10年間にわたる業務改革とSAP HANAの活用で究極のシンプル化を実現した京セラドキュメントソリューションズ

作成者:SAP編集部 投稿日:2014年8月28日

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生産や販売のグローバル化が著しく進んでいるハイテク業界。ビジネスモデルも製造した製品を売る「モノ売り」から、製品だけでなくサービスも含めたソリューションを提供する「コト売り」へと変化し、取り巻く環境の複雑化も進んでいます。ビジネスが急速に変化を遂げていく中、ITだけでなく業務プロセスもスピード感を持って対応していかなければなりません。その中でも、京セラドキュメントソリューションズは、SAP ERPによるグローバル統合に早期から着手し、2013年にはSAP HANAによるビッグデータの分析基盤を確立し、新規ビジネスモデルの創造に取り組んでいます。7月23日に開催されたSAP Forum Osakaでは、同社の執行役員で事業推進本部長を務める西口年彦氏が、京セラドキュメントソリューションズにおける「シンプル化」への挑戦について講演しました。

文化の異なる事業会社の統合による2つの業務システムが稼働

DSC04209京セラグループの中で高い売上比率を占める、プリンター、複合機、ドキュメントソリューションなどの研究開発・販売を手がける京セラドキュメントソリューションズ。研究開発においては、大阪と東京のR&Dセンターを中心に米国、ドイツ、中国、フィリピン、また生産拠点として大阪、三重、中国、ベトナム、チェコに展開しています。販売においては米国、欧州・中近東・アフリカ、アジアに31の直轄販社を有し、140カ国以上の地域で販売活動を展開。海外の販売比率が87%を占めるグローバル企業です。近年は、ハードウェアとソフトウェアにコンサルティングや運用サービスを付加して提供するソリューション提案型のビジネスモデルに舵を切り、ドキュメントソリューションプロバイダーとしての地位を確立しています。

京セラドキュメントソリューションズは、業務用の複写機を製造していた三田工業を2000年に京セラのプリンター事業部門が子会社化する形で誕生した経緯から、2000年の時点では2つの企業の業務システムが並行稼働していました。そこで、2002年にプリンターと複写機の2つの事業を統合し、2004年に日本国内からSAP ERPを稼働させ、システムの統一を図りました。2007年から2008年にかけては、SCM改革を実行し、さらに2013年にはSAP HANAを導入してグローバル統合データベースを構築しています。

「業務改革は3つのフェーズに分けて行いました。1つめは事業統合によって発生した異なる業務プロセスの共存を解消することです。2つめはグループの独自性を確保しながら、SCMのオペレーション基準を合わせること。3つめは業務改革領域をマーケティング関連からグローバル人材・ガバナンス関連まで幅広い領域に拡大し、共通の言葉の言葉で意思疎通を図ることです」(西口氏)

シンプルなシステムを目指し、10年にわたる業務改革を断行

業務改革の第1フェーズでは、2つの事業のオペレーションを統合し、同じ土俵に立つためのプロジェクトを推進しました。事業統合のシナジーを最大化するため、業務プロセスの統合、連結在庫の半減、企業インフラとしての情報システムの統一などを目標にかかげ、具体的に12のテーマを設定して課題をクリアにしていきます。

「グローバル規模で品番コード体系を統合・標準化し、基幹業務プロセスの統合とSAP ERPによる基幹システムの統合を、本社を中心に行いました。しかし、2004年から2006年の時点では、グローバルでは依然として独自のレガシーシステムが稼働していたため、実績の集計はマニュアルの域を出ず、SCMの改革が必須でした」(西口氏)

そこで、第2フェーズでは各社の文化を生かすために緩やかな統制をかけながら、SCM改革を進める取り組みを始めました。「改革の狙いは、SCMプロセスという道具だけでなく、新しい企業文化の創造につながる意識改革を実現することにありました」と西口氏が語るように、オペレーションの基準を標準化することと、社員の意識をデータに基づくオペレーション志向に変えることを目指してプロジェクトを進めていきます。

