“車”という概念を180度変革する未来のコネクテッドカー~トヨタIT開発センターの取り組み~

作成者:SAP編集部 投稿日:2014年10月7日

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SAPAutoForumNagoya_ToyotaIT_Endo多くの人にとって、これまで“車”という言葉からイメージされるのは、移動の手段という役割や、運転、スピードを楽しむといった趣味の世界に限定されていたのではないでしょうか。しかし現在、自動車産業の未来を牽引する日本のメーカーが見据えているのは、このような概念を180度変革する新しい車の用途でした。7月29日に開催されたSAP Auto Forum NagoyaにおけるトヨタIT開発センター 研究部取締役 遠藤徳和氏の講演は、まさにこのような車の未来を予感させる各種のトピックが盛り込まれたものでした。今回は多くの来場者が詰めかけたこの特別講演をレポートしてみたいと思います。

スマートモビリティ社会の実現に向けて

まず遠藤氏は冒頭で、トヨタIT開発センターの役割について、同センターは「IT・ITS技術により豊かなモビリティ社会を実現する」「電波・無線、情報通信・ネットワーク、情報プラットフォーム、知能化情報処理・ HMI、ソフトウェアなど、先端のIT技術を追求する」という理念をかかげ、まさにトヨタ自動車の最先端の研究テーマである“スマートモビリティ社会”の実現に向けた、さまざまな役割を担う中核的な研究開発拠点であることを紹介しました。

同氏によると「車と人とのコミュニティを相互に繋ぐことで、車の移動から生活シーンまで誰もが安心で心ときめく社会」が、トヨタ自動車が提唱するスマートモビリティ社会のコンセプトであり、この実現を支える構成要素として、以下の5つのポイントが挙げられるといいます。

知能化情報処理 ビッグデータ解析・HMI
Vehicle IT Platform 車載LAN・セキュリティ
V2X 技術 路車/車車通信・コグニティブ無線
ITS Driving Support(隊列走行、先読情報)
スマート社会 最適化・大規模シミュレーション

安心・安全を実現し環境にもやさしいコネクテッドカー

スマートモビリティ社会においては、これまでとは異なる新しいタイプの車=コネクテッドカーが、私たちの生活を支える身近な存在になると遠藤氏は話します。安全・安心を実現し、環境にやさしい車、同氏はコネクテッドカーの用途として想定される典型的な例を示しながら、その具体像を説明しました。

コネクテッドカーが形作る未来の社会では、高度運転支援として「路車・車車無線通信」による安全性の確保が実現します。まず路車間協調システムは、車が道路や信号機に設けられたセンサーとの通信により物陰の車や歩行者を検知し、向かって来る車に電波で知らせることにより衝突を回避する仕組みです。これにより、運転席からは見えない他の車や人の動きなどを、これまで以上に正確に察知することができます。

また車車間協調システムでは、車同士が電波で互いの位置や速度情報を交換し、追従走行をしたり、衝突を回避したりすることができます。一方、未来の社会では、災害時の対策としても車の役割が重要になってきます。たとえば、避難所間で被災状況を共有するためにテレビのホワイトスペースで無線通信を行ったり、個人の車のWiFi機能を利用して、個々の被災地からリアルタイムに避難所へ情報を届けたりといった用途が考えられています。これは、非常時に車が通信ハブとして機能することを意味しています。

遠藤氏は、環境面における地域内エネルギー利用の最適化に向けた車の役割についても言及しました。ここでは北米インディアナ州でのADR-スマートグリッド実証実験を例に、トヨタ自動車が提供するトヨタスマートセンターと家庭、そして車間で最適な充電設定をコントロールし、電力網との連携を図ることで電気エネルギー利用の最適化を図る取り組みが紹介されました。また、渋滞緩和・削減のための施策としてのマルチモーダルにも期待がかかっています。EVシェアリングシステムの活用によって、車両の運用状況全体の最適化を図ることが可能になります。

SAPも参画した給油代金のモバイル支払ユーザートライアル

今回の講演では、SAPも参画した「給油代金のモバイル支払」のイメージビデオも、遠藤氏から紹介されました。この企画は、SAP、VeriFone社、ITC-USが共同でBlueToothを使った給油代金のモバイル支払をユーザートライアルとして実施したものです。

これまでの給油は、運転中にガソリンメーターを確認し、残量が少なければ、近くのガソリンスタンドを自ら探し、スタンドでは車から降りてクレジットカードを挿入していました。これは面倒なだけでなく、個人情報が盗まれるといったリスクもはらんでいます。

一方、今回のあらたな取り組みでは、SAP HANAとトヨタIT開発センターによるコネクテッド給油システムによって、ガソリン残量表示が提示されるだけでなく、ガソリンの販売価格も含め、自動的に最寄りのガソリンスタンドまでのナビゲーションが表示され、これに従って簡単にガソリンスタンドに向かうことができます。

さらに、BlueTooth技術によってどの給油機の前に車が止まったかを特定、また運転手は車載のナビゲーションを介して、車内に居たままでクレジットアカウントの認証を行い、支払手続きを進めることができます。IDを盗まれるといった心配もありません。運転中の混乱を避ける安全性確保、時間の節約、安全なID使用など、多くのメリットを創出する仕組みがすでに実現に向けた段階まで来ていることを遠藤氏は強調しました。

このブログではすべてをご紹介することができませんが、この他にも自動車の未来に関する多くのトピックが盛り込まれた遠藤氏の講演には、多くの来場者が真剣に聞き入っていました。トヨタIT開発センターの取り組みは非常に幅広い領域にわたり、車の存在が単なる移動やレジャーの手段というレベルから大きく進化し、動くオフィス、移動するセンサー、電力・通信ハブ、AV/ゲーム/SNS/バーチャルシアター、スマートグリッドの要素など多様な目的に向けた存在となることが、多少なりとも実感できたのではないかと思います。

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