目指せ!グローバルエクセレントユニバーシティ~大学におけるIT活用最前線――第1回:海外の大学における学生情報管理のあり方


Graduates throwing mortarboardsSAPジャパンの新村です。最近は“大学のグローバル化”というキーワードをさまざまなメディアで目にします。文部科学省においても、「大学の国際競争力向上」と「グローバルに活躍できる人材の育成」が大学改革における主要テーマで、平成26年度には「スーパーグローバル大学創成支援」を打ち出しています。「世界トップレベルとの交流・連携を実現、加速するための新たな取り組みや、人事・教務システムの改革、学生のグローバル対応力育成のための体制強化」を行う事業であり、その目的にかなった構想を打ち出した大学に重点的に支援を行うというものです。実際、全国104の大学が提出した109の構想のうち、9月26日に37校の構想が採択されました。

国際競争力向上および、グローバル人材の育成という、2つの意味のグローバル化においては、ITの活用が避けて通れない最重要課題の1つとなります。企業経営にITが不可欠なのと同様です。しかしながら、大学においてITをどう使うかについては、共通理解があるとは言い難く、多くの大学が模索を続けているのではないでしょうか。

そこで本ブログでは3回にわたり「目指せ!グローバルエクセレントユニバーシティ~大学におけるIT活用最前線」と題して、大学における新たなIT活用の方向性について、海外事例を交えてお伝えします。国際競争力のある大学を目指すには、海外の大学のベストプラクティスをお伝えすることが、なにがしかお役に立つのではないかと考えるからです。1回目の今回は「海外の大学における学生情報管理のあり方」というタイトルでお届けします。

社会変化への対応力と経営的基盤の脆弱さが課題

まず簡単に、日本の大学に求められている改革の方向性について見てみましょう。文部科学省の「大学改革実行プラン」(2012年6月発表)によると、「2つの大きな柱と、8つの基本的な方向性」があります。2つの柱とは「激しく変化する社会における大学機能の再構築」と「大学のガバナンスの充実・強化」です。

前者の柱に対応するものとしては、次の4つの方向性があります。すなわち、「大学教育の質的転換、大学入試改革」「グローバル化に向けた人材育成」「地域再生の核となる大学づくり」「研究力強化」であり、ここにグローバル人材育成が明言されています。後者の柱に対応するのは、「国立大学改革」「大学改革を促すシステム・基盤整備」「財政基盤の確立とメリハリのある資金配分の実施」「大学の質保証の徹底推進」の4つです。この後者の4つも、大学の国際競争力を高めるためには不可欠です。

これは、社会環境の変化に対して大学が必ずしも対応しきれていない現状と、大学における経営的基盤の脆弱さに対する警鐘と受け取ることができます。民間企業において日夜直面している経営課題と本質は大きく変わりません。言わば、「事業部」の課題と「本社」の課題といったところでしょうか。エクセレントカンパニーと称されるような企業が、このような課題解決の手段としてITを積極活用してきている例を鑑みると、今後大学においても、現在直面する課題の解決には、ITの活用がカギとなると言えそうです。それも、単に非効率だった手作業を機械化して効率を上げるという次元を超えて、「知の拠点」・アカデミアとしての役割をより強化する戦略的ツールとしてITに向き合うことが重要となってくるでしょう。

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大学運営のベースとなるITインフラとは?

大学においても、すでにPC、電子メール、経理システムなど必要最低限のツールとしてのITは備わっているように見受けられます。ただし、研究室や学部ごと、キャンパスごとにそれぞれが個別に導入してきた経緯もあり、未だローカルシステムの集合体になっているところも少なくないのが現状です。研究室や学部レベルでは機能しても、全学での応用となったとたんに非効率性が顕著になる例は、枚挙にいとまがありません。これは、日本だけの話ではなく、海外の大学においても同様です。それを克服した大学の事例がありますので、まずそれを紹介します。

学生情報管理のグローバルベストプラクティス:アムステルダム自由大学の事例

オランダのアムステルダムに、アムステルダム自由大学(VU Amsterdam、以下VU)という1880年に創立された大学があります。12の学部に約20,000名の学生と、約2,200名の教職員(うち300名が教授)を擁しています。VUは、2025年までにメジャーな研究機関としての認知向上を図り、グローバルランキングで75位以内に入ることを目指しています。

その目標に向けてとった手段は、ITの活用方法の刷新です。具体的には、ITを活用して大学運営の高度化・効率化を推進、コスト削減を図り、それにより確保された人的・財務的リソースを教育・研究強化に戦略的に振り向ける、という方向に舵を切りました。そのため財務会計システムや人事管理システムだけでなく、新たな学生情報管理システムを導入することにしました。

学生情報管理システムとは、学生の入学から在学中、卒業にいたるまでの情報を学生中心の視点から関連づけて管理するとともに、そこで発生する各種の業務をシステムとしてサポートするものです。

この学生情報管理システム導入以前に、VUの教職員が抱えていた課題は以下のとおりです。

  • 管理業務に多くの時間を割いていた。特に情報検索に時間がかかっていた
  • 学生向けの事務手続きセルフサービス(履修コースの登録、成績評価の検索など)が、複数存在するうえ、手続きが煩雑かつ間違いを引き起こしやすかった
  • 情報の一貫性が保たれておらず、二重に操作が必要なことが多かった

要するに、一連の業務に必要な情報が複数のシステムにおいて分散管理されており、かつデータ構造やプラットフォームも標準化、統一化されていないことが原因でした。VUが新たな学生情報管理システムとして導入したのは、SAPの「学生ライフサイクル管理(Student Lifecycle Management)」です。機能としては、募集、入学許可、学生登録、コース登録、授業料、単位取得、卒業判定、卒業管理までを含みます。財務会計や購買、施設管理などと連携させることも可能です。

導入の結果、以下のような成果を得ることができたと言います。

  • 管理業務の間接コストを30%削減できた
  • 履修証書発行を20分から2分へと短縮できた
  • 履修状況、財務状況の分析など職員から経営者へのレポーティングがタイムリーにできるようになった
  • モバイル活用により時間と場所を選ばず手続きが可能になった

VUの事例は、質の高い学生サービスを低コストかつシンプルに提供するための管理手法とITインフラの構築を実現した、グローバルベストプラクティスと言えます。

千里の道も一歩から

VUの例で分かるように、グローバルトップレベルの大学を目指すためには、限りある経営リソースをクリエイティブな領域にどれだけ配分できるかが重要な観点となります。これにより、「知の拠点」・アカデミアとしての役割を充実させる必要条件が得られるのです。単なる管理の効率化ではありません。

ちなみにSAPでは、ヨーロッパ、アメリカ、アジアの各地域の大学に対して、20年にわたりさまざまなITの分野でご利用をいただいてきた実績があり、毎年公表されるTimes Higher Education の世界ランキング上位100校のうち93校に、SAPは納入実績を持っています(2013-2014年)。

次回は、このITインフラを活用した応用編として、「学生の満足度をいかに高めるか」と題してお届けします。

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