具体的にはPSI(生販在)計画の意義や、属人性を廃した標準プロセスで計画を作成する意義の理解を社内に求め、販売会社と本社のPSI計画プロセスを標準化します。続いて、この標準プロセスに基づき各社で作成されたPSI計画を集約して販売会社、地域、グローバルの各階層でPSIの実績と将来計画をモニタリングして、その中から改善点を探し出しながら、よりよい業務プロセスへと進化させていきました。

それと並行して、海外の販売会社のシステムを順次SAP ERPに置き換える作業を進め、さらにSAP Business Warehouseを導入して実績の統合データベースとして稼働させていきます。その結果、実績の即時集計が実現し、PSI計画を実際の生産業務で適用することが可能になりました。2008年には生産拠点に生産計画システムを導入し、製品供給リードタイムと連結在庫を半減させることに成功しています。

2012年から着手した第3フェーズでは、顧客との接点を大切にしながらグローバルでスピード感あふれる業務を行うための「共通の言葉作り」に取り組み、営業プロセスの標準化と支援システムの開発を進めました。

「グローバルビジネスでは、お客様を含めたサプライチェーンの質とスピードが業績に影響します。そのため、経営の意思が現場に伝わること、現場の実態や意思が経営層まで上がってくることが重要となります。そこで、双方向のコミュニケーションを実現するためのシステムとして、グローバルCRMシステム『FOCUS』を自社開発しました。2013年8月以降、順次販売会社に導入を進めており、今後はグローバルマネージメントのインフラとして活用していきます」(西口氏)

顧客との接点を重視し、SAP HANAで構造化データ・非構造化データを分析

顧客との接点を重視して10年以上にわたって業務改革を進めてきた京セラドキュメントソリューションズは、さらなる進化を目指して2013年にSAP HANAを統合データベースとして導入しました。SAP HANAにはSAP ERPの実績情報、FOCUSにある案件情報、サービスシステムの情報、顧客のオフィスで稼働しているプリンターや複合機から送られてくる情報など、構造化されたデータを順次蓄積される計画です。さらに、SNSやコールセンターに寄せられる顧客の声などの非構造化データも統合データベースに順次蓄積される計画です。

SAP HANAに蓄積した構造化データや非構造化データは、データマイニングツールやテキストマイニングツール、レポーティングツールなどを利用して短時間で分析することが可能です。西口氏は「当社ではボイス・オブ・マーケット(VOM)と呼んでいるビッグデータを活用することにより、一層お客様を理解し、私たちの行動を変える示唆を得ようとしています。」と語ります。

しかし、実際にデータ分析を実行してみると課題が浮上しました。それはデータ品質です。SAP ERPをグローバル拠点に展開する際、データ標準やデータ活用を念頭に品目階層やマスターの標準化を進めてきたものの、SAP ERPの展開を終えて実際にデータ集計を開始してみると、標準運用が徹底されてない領域があることが確認されました。

「本格的にデータ分析に活用するためにはデータ品質を高めることが重要です。そこで、過去データに関しては変換や読替処理でデータ品質を均一化しました。あわせて将来のために、標準化領域を拡大したり、ガバナンスを効かせたりしながら、未来のデータ品質を担保する取り組みを進めています。しかし、業務を変えない限りデータ品質も完全には向上しないため、データ品質の確保には現場を巻き込んだ地道な活動が必要になります」(西口氏)

最後に、これからのITへの期待として西口氏は次のように語りました。

「SAP HANAなどの登場で高速処理技術が進歩した結果、ITの目的は売上げ拡大、顧客満足向上、新規ビジネスモデルの創造といった、外向きの競争、攻めの方向に変化しています。約10年間の業務改革によって、内部の組織力の強化を終えた当社においては、ビジネスの競争力に示唆を与えてくれるITになることを期待しています」

2004年のSAP ERP国内導入から10年にわたって業務改革を進めてきた京セラドキュメントソリューションズ。試行錯誤の中で、IT要員の士気を高めながら、シンプル化を実現した同社の取り組みは、多くの参加者の共感を呼びました。

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