老舗繊維専門商社の瀧定大阪が取り組むSAP HANAによる先進的なIT改革


ビッグデータの分析基盤としてだけではなく、SAP ERPの柔軟な運用を支えるプラットフォームとしても注目を集めるSAP HANA。そのSAP HANAを用いた先進的な取り組みを通じて大きな成果を生み出しつつあるのが、老舗の繊維専門商社として大阪に本社を構える瀧定大阪株式会社です。同社は2011年5月からSAP ERPの導入に着手し、2012年のカットオーバー以降も、そのビジネス基盤を着実に進化させてきました。7月23日に開催されたSAP Forum Osakaにおいて、執行役員 SCM統括部 統括部長の森口俊彦氏が行った講演には、SAP HANAに関心を寄せる多くの参加者が詰めかけました。

加速するアパレル企業の小売化で急務となった経営改革

Woman browsing clothes in boutique江戸時代末期の1864年に創業した繊維専門の商社である瀧定大阪は、今年で創業150周年を迎える老舗企業です。主に衣服の生地を扱い、国内の生地取り扱いにおいてはリーディングカンパニーとしての地位を確立しています。しかし、近年の経営環境の変化から、生地購買の比率は減少傾向にあります。さらに、少子高齢化などでアパレル市場そのものの縮小が続く中、老舗である同社も自社事業モデルの将来に危機感を募らせています。

生地販売を手がける業界他社企業が旧来のビジネスモデルから脱却して、既製服ビジネスに軸足を移していく中、瀧定大阪は事業構造の改革、新たな事業展開を目指し、経営改革プログラムを2010年にスタート。プログラムの1つの柱としてIT改革を掲げ、SAP ERPを基盤とする統合システムの再構築に着手しました。

IT改革を効果的に進めるために、瀧定大阪ではプロジェクトを3つのフェーズに設定。第1フェーズは改革のための基盤作りとしてのSAP ERPの導入、第2フェーズは仕事のスタイル変革のための経営支援・営業支援システムの構築。そして、第3フェーズではファッションプラットフォームサービスの提供によるグローバル経営管理の実現を見据えています。森口氏は「第1フェーズのSAP ERPの導入はあくまでも基礎固めで、これだけでは仕事が楽になるわけではありません。逆に、システム入力の手間が増えて仕事が大変になるかもしれません。基幹システムを導入するだけで業務が効率化されると思いがちですが、それは間違いです。しかし、この基盤がなければその上にビジネスモデルを支えるツールを作ることはできません。だからこそ、一歩ずつ段階を踏んでいくことが重要なのです」と強調します。

2011年5月にスタートした第1フェーズは2012年2月にSAP ERPの稼動を迎えました。しかしながら、マスターデータの移行に失敗し、そのリカバリーに10カ月を費やしました。その後、SAP ERPの安定稼動の目処が見えた2012年11月から、第2フェーズに着手します。そして、その中のテーマの1つである「見える化」を実現するための分析基盤として、SAP BW powered by SAP HANA(SAP BW on SAP HANA)とSAP BusinessObjectsソリューションの採用を決定し、プロジェクトをスタートさせました。

SAP BW on SAP HANA6カ月で短期導入

瀧定大阪が掲げたSAP HANAの活用用途は「見える化基盤」「ERPの高速化」「別モジュールとの連携基盤」「将来構想のインフラ」の4つです。見える化基盤の構築については、SAP ERPのデータをそのままSAP HANA上にリアルタイム複製し、キューブを作らず「HANA VIEW」でデータを抽出するセカンドステップから入りました。

森口氏は「一般的なSAP BW on SAP HANAの導入では、既存のキューブをSAP HANA上に移行するところからスタートします。これが一般的なファーストステップです。しかし、当社の場合、全社へのPC配布ですら2年半前で、分析用のデータベースやキューブは以前から存在していません。そのため、帳票のレイアウトをゼロから議論し、キューブを設計していては導入に時間がかかってしまいます。そこで、現状のSAP ERPのデータをSAP HANA上にリアルタイムに展開し、分析する環境を早期に整備することを目指しました。つまり、セカンドステップから入ったのです」と説明します。

