堀場製作所の人事システムとグローバル人財育成の取り組み


10月7日に開催された「SAP All Cloud Connect 業務部門がリードする経営改革フォーラム」。今回は3つの講演が行われた人事部門向けトラックから、株式会社堀場製作所で“人財”育成を担当するジュニアコーポレートオフィサー(ホリバ・カレッジ学長兼CSR担当)の野崎治子氏にご講演いただいた同社におけるグローバル人財育成の取り組みについてお送りします。

「オープン・アンド・フェア」「加点主義」「コミュニケーション」

堀場製作所_野崎氏

カリスマ経営者として知られる堀場雅夫氏が京都大学3回生のときに創業した堀場製作所は、自動車の排気ガスや人の血液、湖沼の水などを対象にした分析・計測装置の大手メーカーです。市場を求めて早い段階から海外に目を向けていた同社は、1972年に米国とドイツに子会社を設立、1996年からフランスの分析装置メーカー2社を立て続けに買収するなど、積極的なグローバル戦略を実行している企業としても知られます。

2013年に創立60周年を迎えた同社では、従業員27カ国・約5,800名の過半数が外国人です。国・地域別内訳では、日本(42%)の次がフランス(17%)で、アジア(13%)、米国(12%)と続く、まさに全地球的規模の陣容を誇ります(2013年12月末現在)。近年はインドや中国が急増し、ブラジルの新工場が稼働すれば南米も増えることが予想されます。このように多彩な国・地域にまたがるマンパワーを集結させ、企業の持続的成長という方向へ導くには、平易で明確な人事哲学が不可欠です。

同社の人事部門を担当する野崎治子氏は、「人事の基本方針としては、『オープン・アンド・フェア』『加点主義』『コミュニケーション』を標榜しています。また、これらを英訳し、世界中の全従業員にコーポレートフィロソフィである旨を伝えています」と話します。

第1のオープン・アンド・フェアの「オープン」は、堀場製作所流に解釈すると、競技を始める前にルールを明らかにするということ。年度初めには、会社は従業員一人ひとりと「あなたに期待していることはこれだ。お互いに頑張ろう」と目標を共有します。事業環境の変化など予期せぬ事態に直面したときは「ルール変更=目標変更」をしっかり伝えます。

「フェア」は結果の平等ではなく、チャンスの平等です。老若男女、国籍、勤続年数、障がいの有無、過去の実績を問わず、誰にでも手を挙げるチャンスがあることを示しています。もちろん企業なので、信頼できる人に仕事が回ることもありますが、同社では誰もが臆することなく「自分はこれがやりたい!」と言える社風を大事にしています。

「当社は学生ベンチャーとして創業しています。失敗を恐れていてはいつまで経ってもいい仕事はできません。失敗するのが怖くなる減点主義ではなく、従業員のチャレンジに焦点を当てる加点主義、つまり『チャレンジしたからこその失敗』と考えます。第1の『オープン・アンド・フェア』に基づく目標管理も、第2の『加点主義』をベースにした人事評価も、最終的には3番目の『コミュニケーション』を実現するための重要なプロセスとの位置付けです。会社と従業員双方が、お互いに尊重して積極的に話し合える人事制度をめざしています」(野崎氏)

社是「おもしろおかしく」を全世界で共有

もう一つ、同社では働くことに対する従業員の意識の共有も重視しています。それが創業者の堀場雅夫氏が唱える「おもしろおかしく」です。

「人生は80年。そのうち20代から60代まで、人生の半分を会社で過ごすことになります。1日の中でも一番いい時間を仕事に従事する。その仕事そのものが、ただ単にお給料を稼ぐためだけ、生活のためだけでは悲しいじゃないか。おもしろおかしいチャレンジングな時間が過ごせる。そういう会社にしようということで『おもしろおかしく』を掲げ、私が入社した1978年に社是になりました」と野崎氏は説明します。

同社の「おもしろおかしく」には、従業員には健全で実り多い人生にしてほしいとの前向きな願いを込められています。従業員が「おもしろおかしく」仕事をすれば、発想力や想像力が増す。結果として、生産性が上がり企業価値も高まる。顧客、株主、サプライヤー、そしてグローバル社会全体のWIN-WINの関係を構築できると考えます。

