グローバルテンプレートを活用して、欧州の自動車市場における競争力を高めるトヨタ紡織のイノベーション


欧州の自動車メーカーにおける製品開発は、部品番号の管理ひとつをとっても、日本国内とは大きく事情が異なります。このような欧州の自動車メーカーを顧客として、シートなどの部品を提供するトヨタ紡織株式会社では、BMW社からの新規受注を機に、そのコアシステムをSAP中心に切り替え新たな一歩を踏み出しています。今回は7月29日に開催されたSAP Auto Forum Nagoyaにおけるトヨタ紡織株式会社 IT推進部 システム企画室 室長の福山幸紀氏による講演内容から、同プロジェクトの概要と成功要因をレポートしてみたいと思います。

自動車の内装部品を広く世界に向けて提供

SAPForumNagoya_ToyotaBoshoku_Fukuyamaトヨタ紡織は、主に内装部品などを提供する自動車業界のグローバルサプライヤーです。欧州/アフリカに17、中国に13のほか、全世界に93の拠点を構え、海外での生産比率は70%にも達しています。2020年にはトヨタ自動車以外の売り上げ比率を30%にすること、また全体の売上高を1.5倍にすることを目標に定め、さまざまな取り組みを進めていますと福山氏は話します。

とはいっても、トヨタ紡織を取り巻くビジネス環境は決して楽観視できるものではありません。新興国の成長、顧客のグローバル化、地域固有の製品投入、品質向上の要求、為替変動、価格の下落など、さまざまな課題を抱えており、冒頭の経営目標を達成するためには、成長する新興国における受注の獲得や各地域で異なるビジネス事情への対応など、越えなければならない多数のハードルがあります。

このような課題を克服するため、同社では「グローバルONEカンパニー」と呼ばれる理念を打ち出します。これについて福山氏は「将来的には各地域が有機的に組み合わさる形で相乗効果を創造する」と話し、個々の拠点が独立して動くだけでなく、総体として機能することでより大きな効果を上げるというビジョンを説明しました。

BMW社向けの製品提供がSAP導入のトリガーに

トヨタ紡織において、SAPの導入プロジェクトが立ち上がる契機となったのは、BMW社とのビジネスでした。これまでのビジネスとは異なり、BMWの要求は特に品番体系において顕著でした。既存ビジネスでは品番は構成部品単位で設定されていましたが、BMWとのビジネスではより細かいモジュール単位での品番設定・管理が求められました。

グローバルONEカンパニーを支えるシステム化構想として、グローバルマスター(製品マスター、品質マスター、生産マスター、コストマスター、人事マスター、調達マスターなど)の実現が急務と考えていた同社では、ここで大きな決断をします。これまでのスクラッチ開発によるシステムはトヨタ自動車向けのビジネスに特化し、それ以外のビジネスについてはSAP上で運用するという2システムの併用を決定。SAPをコアに据えたシステム開発に着手しました。

最終的にSAPが採用された要因としては、欧州の自動車メーカー(さらに中国の自動車メーカーも)におけるSAPに対する高い信頼と実績がありました。さらに、プロジェクトでは非常に短期でのカットオーバーが求められたため、そこではSAPのベストプラクティスへの大きな期待があったといいます。

SAP ACSを使った7カ月での短期導入

プロジェクトには、Toyota Boshoku European IT、ASCO社、Itelligence社、SAPコンサルタントの4社が参画し、ミュンヘンにある開発拠点(BAE)を中心として約7カ月間612人日の工数で進められました。同程度のシステムをスクラッチで開発する場合と比較し、非常に短期でのシステムカットオーバーとなりました。

稼働システムとしてSAPが導入された拠点はポーランドのTBAIで、開発拠点であるミュンヘンから約600kmに位置しています。新システムでは、SAPモジュールとしてSD(販売管理)、MM(在庫/購買管理)、PP(生産計画/管理)が利用されており、これらによって当初の構想であったグローバルマスター実現に向けた一歩を踏み出すことができました。

短期かつ成功裏にプロジェクトが完了できた要因について、福山氏は「ASCO社の持っていたナレッジ、Itelligence社によるマネージメント力に加えて、SAPスタンダードを採用したことが成功につながったと考えています」と強調します。また、SAPを採用したメリットとして、ACS:Automotive Consulting Solutionsを活用したことで新たな仕様に対して迅速に対応することが可能になった点、システム立ち上げ後、ジャストインシーケンス方式での納品に対しても十分なサポートを受けられた点、さらにSAPのEHP提供時においても、その動作をSAPが保障した点が挙げられます。

その後、ポーランドでのプロジェクトの受注をきっかけに、NCB(New Customer Business)対応に向け、グローバルテンプレート構築プロジェクトを実施しました。同プロジェクトではFI(財務会計)、CO(管理会計)のモジュールを適用し、約4.5カ月、300人日で無事プロジェクトを完了しています。このグローバルテンプレートへの取り組みは現在も進行しており、グローバルテンプレートと製品マスターの対応をSAP PLMを使って実現する予定です。さらに、2014年8月からは「自動車専用デモシステム」向けにSAP HANAをコアにした開発もスタートすることになっています。

日本とは大きく事情が異なる欧州市場において、拡大するビジネスを支えるコアシステムとしてSAP製品が適用されている実態からも、欧州におけるSAPへの圧倒的な信頼感や短期でのシステム実装においてSAPスタンダードにのっとった開発が大きな効果を発揮することがお分かりいただけると思います。

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