自動車業界で急速に進むSAPのグローバル展開事例を、三菱自動車工業、日産自動車、日本発条が公開

作成者:SAP編集部 投稿日:2014年10月10日

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日本におけるSAPのユーザー会であるJSUG(JAPAN SAP USERS’ GROUP)の産業別部会では、各業界のユーザー共通の課題を持ち寄り、その解決に向けたSAPの活用方法について、活発な議論が交わされています。7月29日に名古屋で開催されたSAP Auto Forum Nagoya/JSUG中部フォーラムで設けられた自動車部会のセッションでは、自動車産業のユーザーの間で最も関心の高いテーマの1つであるSAPシステムのグローバル展開について、三菱自動車工業、日産自動車、日本発条の3社から各社の取り組みの紹介が行われました。今回はその模様をレポートします。

SAPの効果的な活用方法を共有するJSUG自動車部会

image1最初に、オピニオンリーダーを務める日本発条の鈴木潤一氏が、JSUG自動車部会の活動概要について説明しました。同氏によると、自動車部会は自動車会社や部品サプライヤーが集い、各社の課題や取り組みを共有しながら、SAPの最新情報を入手し、自動車産業特有の要件に基づく改善要請を行うことを目的に活動を続けており、「2014年度はユーザーの最も関心の高い導入事例を最優先する方針とし、SAPおよびパートナーからの情報提供を主なコンテンツとして活動を続けています」と近況の報告が行われました。

過去に自動車部会がユーザーに対して実施したアンケートにおいて、「SAPを使って何をしたいか」という質問に対する回答では、グループや海外へのシステム展開という声が多く寄せられたといいます。導入フェーズでは、テンプレートや業務プロセスの標準化はどうするか、国別対応はどうするか、パートナーはどうするかといった悩みが挙げられています。運用フェーズにおいても、インスタンス統合、システム統合、マスター統合といった課題認識が、多くのユーザーから聞かれると鈴木氏は説明します。

また「導入したSAPシステムをどう使うか」も課題の1つで、システム最適化の観点から、アップグレードのコスト削減、アドオンの削減、ライセンス契約の合理化、ハードウェア・データセンターコストの削減などが指摘されています。SAPのさらなる活用に関しても、運用改善、データ活用、購買領域へのSAP拡張に加え、EHPで追加された新機能の情報、IFRS対応、連結会計・予算管理などを求める声が寄せられていたとのことです。

SAP SRMで見積もり取得の業務プロセスを改善した三菱自動車工業

image2こうした背景も踏まえセッションでは、現在JSUG自動車部会の部会長を務める三菱自動車工業の和泉敦子氏が、同社におけるSAP導入事例を紹介しました。三菱自動車工業の本社では、2005年にSAP ERPで会計システムを構築しています。その後、2011年から購買領域のSAP化に着手。「2011年当時、会社の全体施策として、海外調達の拡大、グローバルベンチマークの強化、コスト査定能力の向上、車種別資材費の管理強化、海外拠点の連携強化の5つが挙げられていました。それに資するシステムが必要という判断から、SAP SRMの導入にいたりました」と和泉氏は当時を振り返ります。

2011年8月にキックオフしたプロジェクトは、2012年7月にカットオーバー。SAP SRMの導入により、見積もり取得の業務プロセスが改善され、それまではメールやExcelベースで行っていた見積書の取得が、ポータル経由での取得に改められたと、同氏は話します。また、取引先ごとにカスタマイズ対応していた見積書のフォーマットが統一されたことも成果の1つだといい、「それまでは紙やExcelなど、見積書の形態がばらばらで、ファイルもファイルサーバーにあったり、個人のPCにあったりと分散していました。その状況がデータベースで一元管理され、徹底した見積もり評価が可能になっています」と和泉氏は導入効果を実感しています。

さらに、業務プロセスを遵守するための電子ワークフローを導入した結果、ルールに則った情報が承認者や担当者に送信されることになり、内部統制の強化が実現したといいます。また三菱自動車工業では、2014年1月からSAP SRMで構築した本社の購買システムを、海外拠点の1社にロールアウトするプロジェクトがスタートしており、現在は9月のカットオーバーに向けてテストやトレーニングを行っている段階だといいます。