「全世界の従業員がHORIBAブランドを再確認するため、2007年には『ブランドブック』を作成しました。社是『おもしろおかしく』に加え、堀場製作所の従業員=ホリバリアンが仕事に取り組むうえで大切にしてほしい5つの“おもい”、すなわち『誰も思いつかないことをやりたい。』『技を究めたい。』『自分の仕事や会社を誰かに伝えたい。』『人や地球の役に立ちたい。』『世界を舞台に仕事をしたい。』と、各国の従業員のメッセージをまとめたものです。6カ国語に翻訳して全従業員に配布し、HORIBAの企業文化を守り育むことを再確認し、現在でも入社式で新入社員全員に配り、次世代にも継承しています」(野崎氏)

海外出向に加え、イベントリーダー経験も重視

酸性・アルカリ性が数値で見えるpHメーターで創業した同社は、現在では、自動車、環境プロセス、半導体、医用、科学など幅広い分野の分析・計測装置を提供しています。商品の総数は1000以上。膨大な商品群とグローバルに広がる事業エリアを効率的にカバーするには、地域と部門をマトリクス化し、それぞれの要に「グローバル人財」を配する組織が最適との結論にいたりました。コアポジションの選定と候補を見える化することで、経営判断のスピードと質を高める「マトリクス経営」を実践しています。

マトリクス軽視スライド

野崎氏は、「マトリクス経営を支えるグローバル人財役の従業員には、縦横から仕事が降ってくるのですごく難しいです。けれども、それだけ視野が広がります。自分一人では思いつきもしなかったことを新たな知識として、情報として、考え方として聞くことができるのは、当社がさらにグローバル化していく上で大変重要と考えています」と語り、マトリクス経営が成果を上げるためにもグローバル人財の育成がポイントと説きます。

同社のグローバル人財育成の取り組みは大きく4つのステップに分けられます。まず、採用や職群選択、語学研修を通じて、グローバル人財に向かって競い合う集団、つまりゆるやかな「母集団」を形づくります。続いて、その母集団に属するメンバーを中心に海外出向や異動、次世代リーダー研修、異業種交流などを経験させることで、将来のグローバル人財の発掘と集中投資を行います。

「当社は、従業員の誕生日や新製品の出荷日には関係者が集まって宴会をします。日経ビジネスで『日本で一番宴会の多い会社』と紹介されたこともあります。運動会などのイベント開催も盛んです。グローバル人財育成では、このような催しものを仕切るイベントリーダー役も集中投資の一環として意識的に担当させます。これにより、担当業務の枠を超えて人をまとめる力があるかどうかを見極めます」(野崎氏)

コミュニケーションがもたらす感謝、尊敬、共感

「修羅場経験と敗者復活」も同社のグローバル人財育成のうえでのキーワードです。ビジネスカルチャーの異なる海外でも活躍できる従業員になるには、自らの仕事を通じて自分自身のなかで「当たり前」と思っていたことを揺さぶられる経験を積む必要があるとの考え方からです。さらに、今まで投資してきたグローバル人財候補のうち、修羅場経験を乗り越えられなかった人たちが新たに生きる場所を提供することも重視しています。

「グローバル人財育成のステップの4番目としてはM&Aが挙げられます。その人の魅力や技術を見込んでホリバリアンになってもらう以上、彼らのもっている能力と当社の文化をそれぞれが尊重し合いながら新しいものを生み出す努力を重ねることが大切だと思います」(野崎氏)

このように同社では、通りいっぺんの育成カリキュラムではなく、あらゆる機会を通じてグローバル人財の発掘・育成に取り組んでいます。予算会議や戦略会議は滋賀県の研修センターで行うほか、海外拠点でも開催します。同社では自社のグローバル化を、国や地域、文化、習慣、価値観を理解したうえで、現地の従業員とともに、その地に根差したサービスを提供することと定義しています。その旗振り役を担うのが、マトリクス経営のキーマンでもある「グローバル人財」なのです。

最後に野崎氏は、以下のように述べ、講演を締めくくりました。

「当社では『人財戦略はステンドグラスである』という言い方をします。多様なガラスが色とりどりに輝き、1つの美しいデザインになっている。そのガラス1枚1枚をつなぐのは、マネージメントではなくコミュニケーションだと思います。コミュニケーションがもたらす感謝、尊敬、共感があって、初めて多様なガラスが1枚の絵になるのではないでしょうか。企業のグローバル化やグローバル人財の育成でも、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションがあってこそ初めて実現すると考えます」

保存版PDFレポートはこちら:
【SAP All Cloud Connect レポート】グローバル経営を実現する人材戦略

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