NTTビジネスアソシエの先進事例にみる、業務課題の解決サイクルをシンプルにするクラウドファースト

作成者:SAP編集部 投稿日:2014年9月22日

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276428_l_srgb_s_glこのところお客様から「最近はSAP HANAとクラウドの話ばかり聞かされるけど、これからERPはどうなるの?」といった声が寄せられることがあります。もちろん、SAP=ERPベンダーとの思いがあってのご指摘かとは思いますが、7月11日に開催されたSAP Forum Tokyoで公開されたSAPジャパン クラウドファースト事業統括本部 プリンシパルコンサルタントの村田聡一郎のセッションは、まさにこうしたお客様の疑問に応える内容でした。また、同じセッションで登壇したNTTビジネスアソシエ株式会社 常務取締役の小畑哲哉氏による同社のクラウド活用事例は、SAP ERPとクラウド戦略の関係を示す貴重なモデルケースです。今回はその模様をレポートしてみたいと思います。

ERPとクラウドは別のものか?

まず冒頭で登壇したSAPジャパンの村田の講演では、現在SAPが推し進めるクラウド戦略の概要についての説明が行われました。現在もSAPの主力製品であり続けるSAP ERPを取り巻く環境は、年々変化しています。

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図1:SAP ERPを支える実行環境の過去~将来

上下3層に分かれた縦のレイヤーの最下層に示されているのは「プラットフォーム」です。これはハードウェアが主体となるレイヤーで、データセンターを運用する事業者が「ネットワーク」「サーバー」「プラットフォーム」などと呼んでいる部分です。現在、クラウドサービスとして提供されている「IaaS」「PaaS」などは、この層に該当します。中段に位置する層は「アプリケーション」です。ここはソフトウェアが中心となって、サービスを提供するレイヤーです。「ERP」や「SaaS」がここに該当します。最上位層は「企業間ネットワーク」は、他社との接続を通じて、自社ならではのソリューションを展開する部分です。

一方、横の流れについて村田は過去、現在、そして将来に分けて説明しました。「過去~現在」において、かつて企業システムのソフトウェアは、スクラッチ、つまり一から手作りで開発していましたが、その後、1970年前後からこれらの基幹アプリケーションのうち各社に共通する機能について、パッケージ化する流れが起こりました。図中で青となっているのが共通化部分で、赤くなっているのが自社固有の部分です。これがSAPも含めたERPパッケージの生い立ちであると村田は話します。

「現在」はクラウド化が急速に進行しています。2010年前後にクラウドサービスが産声を上げ、従来のオンプレミス環境にはないメリットに注目が集まりました。素早い立ち上げと稼動、スモールスタートと柔軟なスケーリング、人的コストの削減などです。ユーザー企業はクラウド部分の運用については詳細を理解する必要がなく、クラウドベンダーのSLAに任せるという形態をとります。

図に示す通り、「現在」ではSaaS形式のクラウド環境と同時に、これまでは自前で保有していたプラットフォーム環境もIaaSやPaaSの形でクラウド化されつつあります。SAPでは、この部分(マネージドクラウド部分)について、SAP HANA Enterprise Cloudと呼ばれるサービスを提供しています。また右側の下部、SaaSのプラットフォームのSAP HANA化も進めています。

そして2015年以降の「将来」については、自社固有要件に合わせて構築した環境と、クラウド化された全社共通要件部分の融合が進んでいくと予想されます。つまり、SAP ERPとした部分とクラウドで提供される部分のボーダーが実質上存在しなくなり、ユーザーは提供される共通機能について、その物理的なロケーションや詳細な構成などを意識せず利用すれば良いという形になります。

こうした変遷を踏まえ、村田はERPとクラウドの関係を総括して「創業以来、SAPではアプリケーションの共通機能をパッケージ化し、ERP製品としてお客様に提供してきましたが、クラウド化が進行する現在でも、そのスタンスはまったく変わっていません」と強調しました。実装形態としてオンプレミスか、クラウド上の共有サーバープールという違いはあっても、それは単純にディプロイメントの差に過ぎず、アプリケーションの共通機能をユーザーに提供するという理念は変わっていないことを意味しています。

SAPが推進するクラウド戦略のポートフォリオ

次に、引き続き村田からSAPが「クラウドポートフォリオ」と呼ぶクラウド関連サービスについての紹介が行われました。SAPのクラウドポートフォリオは、SAP Business Suite powered by SAP HANAなどを包含するマネージド・クラウド、クラウド業務アプリケーション(SaaS)のほか、SAP HANA Marketplace、Aribaビジネスネットワーク、また基盤としてのSAP HANA Cloud platformなどから構成されています。