その結果、キューブを設計すると導入に1年以上かかったはずが、同社はSAP BW on SAP HANAによって見える化基盤を6カ月という短期間で稼動させることに成功。レポートは従来型のレポートだけをいったん実現させ、現場からのフィードバックを取り込みながら、使いやすいレポートに成長させていく方針です。「見える化」プロジェクトの2年目にあたる2014年は、トップマネージメントが利用するためのダッシュボードに取り組んでいます。

SAP BW on SAP HANAの大きな効果として現れているのが、「在庫バランスレポート」のパフォーマンス向上です。在庫バランスレポートとは、営業部門にとって必須であるお客様への在庫回答・納期回答、さらには営業部門が発注タイミングやその量を決定するために活用する最重要なレポートです。検索対象のデータは1億3,700万件にものぼり、そこから対象品目の在庫バランスを抽出する作業に、SAP ERPでは約60秒かかっていました。ところが、SAP HANAの導入によりデータ抽出の時間が実測で3秒と、20倍の改善効果が得られ、実運用に耐えるレスポンスが実現しています。

SAP HANA導入の2つめの狙いである「ERPの高速化」については、アドオンプログラム内のデータベース処理をSAP HANAで実行する「アプリケーションアクセラレーター」として活用しています。その中で、SAP ERP上にアドオンで作成した「仕入高一覧」の処理においては、導入前の442秒から52秒へと8.5倍のスピード向上が実現。営業部門が毎週確認する仕入高一覧のスピード化は、業務自体の効率向上に直結しています。

3つめの「別モジュールとの連携基盤」は、開発した支援系モジュールとSAP ERPの連携にSAP HANAを使うというもので、マスター照会や在庫照会といった情報系の実行をSAP HANAと連携させ、高速化させる取り組みを進めています。

4つめの「将来構想のインフラ」については、現在は取得できていないビッグデータをSAP HANA上に展開し、マーケティング情報として活用するというものです。現在同社では、量産化が進んだ品目のみをERPで管理していますが、製品のライフサイクルが短いファッション業界でスピーディーに対応していくためには、試作品に対する評価や展示会でのお客様の反応も重要なマーケティング情報です。さらなる将来構想については、森口氏は次のように語っています。

「試作品の商品情報や、展示会によるお客様の反応などもSAP HANA上にアプリケーションを開発して管理し、需要予測に活用したいと思っています。そして、営業が気軽に使えるUIを備えた新しいデバイスの活用も検討しながら、営業スタイルの変革を進めていきます」

また将来的には、基幹システムの情報をより早く、柔軟にユーザーに提供できるようERPを直接SAP HANA上で動かすこと(SAP Business Suite powered by SAP HANA)を検討しています。さらにはクラウドを利用するとオンプレミス環境に比べてバージョンアップ対応などが格段に容易になるため、SAP HANA Enterprise Cloud上でシステムを運用し、さらなる柔軟性を確保していく考えです。

包括コンサルティング契約でSAPコンサルの価値を最大化

続けて森口氏は、瀧定大阪が第2フェーズで採用したSAPのコンサルティングサービスについて説明を加えました。同社では、SAPと「Value Partnership Service(VPS)」契約を締結し、3年間の長期・包括契約によって、IT改革を進めています。

VPSを利用するメリットについて森口氏は「1番は優秀なコンサルタントを継続的に優先してアサインできることであり、これは中小規模の会社には非常に有効です。2つめは、SAPのコンサルタントは、他ベンダーよりSAPのソフトウェアに造詣が深いこと。3つめは、長期の取り組みとなるので、その都度ベンダーに説明する手間を省くことができ、継続的なキャッチアップが提供されること。4つめは、案件ごとに変更契約を行うタイムアンドマテリアル形式なので、途中変更が可能であり、3年という長期契約にもかかわらずリスクヘッジができることです」と語りました

そして、SAPサービスを使いこなすコツとして、「SAPの強みを徹底的に利用し、弱みは自社で補うことであること」をあげていただきました。3年間のサービス契約の半分が経過した現在の期待として、運用保守(SAP AMS)のコスト削減、SAP HANA Enterprise Cloudによるクラウド化の推進、SAPと瀧定大阪とのノウハウ共有による共同開発の3つをあげて講演を締めくくりました。

本価格的なIT改革に乗り出してからわずか4年間で、SAPのシステムからサービスまでを使いこなし、経営改革に成果をあげている瀧定大阪の先進的なチャレンジを、ぜひ同様の悩みを抱える企業の皆様にも参考にいただければと思います。

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