オンプレミスとクラウドの連携――第6回:SAPアプリケーションの仮想化で、システム運用管理の効率アップとコストダウンを実現


SAP blog_MW_06SAPジャパンの奥野です。「オンプレミスとクラウドの連携」と題した本連載も最終回となります。SAPシステムを運用されている方向けに、あらためてクラウド活用の大テーマである「TCO削減」と「システム運用の効率化」をキーワードに、システム運用管理をシンプル化するSAPアプリケーションの仮想化技術の解説をしたいと思います。

SAPアプリケーションの仮想化

SAP Landscape Virtualization Management(SAP LVM)は、SAPアプリケーションを仮想化するためのテクノロジーです。ハイパーバイザーによる「OSの仮想化」についてはすでに多くの方がご存じでしょう。ゲストOSのイメージファイルをコピーするだけ、もしくはごく簡単な調整を行うだけで、簡単に環境を他のサーバー上に移動させたり、複製したりすることができるというテクノロジーです。

同様にSAP LVMはSAPアプリケーションを仮想化し、SAP ERPを同種のOSで動いている別のサーバー上に簡単に移動させたり、複製できるようにします。

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図:SAP LVMを利用すればSAP ERP の移動や複製が簡単になる

ランドスケープ全体の集中管理

ここでは、SAP LVMがユーザーにとってどのような価値を生むのか、解説していきましょう。

①   ダッシュボードでランドスケープ全体を把握

SAP LVMではダッシュボードを通して、管理するランドスケープ全体に関するさまざまな情報をリアルタイムで表示できます。ここで取得可能な情報は、「サーバーリソースの配置や依存関係」といったオーバービューから、「サーバーの状態(死活管理)」、その上で動く「サービスの状態」といった詳細な情報までが含まれます。

②   ランドスケープの管理

管理下のシステムやサービスの起動や停止を行うこともできます。特定のサービスのみをコントロールすることも、多数のシステムを一斉に起動するといったことも可能です。これは、多数のSAPインスタンスを管理しているお客様や、SAP ERPのマネージドクラウドサービスを提供している企業(SAPのクラウドパートナー)にとっては必須の機能です。

たとえばサーバーのOSにパッチを適用する際に、何十、何百とあるSAPインスタンスを1つずつ手動でシャットダウンしていたら、肝心のメンテナンスに使う時間がなくなってしまいます。このため多くのSAP管理者は、これまでSAPインスタンスの起動停止のためのスクリプトをわざわざ作成・メンテナンスしてきました。しかしSAP LVMを導入すれば、こうした機能が標準で提供されるようになります。

③   インスタンスのリロケーション

インスタンスのリロケーションは、あるサーバー上で動いているSAPインスタンスを、別のサーバー上に移動する機能です。

インスタンスのリロケーション機能を利用すると、サーバーOSにパッチを適用する際、一時的に別のサーバー上にSAPインスタンスを移動。パッチ適用作業の完了後、再びもとのサーバーにSAPインスタンスを戻すといった柔軟な運用が可能になります。この結果、SAPシステムのダウンタイムを最小限に抑えられるようになります。

④   ハードウェアリソースを動的に割り当て

SAP LVMが提供する機能に「オートマティックキャパシティマネージメント(ACM)」と呼ばれるものがあります。これはランドスケープ全体で、各SAPインスタンスに割り当てるハードウェアリソースを自動的に調整できる機能です。

SAP ERPは、月次の締め処理のようなバッチジョブを実行する際に、より多くのリソースを必要とします。しかし、すべてのSAPインスタンスに、ふだんからピーク時に合わせたハードウェアリソースを割り当てておくのは、コスト面で大変もったいない話です。

たとえば日本のSAPインスタンスが締め処理を行っている間は多くのサーバーを割り当てておき、次にアメリカのインスタンスが締め処理を始めたタイミングで、処理の終わった日本のインスタンスに割り当てられているサーバーの1台を、アメリカのインスタンスに割り当てるといったリソース配分を自動的に実行できます。こうしてハードウェアリソースを効率的に活用できれば、むだなハードウェア投資の削減につながります。