さらに同社では、グローバルシステムの構築に向けて、業務プロセスの標準化、データ標準化に向けた、システム構築のロードマップの作成にも着手しています。

「口で言うのは簡単ですが、地に足の付いた現実的な計画作りと確実な実行は簡単ではありません。費用やスピードを鑑みグループにすでにある仕組みも生かしながら、業務部門の業務効率化と業務品質向上の仕組みづくりを通して、経営陣に対して必要な情報をタイムリーに提供するのがIT部門の役割です。今後も業務部門と協力体制のもとで進めていきます」と、和泉氏は今後について語りました。

Value Engineering Activities」でSAPの最大価値を取得する日産自動車

image3続いて、オピニオンリーダーを務める日産自動車の氏家尚之氏が、同社のSAP導入の取り組みを紹介しました。日産自動車では数年前に、SAPをどの領域に活用すれば最大の価値が得られるかという活動「Value Engineering Activities」をSAPと共同で実施し、ビジネスプロセスの視点からグローバルのロードマップを作成しています。現状は、今まで検討及び一部導入を実施した会計とアフターセールスに加えオーダーマネージメント、原価管理などの領域でプロジェクトが進んでいる状況です。

長期スパンでのプロジェクトを推進していくにあたり、日産自動車内ではSAPシステムに精通する人材が少ないことから、SAPとのパートナーシップを重要な取り組みとして位置づけました。最初のステップとして、昨年度はプロジェクトの下流フェーズ(設計、開発、テスト、導入)を進める中でプロジェクトが直面する技術的な課題に迅速に対応するために、SAPのコンサルタントが常駐し、問題解決を支援できるようにしました。次のステップとして、今年度は上流工程(企画、構想)にスコープを広げ、Proof of Concept(プルーフオブコンセプト)やValue Prototyping(バリュープロトタイピング)をスムーズに行っていく仕組み作りに取り組んでいます。

続いて、同氏はプロジェクトの最新事例として、現在ブラジル工場で導入している車両受発注システムについて紹介しました。このシステムは日産自動車が今後グローバルで展開していく「ビークル・オーダー・マネジメント・システム」(VOM)で、SAP ERP(ECC 6.0)とSAP エンタープライズポータル、自動車業界向けソリューションであるVMSモジュールを採用し、ブラジル固有の要件を追加して構築しました。現在はブラジルのディーラーや現地の販売会社が利用しています。「今後はVOMをグローバル共通のシステムとして他地域に展開していく方針ですが、複数のシステムを効率よく管理することが課題です」と氏家氏は述べています。

日本モデルの複雑さを解消しながら、グローバルテンプレートを構築した日本発条

続いて日本発条の鈴木潤一氏からは、同社の中国の生産販売拠点におけるSAP導入事例について紹介されました。導入の目的について鈴木氏は「日本で実施している同期生産を中国で実現するために、1年以内の短期導入を目指し、日本モデルの複雑さを解消しながら、海外展開の基準となるグローバルテンプレートを構築することにしました」と語ります。

導入スコープは、顧客と仕入れ先の間に何社もの製造会社や販売会社が介在する商流において、事務処理のオーバーヘッドを削減するため、SAPのデータの持ち方に工夫を凝らしています。「ここでは会社間連携を重視し、1つのデータを入力すれば、連携しているすべてのシステムに情報が入る仕組みを苦労して作り込みました」(鈴木氏)

グローバル展開において日本発条が意識したことは、何よりもSAPの機能を最大限に活用することでした。「具体的には、日本で利用していた3rdベンダ製の帳票システムは海外では使わず、ECC6.0の標準機能であるADS(Adobeドキュメントサービス)を採用しています。さらに、ジョブ管理もSAP Solution ManagerとSAP CPSを採用してビジネスプロセス主導のシンプル化を目指しました」と鈴木氏は導入のポイントを振り返ります。

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3社の事例講演の後、JSUG自動車部会の会員会社の現在の取り組みと問題認識を鈴木氏が紹介し、まとめとして「完成車メーカーとサプライヤーの両方が参加する自動車部会は、運営が難しい一方で、サプライチェーン全体でSAPを活用する可能性を秘めています。今後も歴史ある産業別ユーザー会として、SAPの力を引き出すために積極的に発言していきます」と宣言しました。

この他にもJSUGの産業別部会では、業界固有の課題を解決するためのSAPシステムの活用方法についての議論が交わされています。JSUGでは今後も、JSUG FOCUSなどさまざまな場所を通じて、最新の成果を多くのユーザーと共有していくとのことです。

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