金融勢力図を塗り替える抜本改革とソリューション――第1回:商品中心主義から顧客中心主義へ~基幹系(勘定系)システム大幅刷新の新事実


Man shopping online with credit cardSAPジャパンの鈴木です。世界中の金融機関は現在、大きく変わろうとしています。変わらなければ生き残れなくなりつつあります。これまでの常識では考えられなかったことが技術革新により可能になり、オムニチャネルに代表されるチャネル革新、従来よりもコストパフォーマンスの高い新世代基幹系システム、ビッグデータ活用型マーケティング手法などが現実のものとなっています。またその一方で、金融システム安定化のための規制強化も進んでおり、攻めと守りを同時かつ積極的に行うことが求められています。保守的な金融機関にとっては、とてつもないチャレンジのように見受けられます。

そこで本連載では、「金融勢力図を塗り替える抜本改革とソリューション」と題して、金融業界における課題とソリューション、それに関わるSAPの取り組みなどについて3回シリーズでご紹介していきます。銀行、保険、証券などさまざまな金融機関の課題を見ていきますが、まず1回目の今回は、「商品中心主義から顧客中心主義へ~基幹系(勘定系)システム大幅刷新の新事実」というテーマでお伝えします。

顧客とどのように向き合うのか?

今や銀行などの金融機関と顧客とのチャネルは年々多様化しており、事実上年中無休対応が常識となっています。支店、ATM、電話、インターネット、携帯電話、スマートフォン、コールセンター、モバイルウォレットなどのチャネルを取り揃えるのはもはや当たり前です。しかしながら、形式的には提供できても、チャネルごとのサービスレベルや内容がまちまちであったり、チャネル間の連携が不十分で顧客側のユーザーエクスペリエンスが一様でないことが少なくありません。アクセスという意味での利便性は確かに向上しましたが、必ずしも内容が伴っておらず、オムニチャネルとしては未成熟です。

それは、なぜなのでしょうか? 大きな原因は、従来の金融機関の業務や組織が商品ごとに編成されているために、顧客を基軸に切り替えようとしても、既存の基幹系(勘定系)システムがそのままでは簡単には対応できないことです。もちろん、部分的にシステムを組み替えたり、機能を付加したりすることはできますが、顧客接点における変化のスピードは非常に早く、対応が後手にまわっているケースが少なくありません。

基幹系(勘定系)システム刷新によるベネフィットとは?(海外事例から)

とは言っても、基幹系(勘定系)システムというのはそう簡単に再構築できるものではないですし、仮に刷新するとしても、大変なコストと手間がかかります。ですから、対応に慎重になるのは当然でしょう。しかしながら、基幹系システム刷新によるベネフィットは、皆様の想像以上に大きなものとなりえます。ここにいくつかの基幹系システム刷新及び関連領域に関する優れた事例をご紹介いたします。

1. 東南アジア展開のドライバーとして 某銀行の事例

オーストラリアに本社を置くある銀行は、アジア太平洋地域での大型リージョナルバンクを標榜し、最近では、東南アジア市場への積極的な参入を行っています。その際、東南アジアでのリテールオペレーションは、顧客至上主義でなければならないという考えから、24時間365日対応のオムニチャネルと、それを支える効率的運営、顧客分析を実現するシステムを構築しました。あらゆる顧客接点の採用・連携を行うと同時に顧客サービスのセルフ化も可能な限り進め、行内の事務の効率性も確保しています。

これらの展開において、同行はSAPのオムニチャネルプラットフォームを採用しました。これによりチャネル横断での顧客情報共有を可能にし、お客様へ全チャネルを通じて一貫したカスタマーエクスペリエンスの提供を実現しています。どのチャネルからのアクセスに対しても、お客様一人ひとりの状況に合わせた適宜のサービスや商品のオファーを可能としています。

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24時間365日対応の為には複数チャネルでの対応が不可欠です

2.顧客満足度トップへの秘策 オーストラリア・コモンウェルス銀行(CBA)の事例

オーストラリアに本社を置く、オーストラリア・コモンウェルス銀行(略称:CBA)は、オーストラリアの四大銀行のなかでは、顧客満足度が最低という、改善すべき課題がありました。

そこで、基幹系(勘定系)システムの刷新も含め、商品を中心とするアプローチから顧客を中心とするアプローチに大きく舵を切ることにしました。そこで現状の打開に向けて、基幹系や情報系のランドスケープをSAPで刷新したところ、特に基幹系では新商品の投入スピードが劇的に改善しました。また、商品の開発スピードを高めると同時に、商品ラインナップのシンプル化にも取り組み、もともと600以上あった商品を18に整理しました。しかも、これは単なる商品のリストラではなく、コアとなる商品の価値を再定義し、お客様のプランや個々人のニーズ・嗜好に合わせて商品をカスタマイズできるようにしたのです。