SAPシステムの「クローン/コピー/リフレッシュ」を自動化

SAP ERPは基幹システムなので、法改正などのタイミングに合わせて、それに対応した膨大なノートやサポートパッケージ(SP)の適用を余儀なくさせられることがあります。複数の国にビジネスを展開するグローバル企業では、それぞれの国の法改正に対応することになりますので、さらにその数が増えます

当然、こうしたノートやSPの適用前にはテストを行います。それにともない、本番環境を複製して別のシステムIDを付与し、検証環境を構築する(システムコピー)。あるいは、前回作成した検証環境に入っている古いデータを、本番環境側の最新データで上書きする(システムリフレッシュ)といった作業が必要になってきます。

こうした作業負荷を大幅に軽減してくれるのが、SAP LVMのクローン/コピー/リフレッシュ機能です。ウィザードに従って必要な情報を入力すれば、あとは自動的にシステムコピーやリフレッシュを実行してくれます。さらに複数のシステムを同時にコピーしたり、スケジューリングを行うことも可能です。

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図:システムクローン/コピー/リフレッシュを自動的に実行可能

システムコピーの時間を劇的に短縮

実は、SAP LVMでこうした複雑な準備作業を自動化できても、システムコピーの時間そのものの劇的な削減にはいたらないケースがあります。システムコピーにかかる時間の大半は、本番環境のデータを検証環境にコピーする作業時間だからです。この部分を短縮するために、SAPはストレージベンダーと協力して「スナップショットコピー」と呼ばれる、ストレージ上のデータを仮想的にコピーする機能とSAP LVMを連携できるようにしています。

スナップショットコピーでは、データをコピーしても物理的なデータは1つのままで、これをAとBの両方のサーバーで共有する形を採ります。通常のストレージ共有の場合、Aサーバーがデータを上書きすると、Bサーバーから見たデータも更新されてしまうのですが、スナップショットコピーの場合、Aサーバーがデータを上書きすると、そのデータは元のデータと別の領域に書き込まれ、それ以降はそのデータをAサーバーとBサーバーが別々に保持するようになります。

この方式であれば、コピーを実行する際に “物理的なデータコピー”が発生しないので、ほぼ一瞬でコピーが完了するだけでなく、データが上書きされない限り、データは共有され続けるため、大幅にストレージの容量を削減できます。

SAP LVMには機能拡張のための外部APIが豊富に用意されており、さまざまなストレージベンダーがこのAPIを利用して、SAP LVMのシステムクローン/コピー/リフレッシュ機能と自社のスナップショットコピーの機能が連動できるアダプターを提供しています。SAP LVMをこうしたストレージと組み合わせることで、システムクローン/コピー/リフレッシュ処理の自動化に加えて高速化も実現できるのです。

SAP LVMとの連携ソリューションを提供しているベンダーの一覧は、下記のWebサイトをご覧ください。

Summary of SAP Partner integrations with SAP Landscape Virtualization Management 2.x(英文)

ここでご紹介したSAP LVMのソリューションを利用すると、単にシステム管理者の作業負荷を減らすだけでなく、より簡単にテスト環境を作成できるようになります。その結果、手軽にテスト回数やテスト項目を増やせるようになり、テストの品質が向上します。結果として、リリースされる本番環境の信頼性も向上します。

私はSAP LVMがリリースされて以来、SAPシステムの運用を担当されている多くの方々と議論を重ねてきましたが、SAPの運用に深く関わっておられる方々ほど、口をそろえて「この製品はすばらしい」とご評価くださいます。

SAPがいま全社を挙げて掲げている目標は、「Simplification」です。SAPシステムの運用が高度なスキルを必要とする時代は、もはや終わりを告げようとしています。SAP LVMは、システム運用のシンプル化を通じて、皆様により高いパフォーマンスとTCO削減効果をもたらします。ぜひ、ご検討ください。

参考記事
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