対する投資にも明確に生かされています。同社では鮮度管理を徹底するために、すべてのすし皿の裏にICタグを貼り付けましたが、その結果、どのすしがいつ売れたのかが把握できるようになり、すしの廃棄率が大幅に削減され、常に鮮度の高いすしを消費者に提供できるようになっています。

ITを活用した同社の取り組みは、これだけにとどまりません。ICタグによる単品管理をさらに進化させ、来店客の管理、タッチパネルを使った注文管理と統合した「回転寿司総合管理システム」を全国の店舗に導入し、蓄積されたデータをもとに1分後、15分後の需要を予測しながら、レーンに流すすしの量やネタの種類をコントロールしています。この狙いについて、田中氏は「来店直後と来店してしばらく経ってからでは、お客様の『食欲パワー』が異なるため、テーブルの着席人数やグループ構成、着席してからの時間経過などを加味して供給量を決めています」と説明します。

年間で10億件も収集され、のべ40億件にものぼるビッグデータが蓄積されているデータの分析環境は、すべてAWSのクラウド環境上に構築されています。もともと情報システム担当が5名しかいないスシローにとって、AWSの導入は必然でした。オンプレミスの環境では、年々複雑化するシステムを運用するための人手不足は従来からの課題でした。データセンターを利用したとしても、高額な初期投資が発生するうえに、その後の運用負荷が避けられません。その点、クラウドサービスのAWSなら、導入コストが安く、必要なときに必要なだけリソースを調達できることから、「10億件のデータ分析環境を構築する際も、自社で環境を用意するのではなく、まずはお試しでAWSを使ってみて、そのメリットがはっきりすれば、本格的な利用を開始しようと思って取り組み始めました」と田中氏は語ります。

スシローのIT投資は、常に「うまいすしを、腹一杯。うまいすしで、心も一杯。」という企業理念に照らし合わせて判断されます。そのため、投資対効果に対する経営陣の目は必然的にシビアにならざるを得ません。

「中とろの販促を実施するのも、新しいシステムを導入するのも、どちらも投資であることに違いはありません。社長からは『中とろ販促ならお客様の喜ぶ顔を見ることで効果を実感できるが、システムではその効果が想像しにくい』と指摘されており、AWSがなければ今のスシローのITはここまで進化できませんでした」(田中氏)

分析システムの導入によってAWSの効果が認められた結果、2012年にはAWS上にDWHやBIツールを本格的に導入し、現在は“クラウドファースト”が同社のIT戦略のモットーとなっています。なかでもAWSの効果が最大限に発揮されたのは、2013年にテレビの人気バラエティ番組で採り上げられたときです。オンエア直後の短い時間の中で、サイトへのアクセスが過去最大のアクセスの3倍を超えるPVを記録。このときはAWSのオートスケール機能によって必要なリソースが自動的に確保され、無事持ちこたえることができたといいます。

海外ビジネスの拡大を目指し、グローバル会計に対応したSAP ERPを導入

スシローでは、すしの売上やお客様サービスに直結する業務系システムに続き、本社システムのクラウド移行にも取り組みました。その1つが財務会計システムです。導入の目的は、海外への店舗展開を見据えて、国際会計基準(IFRS)に対応することでした。すでに同社は韓国に7店舗を展開していますが、今後は欧米、アジアなどの各国ですしブームが起こり、多くの需要が発生することが見込まれています。そこで、海外への早期展開に向けて、IFRSに対応するグローバルスタンダードな会計システムの導入を決断したのです。

長年にわたって仕様変更を繰り返してきた以前の会計システムは、担当者でなければわからない属人化、ブラックボックス化が進んでいました。日本と韓国の会計処理も別々で、手作業で行わなければならない会計の統合処理も改善課題でした。これらの課題を解決するために、すでに複数のシステムが稼動しているAWS上にSAP ERPの導入を決断。選定の大きなポイントは、SAP ERPの標準機能の活用によるベストプラクティスの実現にありました。

「会計のような競争力の源泉にならない業務は、自社のやり方にこだわっても意味がありません。それならばグローバルスタンダードのSAPに業務を合わせるのが最善の策です。SAPは値段が高いと思われがちですが、カスタマイズをしなければ、導入コストも運用保守のコストも最低限で済みます。他社のパッケージと比較して、結果的にもっとも高ROIだったのがSAP製品でした。」(田中氏)

導入プロジェクトにおいては、グローバル企業に向けたSAP ERPの導入実績が豊富なNTTデータ グローバルソリューションズをパートナーとして支援を仰ぐことも決定し、同社が提供する会計テンプレートを用いた短期構築を目指しました。AWS上でSAP ERPを運用するメリットについて、田中氏は「まず、サイジングが一切不要なこと、また、ハードウェアの機器調達、設置などインフラの準備が不要で、クイックスタートが切れることは大変大きなメリットでした。さらにAWSならバックアップや監視などの設定も簡単で、DR環境も簡単に構築できます。」と話します。

また、すでにスシローがAWS上に導入しているDWHや分析系システムとETLツールを使って簡単に連携することができ、既存の運用ツールで一元管理できるメリットもありました。

SAP on AWSで会計業務の標準化、システム運用のレベルアップも実現

2013年10月にスタートしたSAP ERPの導入は、2014年3月3日に無事本稼動を迎えました。わずか5カ月という短期導入が実現できた要因としては、システムを利用する経理部門がSAP ERPの標準機能を徹底的に活用する姿勢を貫き、アドオン開発をゼロに抑えたことが挙げられます。SAP ERPとデータベースとの接続には、Windows SQL Serverに同梱されているETLツールを用いて、インターフェースの開発コストも抑えています。

稼動を開始してからまだ数カ月ですが、当初課題としていた会計業務の属人化が解消され、10数名の担当者が同じプロセスで業務を行える環境が整ったことは大きな成果です。さらに、以前のシステムではExcelで管理していた固定資産の管理も、SAP ERP内で完結するようになりました。POSシステム、給与計算システムなどのデータもダイレクトにSAP ERPと連携ができるため、業務の効率化と内部統制の強化が両立できました。

現時点において、SAP ERPは日本の会計処理のみに用いられていますが、次のステップでは韓国の関連会社の会計処理にも適用し、日本のJGAPP、韓国のKGAPP、IFRSの3つの基準で会計処理を行っていく予定です。また、今後はSAP ERPの利用領域を購買管理、マスター管理まで拡大し、業務の標準化とIT統制を強化していくことを検討しています。

柔軟な拡張性を備えたAWS上には、SAP ERPだけでなくあらゆるシステムを構築して、運用効率が高めることが可能です。スシローでは、クラウド以外で稼動しているシステムがまだいくつか残されているとのことですが、これらの統合後も“クラウドファースト”でさらなるビジネスの成長を目指す同社のチャレンジが終わることはありません。

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