プラットフォームのシンプル化。それがイノベーション具現化の絶対条件 ~SAPが見直した3つのポイント~


「プラットフォーム&クラウドカンパニー」に生まれ変わる。現在、SAPは既存のお客様ニーズに応えたいという強い思いから、インフラ/クラウド関連のさまざまな取り組みを進めています。その中でも本記事でご紹介したいのが、SAP HANA Enterprise CloudとOne Serviceです。この2つのサービスについて、7月11日に開催されたSAP Forum TokyoでSAPジャパン サービス事業本部 サービスソリューション本部 Cloud & Software Related Services 統括部長の高山勇喜が講演した内容をお伝えします。

SAP HANAを月額課金ライセンスで提供する新たなサービス

IMG_9903高山はまず、これまで提供してきたSAPのソリューション、サービスについて、お客様にさらなる価値を提供するために見直した3つのポイントを挙げました。

まず1つめは、ライセンス体系に関するものです。高山は「SAPはこれまで、『ソフトウェアのライセンスは一括購入してください』『保守料金は年間一括払いでお願いします』という方針でお客様に説明をしてきました。また、標準機能の中で期待通りのレスポンスが得られなかったものに対しては、アドオン開発を実施していただくといった面で、お客様に負担をかけてきたことも認識しております。こうした背景からSAPは、SAP HANAという超高速なプラットフォームをご提供し、さらにそれを月額課金形式でライセンスをお使いいただけるスキームを、お客様の選択肢の1つに加えることにいたしました」と説明します。

20年前に構築した最先端の設備も、今となっては最新のトレンドに対応できていないことがほとんどです。住宅に例えるなら、最新の技術を駆使した災害対策や太陽光発電など、20年前には今ほどは重要視されていなかった事項への多くの対策が求められるようになっています。これらの新たな課題解決に今から取り組むのであれば、古い家のリフォームを検討するのではなく、「建て替え」を検討するのも1つの選択肢です。

「システムの場合も同様で、20年前の古いシステムを我慢して使い続けるより、新たに再構築するほうが得策な場合があります。その際のプラットフォームの選択肢としてお考えいただきたいのが、インメモリー技術を採用したSAP HANAであり、さらにクラウド上でSAPがその本番機をお預かりして、維持運用できるSAP HANA Enterprise Cloud(以下、SAP HEC)です」(高山)

世界第6位の売上を誇る自動車部品メーカーであるフランスのフォルシア社は、5年前にSAP ERPを導入しましたが、MRPの処理には1日20時間を要していました。既存のデータベースでは時間がかかり過ぎると判断した同社は、データベースをSAP HANAで一新し、MRPの時間を1時間未満に短縮することに成功しました。SAP HANAがもたらすビジネスバリューについて、フォルシア社のCIOは「完成車メーカーからのフォーキャストは数週間前にもらえますが、確定オーダーが来るのは4時間前です。そのため、MRPは前日の在庫状況をベースに実行せざるを得ず、過剰在庫や在庫不足が発生していました。SAP HANAを導入した後はMRPが1時間で終わるようになったので、確定オーダーが届いてからMRPを回すことが可能になり、過剰在庫の悩みを解消することができるようになりました」と高く評価しています。

参考記事:しなやかな需要対応が競争力を高める――SAP HANAが実現する高速MRP

SAP HECをご利用いただく際のライセンス体系は、いたってシンプルです。SAP HANAのライセンスを初回一括購入(BYOL:Bring Your Own License)で利用する従来モデルのほか、SAP HANAの本番機をSAP HECに預けていただくことを条件に、SAP HANAのライセンスを月額課金(サブスクリプションモデル)で利用できる新しいモデルも用意しました。これについて高山は「お客様は用途に応じて、より柔軟に選択いただけるようになりました」と説明します。

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SAPがオーナー管理する完全プライベートクラウドでお客様の負担を解消

2つめは、システムを利用・運用するための環境提供に関するものです。高山は「多くの日本のお客様のビジネスが急速にグローバル化していることを背景に、『グローバルテンプレートの構築スピードを極限まで高めたい』『古くなったグローバルテンプレートをクイックに再構築したい』といったご要望が非常に良く聞かれるようになっています。これまでのSAPはこうしたお客様の声に完全にお応えできていなかった訳ですが、この在り方を見直すところから生まれたのが、SAP HECなのです」と強調します。

SAPが100%オーナー管理する完全なプライベートクラウドサービスであるSAP HECでは、インフラの提供以外にも、日本人のプロマネがついたり、SAP自身がパッチを適用したりするマネージドサービスも合わせて提供されます。また、SAP HECでは最短で3年間(最長5年間)の契約期間でご提供する月額課金のモデルが提供されており、 3カ月前の通知をいただければ任意のタイミングでの契約解除も可能です。

契約書上のSLAとして、PaaSレイヤーに対する月次単位での99.5%を確保。SLAペナルティ条項を用意しており、月次単位でSLAを測定し、SLAを満たせていなかった場合には、翌月のご請求分から金額控除が実施されます。このデータセンターは、42年間にわたってグローバルで6万5,000人の社員が使って来たSAPアプリケーションの維持運用を担って来たSAPメンバーによって管理されており、さらに外部のお客様データを扱うための内部統制管理規定であるISAE3402認定を取得した上で、安心してご利用いただくことができるように維持管理を行っているのです。なお、SAP HECでお客様の本番機をお預かりする前提は、データベースはSAP HANA、OSはLinux SUSEとなりますが、IaaSサーバーにはSAP HANA以外のデータベース製品も置くことができる点も、あらかじめご認識ください。

