SAP 3D Visual EnterpriseとSAP Lumiraを活用した予測分析による予防保守――SAPPHIRE NOWにおけるVarian Medical Systems社の講演より


前回のブログの最後で、本年6月に開催されたSAPPHIRE NOWで発表のあったVarian Medical Systems社の事例発表映像をご紹介しました。今回はその講演の具体的な内容をご紹介したいと思います。

下記は、事例講演の一部を抜粋して翻訳したものです。なお、この日本語翻訳を含む本ブログはVarian Medical Systems社のレビューを受けたものではありません。オリジナルの講演についてはこちらをご覧ください。

Improve Radiation Therapy for Patients with Next-Generation Machines

Varian Medical Systems社は、主な事業が大規模な放射線治療装置です。最新鋭の機械として、TrueBeamというシステムを製造・販売しています。これはがん患者の治療に使われる装置です。

TrueBeamにはさまざまな機能が統合されており、機械自体が回転し、タイミングや強さを自動的に調節して正確に細胞に放射します。患者の呼吸や治療台での動きも自動的に検知します。あらゆる瞬間をスキャンし、得られた情報をシステムに送り、それによってデータを測定してピンポイントで正確な放射線治療を患者に施すことができます。

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TrueBeamシステムは作業で発生するすべてのイベントのログを生成します。どんどん吐き出されるログデータは非常に膨大になります。我々は、このログを何らかの形で有益に活用するためにいくつかのアイデアを出しました。

1つは、ログデータを活用して機械の故障を予測できないか、ログファイルに記録されたイベントの失敗と機械のダウンとに相関性を見つけることはできないか、という点です。これは我々にとって非常に重要です。なぜなら、我々はお客様と稼働率で契約を結んでいるからです。この機械が何%稼働しているかで利益率が変わってくるのです。

2つ目は、部品の信頼性、すなわちどの部品が不良になることが多いのかを見つけることができないか、という点です。現場で使われているすべての機械から毎日データは取得しています。それを使って分析することで、どの部品がより頻繁に故障するのか、故障する前に修理することはできないか。

3つ目は、これらをフィールドサービス部門の業務に組み込めないかという点です。そうすれば、これらの施策は1度だけで終わらず、日常の業務プロセスに組み込むことができます。

4つ目は、ログファイルのデータは2次元の表形式で持っていますが、これを3Dモデルで表現することはできないか、それによって、より効果的、直感的に状況を把握できるのではないか、という点です。さらに、2次元の表形式では見えにくいもの、見落としやすいものを3Dにすれば見つけることはできないだろうか、そうすることでより良い意思決定につなげることはできないだろうか、という点です。

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以上を主なビジネスケースとして挙げましたが、これはほんの一部です。機械のログファイルを使ってできることはまだまだたくさんあると思っています。もしかしたら、機械から生成されるイベントから、すべてのことを予測できるようになるかも知れません。

これらを我々がどう実現したか、簡単に概要をお話しします。これまでに述べたような、現場に設置されたTrueBeamの機械から得られるログファイルには、タイムスタンプなどの情報も入っており、データベースに入れて構造化します。一方で、顧客から得られる情報もあります。機械が故障したときなどにお客様からヘルプデスクにいただく連絡です。連絡をもらうと、我々はフィールサービスエンジニアを派遣します。これによって、機械から生成されたデータと、機械がダウンしたというデータを組み合わせデータベースができます。

筆者コメント: 下図のとおり、分析対象は機械のログ(左側の上部)だけでなく、顧客からの連絡で得られた故障のタイミングや故障したパーツなどの情報(左側の下部)と組み合わせたデータベースを分析することによって、機械からのログと故障との相関が分析できるようになっています(下図)。

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これらをうまく分析する方法はないだろうか、そのソリューションとして、SAP Lumiraを採用しました。SAP LumiraにはSAP 3D Visual Enterpriseの拡張オブジェクトを埋め込むことができます。また予測分析(筆者注: SAP InfiniteInsight)、そしてSAP Work Managerも活用し、何かするときに必要な情報を提供できるようにしました。3Dモデルを参照しながら機械を検査し、不具合が見つかればその通知や問い合わせをその場から送ることができます。

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筆者コメント: SAPPHIRE NOWで約20分の講演のうち、多くの部分でデモが紹介されています《http://events.sap.com/sapphirenow/en/session/9686》。

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以上が、SAPPHIRE NOWにおける20分のセッションの前半、講演部分の概要になりますが、以下に、いくつか補足をします。

■SAP 3D Visual Enterpriseによる3次元表示で直感的に状況把握
下図は2次元データの3次元モデルによる分析のイメージです。機能停止頻度などを数値化し色分けできるため、直感的に状況をつかむことができます。

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■SAP Work Manager(モバイルアプリ)による現場作業性の向上
保守作業員が現場で必要な情報にアクセスしたり、機械の状況や作業についての報告を行うことができます。このアプリには、SAP 3D Visual Enterpriseも組み込まれており、機械の情報や部品、修理の作業手順などを現場で確認することができます。

Varian Medical Systems社では、ログデータから予防保守につながる傾向をつかめないかという発想から、それを顧客によるカスタマーサービスへの問い合わせやサービス履歴と組み合わせ、予測分析に取り組まれています。

予測分析を行わずにランダムに故障対応した場合は、下図のグラフの赤線のように故障対応の数と利益率(=機械の稼働率)は比例しますが、イベントログの予測分析を行い故障の可能性の高い機械を優先的に対応した場合、青線のようにより少ない故障対応で利益率の向上(=機械の稼働率の向上)を実現されています。

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Varian Medical Systems社では、このほかビジュアル化、2次元データの3次元表示、などさまざまな手法を活用し、故障が起こる前に修理を施しダウンタイムを最小限に抑える予防保守を目指されています。

上記で出てきた主なアプリケーションをご紹介します。

SAP 3D Visual Enterprise … 3Dモデルの表示、3Dアニメーションや画像加工などを行うアプリケーション群。詳しくはこちら

SAP Lumira …複数のデータソースを組み合わせ、さまざまなビジュアルで表示・分析するアプリケーション。詳しくはこちら

SAP Work Manager … 保全・保守作業の現場で作業内容の照会や不具合報告などを行うモバイルアプリ。詳しくはこちら

SAP InfiniteInsight … データマイニングソフトウェア。詳しくはこちら