自動車産業の未来に向けた変革を支えるテクノロジーと、2020年に向けた日本の自動車業界の課題


内燃機関からHV、EVへの移行、安全機能の高度化、テレマティクスによるドライバーの利便性向上など、今まさに変革の過渡期にある自動車産業の未来にフォーカスして開催されたSAP Auto Forum Nagoya。今回は大盛況のうちに終了した本フォーラムにおける基調講演の模様を、ゲストスピーカーとして登壇したオートインサイト株式会社代表である鶴原吉郎氏による講演と合わせてお伝えしたいと思います。

未来の概念を現実にする新たなテクノロジー

Picture業種別ソリューション(自動車)の統括責任者であるホルガー・マッサーによる基調講演では、SAPテクノロジーを活用することで実現される未来の倉庫管理をイメージした動画をご紹介しました。作業担当者が身に着けたスマートグラスに、手作業による商品のピッキングを支援する詳細な指示から、フォークリフトの動作指示、さらに移動中の安全確認や故障に関わる診断まで、さまざまな情報が表示されます。これらは、バックエンドのSAPアプリケーションに蓄積された情報をスマートグラスにリアルタイムで表示しており、現場の作業効率と品質を大きく高めています。

続けてマッサーは、自動車業界の変革において対応すべき点を挙げます。世界の人口のうち約50億人が中流階級となり、労働者層の75%が2000年以降に成人を迎えた世代で構成される現在の世界では、ビジネス向けのソーシャルネットワークを使用するユーザーの数は13億人にも達し、約500億個のデバイスが「モノのインターネット」に接続されると説明します。このような状況下において、自動車業界では、原材料のリスクを踏まえた車両の製品原価計算、自動車の購買体験を大きく変えるソーシャルを使った可視化、マシンセンサー、コネクテッドカーなど新たな概念が現実のものとなってきています。

自動車業界における SAP の戦略とロードマップ

SAPと自動車業界の関わりは非常に長期にわたります。1995年、メインフレームベースのR/2からスタートした自動車業界への取り組みは、その後も持続されました。常にお客様のニーズ、トレンドに基づいたシステム開発にSAPは取り組み、現在ではすべてのバリューチェーンにおよぶソリューションを提供しています。現在の包括的なソリューションを示すものとして、マッサーは以下のバリューマップを紹介しました。

SAP blog_Forum-Nagoya_K1_01これらのソリューションは自動車業界の多くのお客様に利用されており、その実績を数値でみると、Forbes Global 2000に含まれる自動車およびトラック部品メーカーの96% 、世界101 カ国にわたる6,300 社超の自動車会社がSAPソリューションでイノベーションを推進しています。これらのお客様により、1日に9万5,000台を超える世界の自動車やオートバイが製造されているのです。

自動車業界では現在、これまでの高度な製造技術にサービスの価値を加えることで、その売り上げを伸ばそうとしています。具体的には、販売後のアフターサービス、またメーカーによる各種金融サービス、さらにOEMやサプライヤーとの新たなビジネスも創造しています。SAPでは、成長とともに複雑化する自動車業界のIT基盤に向けて、SAP HANAに代表されるプラットフォームを通じてイノベーションの推進をサポートします。また、2,000におよぶソフトウェア/テクノロジーパートナー、3,000のサービスパートナー、さらに4,000のソリューションリセラーとともに、自動車業界のお客様を支援しています。

SAP blog_Forum-Nagoya_K1_02最後にマッサーは、すべてのイノベーションを自動車業界のお客様に公開して提供する「Solution Explorer」を紹介しました。シンプルな操作で自身に関連する業界や業務、テクノロジーといった多くのトピックでソリューションを検索でき、そこから得られるビジネス価値を確認することが可能です。

参考:SAPのサプライチェーン管理領域にはどんなソリューションや機能があるのか

2020年に向けた日本の自動車業界の課題

picture2基調講演を締めくくったのは、長く自動車エンジニア向け専門誌「日経Automotive Technology」(日経BP社)の編集に携わり、現在は自動車技術・産業に関するコンテンツ制作を専門とするオートインサイト株式会社の代表として活躍する鶴原吉郎氏の講演でした。

鶴原氏は、日本の自動車(完成車)メーカーが抱える3つの課題として「ブランド力の弱さ」「モジュール化の遅れ」「知能化へのためらい」を挙げます。日本国内では、世界の市場における日本車のブランド価値は髙いという認識が一般的ですが、そのシェアに着目すると特に欧州、中国での低下が目立ちます。特に欧州では、日本の高級車ブランドが認められていないという事実があり、これに対比する例として鶴原氏は、Audiにおけるここ30年の取り組みを説明しました。

Audiでは1982年当時、野暮ったいイメージが強かったブランドを高級志向の顧客にアピールするための取り組みを開始します。大きな転換点となったのは、2003年に開始されたCMでした。CMでは顧客とのすべてのタッチポイントにおける一貫したブランディングが行われます。これは「品質が高ければ売れる」という日本的なアプローチではなく、製品プランニング、製造、マーケティング、PR、プロジェクト管理、アフターセールスなど、すべての工程における一貫した考え方の下で、ブランディングを成功に導くというものです。いわば部門の壁を超えた共通言語としてCMを活用する形になります。このような取り組みを指し、鶴原氏は「神は細部に宿る」と話します。

モジュール化の遅れも、日本のメーカーにとっての大きな課題だと鶴原氏は指摘します。ドイツ語の「Modulen Quer Baukasten」の頭文字を取ったMQBは、モジュール化によるシナジー効果を狙った戦略です。プラットフォーム共通化だけではなく、共通で使用できるモジュール化の考え方を設計・開発や製造に取り入れることで、大幅なコスト削減を図るというものです。MQBによって得られる効果は、部品コスト20%低減、製造時間30%短縮、投資コスト20%低減と想定されています。実際には、日本でもこのような考え方(日産のCMF、マツダのSKYACTIV、)は推進されていますが、いまだエンジンのモジュール化にはいたっていないのが実状です。一方、フォルクスワーゲン社ではエンジンの搭載方法を統一し、エンジンのモジュール化を推進することで大きなコスト削減を実現しています。

日本の自動車メーカーの最大の課題は「知能化」戦略

最後に鶴原氏は、これから20年における自動車業界の最大の革新として「知能化」を挙げます。クラウドコンピューティングが一般化し、センサーテクノロジーの進化が加速する中、これらから創造される膨大なデータを活かした知能化とも言うべき取り組みが、非常に重要になってくると話します。自動車業界の例では、Googleの参入発表で一躍注目を浴びたADAS(先進運転支援システム)がこの流れを象徴しています。2030年以降には、完全自動運転を行う車両の実用化が開始されるとの予測も発表されています。また、この状況下では、これまで自動車メーカーと呼ばれていた企業以外からの業界参入が活発化すると鶴原氏は話します。Googleなどを含め、韓国メーカー、中国メーカー、テスラモーター、ソフトバンクなど、多くの企業がその可能性を追求する時代がすでにそこまで来ているという状況を考えると、日本メーカーが再認識すべきは「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の格言ではないかと話し、鶴原氏は講演を終えました。

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