SAP HECは、日本の多くのお客様が不安を抱くセキュリティ対策に関しても万全です。「東京と大阪の2カ所にSAP HECのデータセンターを有しているのですが、その環境へのお客様環境からの接続は、お客様WANから引き込む専用線かVPNでの接続となっていますので、セキュリティは非常に強固です。二重三重の本人認証確認機能付き入場ゲートを用意し、東日本大震災以上の地震にも耐え得る免震構造を備え、また完全無人化にてグローバル3拠点(インド、ハンガリー、メキシコ)からの24×7のリモート処理を行うなど、物理セキュリティに心配りをしています。論理セキュリティ(データへのセキュリティ)についても、専用線またはVPNからのアクセスのみ許可していることに加えて、リバースプロキシーサーバーの設置により、外部からのWeb経由でのアクセスにも万全のセキュリティ配慮を行っております」と、高山は自信を持って語ります。

SAP HECの利用においては、主に技術検証を目的として利用する場合の「HEC for Projects」という形態でのご利用と、実装・開発・テスト・本番稼働から維持運用を目的として利用する場合の「HEC for Production」という形態のいずれか、または両方を選択いただけます。さらに、SAP HANA以外のデータベースをSAP HANAへとマイグレーションするサービスや、SAP自身がお客様のアプリケーション保守(SAP AMS)を担うサービスなど、3つのHECコンサルティングサービスの用意もありますので、「SAP HECはまさに、SAPの、SAPによる、SAPユーザーさまのためのクラウドといえます」と、高山は強調しました。

参考:ITジャーナリスト・新野氏が聞く:基幹システムのクラウド移行は現実的か? SAPの“現実解”に迫る(ITmediaエンタープライズ:2014年07月29日

ビジネスシナリオが設定済みのHEC for Projectsを活用し、短期間でSAPシステムのグローバル展開を実現

SAP HECはすでに、海外および国内で多くの導入実績があります。「SAP HECと他社のPaaS/IaaSサービスとの大きな違いとして、SAP HECはSAP製品のインストール、『SAP BestPractice』のプリセット、および『SAP国バージョン』のプリセットすべてを完了した状態でご提供できることが挙げられます。『SAP BestPractice』とは、SAPが40年以上にわたり基幹業務システムのパッケージ専業ベンダーとして蓄積してきたベストプラクティスの設定とそれを設定するためのドキュメントのことで、業種・業務ごとに最適な設定とマスターデータをプリセットしておく機能のことです。『SAP国バージョン』とは、世界各国の特有なニーズへの対応をスピーディにするため、40カ国以上の国や地域の法令対応や商習慣対応のためのベース機能をSAPがご用意しているもののことです。SAP HEC上のこれらを利用することにより、お客様は本当にすぐにプロトタイプ環境を利用することができるようになるのです」と高山はSAP HECの特徴を紹介しました。

SAP HECのこの特徴を利用して、クイックにSAPシステムを導入、本稼働された日本のグローバル企業があります。同社では、対象国バージョンがプリセットされたSAP BestPracticeをHEC for Projects上で機能検証し、自社に合わせて設定を変更、それをオンプレミス環境に移行。日本本社での導入をわずか4カ月でカットオーバーさせ、その後の2カ月間で海外8つの販売子会社にロールアウトし、計6カ月で国内外9社の本稼働を実現しています。

またそのほかの国内企業においても、買収したドイツの会社が利用していたSAPシステムのすべてをHEC for Projects環境にコピーし、それをベースにグローバル要件に沿う新しいテンプレートを再構築し、展開している事例も報告されています。

「SAP HECに対する誤解の1つとして、『自社開発のアドオンプログラムは移行できないのではないか?』という声を良くお聞きしますが、現状のオンプレミス環境のものをそのまま移行できますので、ご心配いただく必要はありません。移行後のSAP HEC上でもアドオン開発は可能ですし、OSがLinux SUSEに対応している製品であれば、ジョブ管理ソフトなどのサードパーティソフトウェアもそのまま持ち込みができますので、安心してSAP HECをご利用いただけます」(高山)

専属マネージャーが対応する一括コンサルティング契約「One Service

3つめは、新しいコンサルティング契約のスキームに関するものです。急速に高まる日本企業のグローバル化の流れの中で、たとえば「買収した海外企業とのシステム統合を短期間で終わらせなければならない」などのニーズが非常に多く出ております。このニーズに対応するためには、従来は非常に多くの種類のコンサルティング契約を締結する必要がありました。スピーディに製品を使える仕組みがあっても、それらの利用を支援するコンサルタントを招へいする契約に時間がかかってしまえば、せっかくの製品や仕組みも宝の持ち腐れとなってしまいます。

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高山は「こうしたSAP製品の今の在り方を見直した結果として、日本でも2014年1月より、1枚のコンサルティング契約書で非常に多くのコンサルティングサービスをご利用いただける『One Service 契約』を利用できるようになりました。この契約を締結いただくことでお客様専属マネージャーもアサインされますし、SAPグローバルのリソースを非常に有機的かつ効率的に利用することができるようになりますので、より効果的かつスピーディに、SAP HANAやSAP HECをご利用いただけるようになるのです」とコンサルティングの新たな契約体系についても言及し、「これまでのSAPの在り方を見直し、今のSAPが真剣に考えた上でお出しした新しい仕組みたちをご活用いただき、現状のビジネス課題への対応はもちろん、“ 次の20年にも耐え得る新しい仕組みへのリメイク”をご検討いただければ幸いです」と述べて、セッションを締めくくりました。

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