通信業界の新しい成長戦略とは――第1回:メガトレンドと顧客接点


Online shopping with tablet PC and credit cardSAPジャパンの村山です。通信業界(固定通信および移動通信)においては、通信サービスをはじめとする従来事業領域での競争が激化し、消費者からすれば付加価値が低下する傾向が続いています。そこで、M&Aやグローバル展開による規模の経済性の追求や、新規事業領域の開発が急務となっていることはご存知の通りです。しかしその一方で、通信業界固有の事業分野での競争力を維持できなければ、そもそもの通信インフラの担い手としての存在価値を失いかねません。つまり通信業界は今、大規模かつ多種多様な課題に同時に立ち向かい、その打開策を模索する必要に迫られているのです。

通信業界は従来、通信インフラに対する堅牢性、信頼性を担保するという観点から、数年単位の緻密なロードマップをもとに動くことが常でした。しかしその一方で、ITの進化のスピードが非常に速いがために、相対的に通信業界の進化は遅く感じられるものでもありました。従来の慣習を捨て去ることは容易ではありませんが、一方でスピードアップができれば、他社に比べ優位に立てる可能性は高くなるのです。

そこで本ブログでは3回にわたり「通信業界の新しい成長戦略とは」と題して、通信業界におけるニュートレンドとスピーディな取り組みの重要性などについて、海外事例を交えながらお伝えしたいと思います。1回目の今回は「メガトレンドと顧客接点」というタイトルでお届けします。

ユーザーあたりの売上伸び悩みは世界的な趨勢

最初に、グローバルな観点から通信業界のトレンドについて見てみましょう。それは、大きく以下の4つにまとめることができます。

1)  ARPU(Average Revenue Per User:ユーザーあたり平均売上)の減少と結果としての総売上減少

欧州では、2013年における対前年比売上がテレフォニカで12%減少し、それに続いてVodafone、Orange、Deutsche Telekom(ドイツテレコム)もそれぞれ4%ほど減少。この傾向は欧州だけでなく、他の地域の国々でも同様の傾向が見られる。

2)  M&Aの激化

最近では、メキシコに本社を有するAmerica Movil社が、Telekom Austriaに対し14億ユーロ(約1900億円)で公開買付けを実施するなど、大型M&Aが活発化している。

3)  他業種への進出

2014年5月には、アメリカのAT&Tが多チャンネル衛星放送のDirecTVを485億ドル(約5兆3000億円)で買収し、放送領域への参入を果たした。

4)  契約者数を伸ばす通信事業者も存在

アメリカのT-Mobileは、2014年の第1四半期(1月~3月)にこれまで最高の240万契約の純増を果たした。これは、1年前に同社が始めた積極的な価格戦略が奏功したものである。

このようなトレンドは、日本においても当てはまります。NTTやKDDIの売上は微増しているものの、ユーザーあたりの平均売上は伸び悩んでいます。また、ソフトバンクの米Sprint社買収をはじめ、NTTグループによる他国の通信事業者やデータセンターの出資・買収、NTTドコモによる「らでぃっしゅぼーや」(無農薬野菜などの販売)や「ABCクッキング」(料理教室)など、他業種への進出も始まっています。その一方で、ソフトバンクではiPhoneを活用し、短期間に契約者数を大幅に伸ばしました。通信業界の抱える課題は、日本も世界も共通と見ることができるでしょう。

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今後3年間における売上構造の変化

そのような中、SAPが通信業界エグゼクティブ向けに実施した調査では、「向こう3年間における収入のうち28%はまったく新しいデータサービスによるものである」との予測となっています。ここに通信業界激変の兆しが見られます。では、具体的にはどのように大きく変わるのでしょうか。また、競争を勝ち抜くためには、何を刷新していけばいいのでしょうか。

激変領域はどこか?