その結果、顧客満足度は向上し、なんと四大銀行中トップとなりました。それだけでなく、収益性指標(営業経費/営業収入)が大幅に改善し、効率性も向上しました。効率が上がった理由には、もちろん顧客あたりの効率が上がったこともありますが、システム切り替え時に発生したTCO(総所要コスト)削減効果も含まれています。

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コモンウェルス銀行:コアバンキングプログラムが顧客満足度向上と柔軟性の向上に貢献

また、CBAでは新規顧客を効率的に開拓するために、顧客動向を随時把握し、最適な営業活動を促進するための情報武装をSAPと共に行いました。顧客単位での需要やニーズの把握、エリア別・商品別の効率的なチャネル選定、月次サイクルでの計画管理からリアルタイムでの計画管理への変更、リアルタイムでの営業活動制御などです。リアルタイムでの営業活動制御というのは、口座の増減情報と残高の増減情報をSAP HANAを用いてリアルタイムに把握、可視化し、その情報をリアルタイムでコールセンターや担当営業のアクションにつなげるといったものです。このような活動がCBAの業績向上に寄与したことは、言うまでもありません。

参考:わずか7年で顧客満足度を国内トップに押し上げたオーストラリア・コモンウェルス銀行のコアバンキングモデル

3. 新商品投入のスピードアップ ドイツ銀行の事例

またドイツ銀行(本社:ドイツ)では、リテール業務におけるサービスを統一し効率を高めるために、銀行のシステムランドスケープを見直し、基幹系(勘定系)をはじめとする主要なシステムを可能な限りすべてSAPで置き換えました。これにより、オペレーションの標準化と、常に顧客行動をあらゆるチャネルで把握できることにより、顧客サービスの差別化を実現しました。定量化できる成果だけでも、以下のようなものがあります。

  • 取引あたりのコストが25%低減
  • 既存商品を整理し商品数を63%削減
  • システム間インターフェースのシンプル化(60%削減)
  • 新商品を市場投入するまでの時間を30%短縮

コスト削減面ばかりでなく、新商品の市場投入までにかかる時間を短縮できたことは、売上拡大に向け、非常に重要な成果となりました。

4.基幹系システム刷新がグローバル競争力の源泉に 保険会社の事例

さて、ここで保険業界に目を転じてみましょう。保険業界では、今、基幹系の見直しがトレンドになっています。銀行と同様、これまではメインフレーム汎用機の上で個々に大きなシステムを作ってきましたが、コスト削減のプレッシャーと、商品投入スピードの観点から、それでは対応が難しくなってきているのです。SAPでは2013年に買収したCamilionの保険商品管理ソリューション(FS-PRO)などを投入し、保険会社の基幹系コストの削減や商品投入スピードの向上に寄与しています。いくつか例を見てみましょう。

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SAP保険ソリューションの全体像

アメリカに本社を置くある保険会社では、FS-PROを導入することにより、商品開発のスピードを早めました。具体的には、新商品の開発スピードを50%以上向上させ、年あたりの商品投入数も2倍以上に増加させています。また、商品開発に関わるIT人員を20%以上削減することができたので、収益力アップにもつながりました。

一方、アジアの事例としては、韓国のある大手保険会社が、グローバルトップ10の保険会社になることを目標に、基幹系システムの全面刷新をSAPで行っています。このようなケースに共通して見られる、保険業界の競争力の源泉は、基幹系システムのレガシーシステムからの置き換え、特に商品投入スピード向上を目指した商品管理システムの改善です。そしてこのような認識は、グローバルに共有されつつあります。

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保険商品管理ソリューション(FS-PRO)

基幹系システムあるいは関連周辺システムを刷新することにより得られるベネフィットは、大きく「お客様個々人のニーズにあったサービス提供による顧客満足度向上」「市場動向などの変化への迅速な対応による収益向上」と「効率性やTCO削減によるコスト削減」の3点に集約できます。もちろんその前提として、商品中心主義から顧客中心主義へ大転換することにより、顧客に立脚した形のプラットフォーム上でビジネスを行うことが、今後の競争優位性を左右することになります。SAPが金融機関向けにご提供するソリューションは、このような目的に合致した、まさに「攻め」と「守り」を同時に解決できるソリューションです。これにビッグデータを活用したマーケティングなどの「応用領域」を組み合わせることにより、より強力なオペレーションプラットフォームを構築できるでしょう。

次回は、今取り上げた応用領域であるマーケティングに着目して、「機械学習が生み出す驚異のマーケティング」というテーマでご紹介します。

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