「世界で戦う」日本企業が目指すグローバル人事の姿とは


10月7日に開催された「SAP All Cloud Connect 業務部門がリードする経営改革フォーラム」。今回は株式会社堀場製作所ジュニアコーポレートオフィサー(ホリバ・カレッジ学長兼CSR担当)の野崎治子氏、キッコーマン株式会社 執行役員 人事部長の松崎毅氏、富士ゼロックス株式会社 人事部長 小倉和宣氏による人事部門向けトラックのパネルディスカッションの模様をご紹介します。

「採用」「適材配置」「育成」でグローバル人材を確保、育成

パネル_All22008年のリーマン・ショック前後からグローバル人材育成に力を入れる日本企業が増えています。それから6年あまり。モデレーターを務めるSAPジャパンの南和気から「現在、各社ではどのようなグローバル人材育成を行っているのか教えてください」という質問が投げかけられました。

この問いに対してキッコーマンの人事部門を統括する松崎氏は、「事業面で国際化はかなり進んだものの、人材面では遅れていましたので、2009年にグローバル人材育成に向けたプロジェクトをスタートさせました」と説明しました。

同社ではグローバル人材の確保、育成のために「採用」「適材配置」「育成」という3つの施策を設けています。このうち「採用」ではグローバル枠を設け、2012年より外国人採用を強化。国内大学の留学生や海外大学の学生を毎年3名程度採用しています。

「育成」では若手向け、中堅・管理職向けの施策を用意。「若手向けには『グローバル人材基盤の充実』を目標に、最長5年間海外の拠点で働く『グローバルジョブチャレンジ制度』、中堅・管理職向けでは『グローバル経営人材の育成』を目指し、主に選抜研修を行っています」(松崎氏)。

日本中心の発想からグローバル視点への転換を加速

富士ゼロックス 人事部長の小倉和宣氏は「今後の成長を支えるのは海外市場とソリューション・サービス事業」との見通しを示します。

日本中心の発想からグローバル視点への転換を加速させ、けん引役となるべき人材の獲得、育成、活用を図るため、同社では「日本人社員のグローバル対応力強化」「グローバル対応力が高い人材の採用」「海外赴任経験者の活用」「成長市場である海外への人材投入」「優秀なナショナルスタッフの獲得と育成」「国・国籍を超えた次世代基幹人材の育成と登用」を通じて海外での成長を担保する次世代人材の育成を進めていく方針です。

続いて南はグローバル人材には会話ができ、コミュニケーションができるのはもちろんのこと、「それ以外にもプラスアルファの力が求められるのではないでしょうか」とたずねます。この質問に対して堀場製作所 ジュニア コーポレートオフィサーの野崎治子氏は、「当社が求めるグローバル人材とは、一人ひとりの魅力を見い出し、チームとして動かすことができる人」と答えます。

「国内外問わず、どこでも能力を十分発揮できる人材こそが求められています」と見るのは松崎氏です。それには「コミュニケーション能力」「リーダーシップ」「専門性」「体力」「楽天性」を兼ね備えている必要があります。しかし、世界にはいろいろな文化、宗教、そして歩んできた歴史も大きく異なる国々が存在します。「文化の違いを理解し、受け入れられる『異文化適応力』が何よりも求められるのではないでしょうか」とコメントされました。

小倉氏の考えも松崎氏と似ており、「異文化をリスペクトする気持ちも大事ですが、高い専門能力を持つことも必要でしょう。なぜならグローバル人材の多くは自分の専門性に高いプライドを持っており、自分自身も高い専門性を持っていなければ、そういう人たちを納得させ、動かすことはできません」と指摘します。

キッコーマンが求める人材像

図:キッコーマンが求める人材像 (一例)

相手の言葉で話そうとする心がけが重要

では、異文化適応力を伸ばすにはどうすればいいのでしょうか。小倉氏は「当社では年間70、80名の人材を業務研修や教育研修、そして実務の名目で海外に駐在させ、経験を積ませています。さらに国内でも多くの外国籍の人が働いていますので、こうした人たちとコミュニケーションを深めるだけでも自然と異文化適応力は身に付いていくはず」とアドバイスします。

また、キッコーマンでは異文化適応力の向上を目指し、「海外研修の活用や、国内での研修に異文化やその考え方への接点を増やすプログラムを入れることで対応しています」(松崎氏)。

グローバルで活躍するにはコミュニケーション能力が肝になりますが、野崎氏は「流暢な英語を話す必要はないものの、相手の言葉で話そうと心がける姿勢は大切でしょう」と指摘されました。

国内と国外人材の意識の違いについて警鐘を鳴らすのは小倉氏です。「若いうちは同期横並びで経験を積んでいくという日本企業は多いと思いますが、グローバル人材の多くは自分の専門性を伸ばしたいと考えています。横並びのキャリアアップでは見切りを付けられる恐れがあります」といいます。

企業理念やDNAを浸透させていくには言い続けるしかない

キャリアパスの考え方、育ってきたカルチャーなど、異なる考えを持つ人材をいかに1つにまとめていけばいいのでしょうか。野崎氏は「すべての人を納得させる制度は難しい。トップのメッセージとして経営理念やビジョンなどを伝えるなど、地道な活動を繰り返していく以外にはないのでは」と分析します。

ただし、企業理念などの思いは時間とともに薄れていくものなので、松崎氏は「企業理念やDNAを浸透させていくには言い続けるしかない。たとえばCEO(最高経営責任者)の所信表明のなかに盛り込ませるなど、トップを巻き込みながら、定期的に企業理念やDNAの浸透を図っていく手もあるでしょう」と話します。

富士ゼロックスでは目指すべきものとして3つの「ミッション・ステートメント」、大切にするものとして10の「シェアード・バリュー」を掲げています。「現時点ではこのうち1つでも共感できればいいと思っており、これを行動評価のポイントにするなどの仕組みを設けることで、少しずつ身に付いていけばと期待しています」(小倉氏)。

激化する外国籍社員の採用。マッチングミスを減らす試みも

最後に南は「3年から5年先を見すえた採用戦略は」と問いかけました。これに対して野崎氏は「M&Aを通じて現地法人をグループ化した場合はトップをそのままにしているケースが多々ありますが、現地法人のトップやHORIBAグループのトップに求められる役割をもう少し鮮明にしていきたい」、松崎氏は「アジア系だけではなく、多様な国籍の方に来てもらえるような採用の仕組みをつくっていきたい」と意欲を見せます。

外国籍社員採用に力を入れていますが、中国と韓国が大多数なので、「国籍の幅をもう少し広げたい」と考えているのは小倉氏です。「外国籍社員の採用はいま非常に激化していますので、当社が求めている人物像を明確にし、マッチングミスがないようにしたい。そしてアジアで採用した基幹人材も国内採用と同じ軸で評価することで、真に優れたグローバル人材を1人でも多く増やしていきたい」との決意を述べました。

いまやグローバル人材の確保、育成だけでなく、そういった人材をいかに活用するのかも人材戦略の重要なポイントになっています。どうすれば世界に通用する優秀な人材を確保でき、収益拡大に役立たせることができるのか、三者三様の取り組みが進められています。

保存版PDFレポートはこちら:
【SAP All Cloud Connect レポート】グローバル経営を実現する人材戦略

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