オンプレミスとクラウドの連携――第1回:ハイブリッドへの移行において、忘れてはならない3つのポイント


SAP blog_MW_01こんにちは、SAPジャパンの奥野です。既存のIT資産をオンプレミスからクラウド環境に移行し、激しい変化に適応しようとする企業の事例は増えつつあります。ですが、自社のビジネスに合わせて作り上げられたオンプレミスのIT資産を一気にクラウド環境に移行するという大決断をされるお客様はまだ稀です。では、どのような方法やステップでクラウド環境に移行したらよいのか?一部のシステムだけをクラウド環境に移行し、オンプレミスと共存させた「ハイブリッド構成」の可能性を通じて、スムーズなクラウド移行とシステムの最適化を実現させる方法についてご紹介していきます。

クラウド移行の大半は「ハイブリッド構成」からのスタート

ところで「ハイブリッド構成」といっても、連携の実装パターンはいくつか考えられます。

  1. 本社のERPはオンプレミスで運用しつつ、子会社のERPはお客様の環境をプライベートに管理するクラウド環境とSAPによるサポートを兼ね備えたSAP HANA Enterprise Cloud上に置く。旧来のマルチインスタンス環境における、一部のインスタンスを単純にクラウド上に移行した形態。
  2. たとえば人事管理で、コアとなるHRの機能はオンプレミスで運用しながら、タレントマネージメントの部分をクラウド型の統合人材管理アプリケーションであるSuccessFactorsで実現する。あるいは、クラウド型のCRM製品であるSAP Cloud for CustomerとSAP ERPを連携する場合のような、オンプレミスのアプリケーションとSaaSのハイブリッド形態。
  3. クラウドソリューション同士を連携させること形態。
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図:オンプレミスとクラウドのハイブリッド構成パターン

このように一口にハイブリッド構成といってもバリエーションがあり、求められるさまざまな連携パターンをどう効率的に実現していくかは、クラウド移行を考えている企業にとって重要な問題です。ここからは、主にオンプレミスとクラウドの連携技術について考えていきたいと思います。

オンプレミスとクラウドに必要な「連携」のポイントとは?

オンプレミスとクラウドを「連携する」と一口に言っても、そこにはさまざまな要素が含まれます。なかでも最重要となる3つの側面から詳しくみていくことにしましょう。

①   データ連携:連携するシステム同士が互いのデータ形式を理解できる

最初に、データ連携について考えましょう。そもそも連携すべきデータとはどんなものなのか?わかりやすい例の1つが「マスターデータ」です。

オンプレミスのERPとクラウドのCRMを連携する場合、両システムの各項目があらかじめ同期されている必要があります。たとえば、「顧客」ならばSAP ERPの“Customer”とSAP Cloud for Customerの“Accounts & Prospects”とが、また、「品目」ならばSAP ERPの“Material”とSAP Cloud for Customerの“Products”とが同期されている必要があります。

こうしたデータ連携は、 システム間でデータの受け渡しができればよいという単純なものではありません。双方のシステムのデータ構造が異なっていれば、そのデータ構造を読み替える(マッピング)必要があります。また、場合によっては顧客コードや品目コードの読み替えが必要となるケースも考えられるでしょう。つまり、データ連携とはデータを対向システムが理解できる形式に変換した上で届けることを意味しているのです。

②   プロセス連携:複数のシステム間でビジネスプロセスをシームレスに連携

もう1つの連携が必要な分野は「プロセス」です。業務プロセスの連携とは、データを片方のシステムから他方のシステムにただ送信すれば終わるような単純なものではありません。一連の業務プロセスの流れの中では、さまざまな処理が複数のシステムをまたぐ形で何度も呼び出されます。

たとえば、販売プロセスではクラウド上のCRMで管理されるOpportunityから、SAP ERPのQuote Request(見積依頼)が見積のたびに呼び出され、作成された見積もりはOpportunityと関連づけられます。案件を受注すると、SAP ERPに対してSales Order Request(受注オーダーリクエスト)が呼び出されて受注オーダーが作成されるとともに、元となった見積りやOpportunityと関連づけられます。プロセス連携では、このようなビジネスプロセスがエンド・ツー・エンドで、シームレスかつリアルタイムに連携されている必要があります。

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図:エンド・ツー・エンドのマスターデータ同期とプロセス連携の例

③   ユーザーと権限の連携:システムのセキュリティ保護に関わる重要点

ユーザーと権限が連携されていることも重要です。これは、単純なユーザビリティの問題ではありません。SAP ERPは基幹システムですから、不適切な権限の管理はビジネス上の重大なリスクにつながる可能性があります。ミッションクリティカルシステムの連携を図る上で、ユーザーと権限の連携はセキュリティに関わる重大事なのです。

たとえば、仕入先を登録できる人に「登録した仕入先に対して発注行為を行う権限」も同時に与えられていた場合、不正な会計処理の温床となる可能性があります。もし企業がこうした業務処理をSAP ERPだけを利用して行っている場合は、SAP GRCソリューションを利用することで、こうした危険な権限設定を検出し、対策を練ることができます。

しかし、これがマスター登録と発注業務とをそれぞれオンプレミスとクラウド上のシステムで別々に行っており、なおかつ2つのシステム間でユーザーと権限の連携がまったくなされていない場合は、危険な権限設定を簡単に発見することができなくなる懸念があります。

このように、オンプレミスとクラウドの連携には考慮すべき3つの側面があり、これらをいかに高品質に実現していくかが、オンプレミスとクラウドの連携を成功させるためのカギとなります。

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図:ガバナンス、リスク、コンプライアンス全般をカバーするSAP GRC

オンプレミスとクラウド連携に求められるビジネス上のニーズに着目

オンプレミスとクラウド連携においては、既存のビジネスプロセスを十分に理解・考慮したうえで検討する必要があります。当然ですが、IT担当者とビジネス担当者では、求める要件が異なります。

IT担当者にとって、セキュリティは最優先の課題です。クラウド上に重要なビジネスデータを格納する場合、データの保護にはオンプレミス以上に慎重になる必要があります。また、オンプレミスとクラウドをまたいだ複雑なランドスケープを、どのようにしてエンド・ツー・エンドで監視するかも悩ましいポイントです。ハイブリッド構成のシステムは、すべてがオンプレミスのシステムに比べて、ネットワークが複雑になる傾向があります。このため単体の障害点をなくすとともに、いかに効率的な監視を実現させ、万が一の場合には迅速な復旧を行えるように備えておくかが大きな課題となります。

一方、ビジネス担当者の主な関心事は、「リアルタイムでビジネスプロセスが連携すること」「マスターを含めた業務データの一貫性が担保されること」「優れたユーザーエクスペリエンスが提供されること」といった、ビジネスの側面からの改善・獲得項目です。また、必要なときに必要な機能が使えることも、ビジネス担当者には重要な要件です。せっかく短期間で導入できるのが特長のクラウドソリューションを選択したのに、肝心の既存システムとの連携に時間がかかってしまっては意味がありません。どれほど短期間で連携が完了するかにも、ビジネスユーザーは高い関心を寄せているのです。

ここまでのお話で、理想的なハイブリッドシステム「使える&使ってもらえるオンプレミスとクラウド連携」の実現には、ITとビジネスの双方の要件を加味した上で、個々のケースごとに最適な連携技術を選択していく必要があることがおわかりいただけたと思います。次回からは、具体的な連携技術のポイントについて考えていきたいと思います。

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