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図2:クラウドポートフォリオ

HR(人事)ソリューションは、2012年に買収したSuccessFactorsのソリューションを適用しています。同社はタレントマネージメント分野で業界No.1の企業であり、導入企業数も増加の一途を辿っています。たとえば、世界最大級の食品会社であるペプシコ社も顧客の1社です。グローバルで30万人もの従業員を擁する同社は、SAP ERPの人事管理ソリューションをオンプレミスで、また、SuccessFactorsのソリューションをクラウドで導入し、これらのハイブリッド連携でコアの人事管理およびタレントマネージメントを推進し、大きな成果を上げています。

図の2番目にあるカスタマーソリューションでは、CRM機能の提供を通じて営業活動を支援します。特にモバイルからの利用を念頭に、たとえばiPadなどからSAP特有の分析機能を利用することができます。SAP Cloud for Customerではクラウド、オンプレミスの垣根を越え、26のインターフェースを標準装備。SAP CRMなどの提供機能を統合的に利用することができます。

購買ソリューションについては、ビジネスコマースネットワークのデファクト・スタンダードであるAribaを買収。ユーザーに対して、調達・購買業務向けクラウドソリューションである「Ariba Solutions」とeマーケットプレイスである「Ariba Network」を提供しています。特に後者のAriba Network上では、年間5,000億ドル(約50兆円)もの取引が行われ、世界190カ国、150万社が接続する世界最大の巨大なネットワークとなっています。

続いて、SAPのクラウドカンパニー戦略の浸透を示すAriba Networkを使った実際の導入事例として、NTTビジネスアソシエ株式会社 常務取締役の小畑哲哉氏から、同社のクラウド活用事例の紹介が行われました。

NTTグループにおける集中購買、シェアード化の推進を担う先進事例

持株会社であるNTTの100%子会社であり、NTTグループにおける経理、人事給与、福利厚生などの間接業務の制度設計コンサルティングから、オペレーション業務までをワンストップで対応するNTTビジネスアソシエ株式会社は、NTTグループのシェアードサービスセンターとして位置付けられる重要な事業会社の1つです。

小畑氏によれば、同社が購買業務に関して新たな仕組みの導入を考えたテーマは、「コンプライアンスの強化」と「コストの削減」の2つ。各部門でさまざまな契約や取引が実施される中で、不正行為などを防止し、早期に発見するためにコンプライアンスを強化し、また契約データを見える化し、時系列に確認できる仕組みを設けることで、購買コストの低減を図るというものでした。さらに、これらに加えて第三者によるチェック機能の導入も不可欠であることから、可視化ツールの導入、審査プロセスの設計などが課題となったと話します。

わずか3週間でAribaによるトライアル環境を構築

このような要件に対応できる仕組みを検討する中で、迅速に支出全体が把握できるコマースプラットフォームとしてAribaの存在を知り、検討を重ねた結果、同社ではAriba Commerce Cloudの導入を決定。2014年3月11日に契約締結に至りました。

プレスリリース:NTTビジネスアソシエがAribaクラウドソリューションを3週間で導入

短期での導入を目指した同社の期待通り、Ariba Commerce Cloudは契約締結からわずか3週間でトライアル環境の構築に至りました。この背景には、Ariba製品そのものの完成度に加え、SAPジャパンによる強力な支援、さらにNTTビジネスアソシエおよび同社のシステムをサポートするパートナー企業が持つビジネスプロセスに関する高いノウハウがあったと、小畑氏は話します。

2014年7月現在、NTTビジネスアソシエでは導入したAribaシステムを使いながら、契約体系や業務プロセスの洗い出しと分析、これらを踏まえた新たな業務プロセスの策定などを実施しています。現状、Aribaで対応している業務としては、取引先の信用情報を含めたサプライヤー評価および契約実績の見える化などがあります。

NTTビジネスアソシエの取り組みはまだ始まったばかりですが、契約におけるコストと成果の比較において、その組み合わせを次々に変えながら評価できること、また早期導入が可能で、万一システムが自社の業務に適さなかった場合には早期の撤退が可能なことなど、Aribaシステムには他のクラウドソリューションにはないさまざまなメリットがあると小畑氏は強調します。

SAPがクラウドカンパニーへの転換を推進しながらも、一貫した理念の中で継続してERPを提供し続けていること。また、一方ではすでに世界屈指のクラウドカンパニーであり、提供サービスはSAPへの“丸投げ”(SAP HANA Enterprise Cloudベース)形式でも、迅速な導入を追究する(SaaSベース)形式でも採用が可能なこと。そしてNTTビジネスアソシエに代表されるような多くのお客様に採用いただいていることをご理解いただき、今後に期待いただければ幸いです。

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