今後の動向を把握するために、通信事業者にとっての事業領域をレイヤーに分けて整理して見てみましょう。

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日本のICTにおけるニーズ

この図では、上のレイヤーほど新しい事業領域が多くなっています。デバイスレイヤー(①)は、従来のスマホや通信モジュール、ルーターなどに加え、ウェアラブルデバイスなど、未来志向のものが増えてきます。プラットフォームレイヤー(②、③)は、新しいアプリケーションやビジネスの仕組みなどを提供し、ビッグデータ分析やオムニチャネルなどの新しい領域を形成します。法人クラウドサービス(④)は、上位レイヤーの仕組みやバックエンドを関連事業者(ITベンダーやユーザー企業など)と共同開発して、クラウドで提供するサービス。法人NW×データセンター×SaaS/ASP(⑤)は、キャリアのデータセンタービジネスを拡大させる領域です。一番下のレイヤー、つまり固定ブロードバンド(⑥)、モバイルキャリア/ワイヤレス(⑦)は、いずれもキャリアの現行ビジネス領域です。

この中で、業界トレンドの観点も含め、今後特に重要になると考えられる領域は、以下の3つです。

  • ③:B2Cプラットフォーム(リアル×ネット)
  • ④:法人クラウドサービス
  • ⑦:モバイルキャリア/ワイヤレス

③、④は新領域としての売上増加ポテンシャルの大きさに加えて、他業種との協業を前提とするため、新たな取り組みが必要になります。そして、⑦はキャリアとしてのコア領域であると同時に、その部分での刷新がキャリアの競争力を大きく左右するとの観点から着目しました。

顧客接点の再構築~オムニチャネルがカギ

それでは最初に、B2Cプラットフォーム(リアル×ネット)を見てみましょう。ここでの焦点は、金融や小売などにおけるあらゆるリテールビジネスでカギとなってくるオムニチャネルの整備です。もちろん、他業種のためにオムニチャネルプラットフォームを提供するということもありますが、まずは通信ビジネスにとってのオムニチャネルの確立が重要です。従来の販売店で販売していた携帯電話や端末、サービスなどをネット販売にも誘引するなどして、最適なチャネルミックス、顧客リテンション向上、クロスセルおよびアップセルの増大を実現するのです。今後は特に、これまで扱っていなかったような新たなサービスも増えてくるため、顧客属性などに基づくバンドリングや商品提案、代替提案などを含め、効率的な販売方法とチャネル最適化が必須となります。

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通常のコマースソリューションと違う通信事業への対応

SAPではhybrisというeコマース&マルチチャネルコマースソリューションを用いて、通信事業者向けにオムニチャネルを構築してきた実績があります。その成果として、以下のようなパフォーマンスを実現しています。

  • 追加サービスとのバンドリングやその販売ガイダンスの付与などでARPUが18%向上
  • オンラインセルフサービスやチャネル統合などの活用により、カスタマーサービスコールコストを50%削減
  • 3カ月の導入期間に対し、6カ月で投資回収
  • オンライン販売が2.5倍に増加   など。

上記のhybrisについては、欧州を中心に、E-Plus(ドイツ3番手テレコムオペレーター)、H3G(イギリスの大手3Gモバイルオペレータ)、EE(イギリスの大手モバイルオペレータ、2800万契約を保有)などが導入し、短期間で大きな成果を上げています。

顧客接点の次に来るもの

このように、通信業界においても顧客接点の見直しや最適化、販売方法の改善が、新サービスの導入とともに重要になってきています。従来の回線販売を主体とする業態から、多種多様な商品やサービスを販売する業態へと変化することが否応なく求められている今、「いち早く」変革を実現することが、早期の収益化へとつながることは間違いありません。

以上、見てきただけでも大きな変革と言えますが、激変する通信業界で優位なポジションを築くためには、まだまだやることがあります。そのうちの1つが、協業による新サービスの開発です。協業をうまく活用することで、経営戦略実践のスピードが大幅にアップします。次回は、「協業による法人クラウドサービス構築」と題してお届けします。

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